高精度治療技術による低リスク高線量放射線治療に関する臨床研究

文献情報

文献番号
201020020A
報告書区分
総括
研究課題名
高精度治療技術による低リスク高線量放射線治療に関する臨床研究
課題番号
H20-がん臨床・一般-020
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
白土 博樹(北海道大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 青山 英史(新潟大学医学部)
  • 鬼丸 力也(北海道大学病院)
  • 秋田 弘俊(北海道大学 大学院医学研究科)
  • 石川 正純(北海道大学 大学院医学研究科)
  • 石倉 聡(神奈川県立がん研究センター)
  • 伊丹 純(国立がん研究センター・)
  • 今井 高志(放射線医学総合研究所・ゲノム診断研究)
  • 大西 洋(山梨大学)
  • 有賀 久哲(東北大学院医学研究科)
  • 唐沢 克之(都立駒込病院・放射線腫瘍学)
  • 小久保 雅樹(先端医療センター・放射線治療研究グループ)
  • 小塚 拓洋(癌研有明病院・放射線腫瘍学)
  • 塩山 善之(九州大学院・放射線腫瘍学)
  • 新保 宗史(埼玉医科大学・放射線腫瘍学)
  • 中川 恵一(東京大学院・放射線腫瘍学)
  • 永田 靖(広島大学・放射線腫瘍学)
  • 西村 哲夫(静岡県立がん研究センター・放射線治療科)
  • 西村 恭昌(近畿大学医学部、放射線腫瘍学)
  • 西山 謹司(大阪府立成人病センター・放射線治療科)
  • 松尾 幸憲(京都大学院・放射線腫瘍学)
  • 新部 譲(北里大学医学部放射線科学)
  • 大泉聡史(北海道大学病院)
  • 西尾禎治(国立がん研究センター東病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
17,866,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
より高い根治性を目指して、線量集中制を高める高精度放射線治療により、高線量治療の臨床的効果を探ることである。
研究方法
Continuous reassessment method (CRM)を用いた第I相試験を行う。
特徴としては、①今後の標準となる新しい不均一補正を取り入れた線量計算での耐容線量を探る世界初のphase I studyである。②腫瘍への指示線量が同じでも腫瘍サイズにより肺への照射線量と体積が異なることに対する理論的配慮をしている。③用量規制毒性が、治療開始後180日以内の肺臓炎という晩期毒性であり、通常の方法では線量増加レベルを上げるのに時間がかかることへの配慮、④多施設での線量増加試験であり、登録時期により投与線量が刻々と変わることを、施設に伝える工夫などだ。
次に、用量規制毒性が治療開始後180日以内の肺臓炎という晩期毒性であり、線量増加レベルを上げるのに時間がかかるという問題に対してはCRMにて最少人数で推薦線量を導くことを可能にした。
また、多施設での線量増加試験であり、登録時期により投与線量が刻々と変わることを、的確に施設に伝える必要がある、という課題に関しては、研究事務局・データセンター・参加施設を包含したメーリングリストによる情報共有システムを構築した。
結果と考察
Phase I なので、多施設試験に慣れた7施設に絞って研究を開始し、1年3か月が経った現在、23例の登録が済んだ。
現在まで14例は、肺臓炎の発生なく、それぞれのBinで線量増加中である。 CRMの効果で、100cc以下のBin1において、45Gyのレベル2は1例でスキップでき、すでにレベル3に入っており、 このままいけばBin2でも2月以内に線量増加がなされる。
 その他、肺癌のIMRTの臨床研究に向けた医学物理学的品質管理に関する研究、先進的画像診断などで臨床的に原発性肺癌と診断された小型肺腫瘍に対する体幹部定位放射線治療の前向き臨床試験、放射線肺臓炎に関する放射線感受性の遺伝子多型研究の準備などの新しい照射技術を用いた放射線治療の開発に関する研究を進めた。
結論
CRM法は、長い観察期間が必要な放射線晩期反応をエンド・ポイントとした研究には有効であること、体幹部定位放射線治療の推薦線量は従来のガイドラインの線量を超えることが示されつつある。

公開日・更新日

公開日
2015-05-15
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2012-02-01
更新日
-

文献情報

文献番号
201020020B
報告書区分
総合
研究課題名
高精度治療技術による低リスク高線量放射線治療に関する臨床研究
課題番号
H20-がん臨床・一般-020
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
白土 博樹(北海道大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 青山英史(新潟大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 鬼丸力也(北海道大学病院)
  • 秋田弘俊(北海道大学 大学院医学研究科 )
  • 石川正純(北海道大学 大学院医学研究科 )
  • 石倉 聡(神奈川県立がん研究センター・放射線治療科)
  • 伊丹 純(国立がん研究センター・放射線腫瘍学)
  • 今井 高志(放射線医学総合研究所・ゲノム診断研究)
  • 大西 洋(山梨大学・放射線腫瘍学)
  • 有賀 久哲(東北大学 大学院医学研究科)
  • 唐澤 克之(都立駒込病院・放射線腫瘍学)
  • 小久保 雅樹(先端医療センター・放射線治療研究グループ)
  • 小塚 拓洋(癌研有明病院・放射線腫瘍学)
  • 塩山 善之 (九州大学院・放射線腫瘍学)
  • 新保 宗史(埼玉医科大学・放射線腫瘍学)
  • 中川 恵一(東京大学院・放射線腫瘍学)
  • 永田 靖(広島大学・放射線腫瘍学)
  • 西村 哲夫(静岡県立がん研究センター・放射線治療)
  • 西村 恭昌(近畿大学医学部、放射線腫瘍学)
  • 西山 謹司(大阪府立成人病センター・放射線治療科)
  • 松尾 幸憲(京都大学 大学院医学研究科)
  • 新部 譲(北里大学医学部放射線科学)
  • 大泉 聡史(北海道大学病院)
  • 西尾 禎治(国立がん研究センター東病院)
  • 西山 謹司(大阪府立成人病センター・放射線治療)
  • 小川 芳弘(東北大学 大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
より高い根治性を目指して、線量集中制を高める高精度放射線治療により、高線量治療の臨床的効果を探ることである。
研究方法
Continuous reassessment method (CRM)を用いた第I相試験を行う。
特徴としては、①今後の標準となる新しい不均一補正を取り入れた線量計算での耐容線量を探る世界初のphase I studyである。②腫瘍への指示線量が同じでも腫瘍サイズにより肺への照射線量と体積が異なることに対する理論的配慮をしている。③用量規制毒性が、治療開始後180日以内の肺臓炎という晩期毒性であり、通常の方法では線量増加レベルを上げるのに時間がかかることへの配慮、④多施設での線量増加試験であり、登録時期により投与線量が刻々と変わることを、施設に伝える工夫などだ。
次に、用量規制毒性が治療開始後180日以内の肺臓炎という晩期毒性であり、線量増加レベルを上げるのに時間がかかるという問題に対してはCRMにて最少人数で推薦線量を導くことを可能にした。
また、多施設での線量増加試験であり、登録時期により投与線量が刻々と変わることを、的確に施設に伝える必要がある、という課題に関しては、研究事務局・データセンター・参加施設を包含したメーリングリストによる情報共有システムを構築した。
結果と考察
Phase I なので、多施設試験に慣れた7施設に絞って研究を開始し、1年3か月が経った現在、23例の登録が済んだ。
現在まで14例は、肺臓炎の発生なく、それぞれのBinで線量増加中である。 CRMの効果で、100cc以下のBin1において、45Gyのレベル2は1例でスキップでき、すでにレベル3に入っており、 このままいけばBin2でも2月以内に線量増加がなされる。
 その他、肺癌のIMRTの臨床研究に向けた医学物理学的品質管理に関する研究、先進的画像診断などで臨床的に原発性肺癌と診断された小型肺腫瘍に対する体幹部定位放射線治療の前向き臨床試験、放射線肺臓炎に関する放射線感受性の遺伝子多型研究の準備などの新しい照射技術を用いた放射線治療の開発に関する研究を進めた。
結論
CRM法は、長い観察期間が必要な放射線晩期反応をエンド・ポイントとした研究には有効であること、体幹部定位放射線治療の推薦線量は従来のガイドラインの線量を超えることが示されつつある。

公開日・更新日

公開日
2015-05-15
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201020020C

成果

専門的・学術的観点からの成果
肺の不均一補正を加えた線量計算において、従来の48Gy/4回の体幹部定位放射線治療は、D95線量指示では40Gy/4回とすることが妥当であることが示された。長期的観察が必要な放射線晩期障害である放射線肺臓炎に関する線量増加phase I試験では、従来の3例ずつ線量を増加する方法よりもcontinuous reassessment methodが適しており、少ない症例数で最適線量を導き出すことが可能であることが示された。
臨床的観点からの成果
3cm以上のT2N0M0非小細胞肺癌に対する体幹部定位放射線治療の最適な投与線量は、従来のガイドラインに記載されてきた48Gy/4回ではなく、最低でも54Gy/4回以上であることが明らかにされつつある。これにより、T1-2N0M0非小細胞肺癌において、体幹部定位放射線治療は、放射線肺臓炎のリスクは低いまま高線量を腫瘍に集中することができることが明らかにされ、いままでよりも高い局所制御率が期待できることが明らかにされた。
ガイドライン等の開発
体幹部定位放射線治療のガイドラインはすでに整備されているが、その中では総線量を規定していないため、本研究の値が将来的にガイドラインに盛り込まれる予定である。「強度変調放射線治療における物理・技術的ガイドライン2011」(H23.4.26)に、本研究の内容が盛り込まれた。研究結果の一部は4学会合同発行の「呼吸性移動対策を伴う放射線治療に関するガイドライン」(2012.6.1)に反映され、英語版はJ Radiat Res. 2013 May 1;54(3):561-8に掲載され、世界に発信された。
その他行政的観点からの成果
国内は体幹部定位放射線治療が健保採用となっているが、適応疾患となっているT1-2N0M0非小細胞肺癌への推薦線量は決定しておらず、48Gy/4回を利用してきたが、今回の研究でその線量は最適線量よりも低いことが明らかになった。今後は、保険診療の中での最適線量は従来よりも高い所に設定されることになり、より再発率の低い治療が実現することが期待できる。放射線治療における「呼吸性呼吸性移動対策」の重要性が認められ、加算として、平成23年度から健保収載となった。
その他のインパクト
第31回札幌国際がんシンポジウム「最先端放射線治療とがん研究の最前線」(2013.7.23-24)を主催し、高精度放射線治療の成果を示し、呼吸性呼吸性移動対策の重要性を示した。現在進行中のJCOG0702のT2N0M0肺癌への線量増加試験が行われ、今後のガイドラインの書きなおしがあること、従来は線量が不足して治らなかった腫瘍に対する新たな治療法の希望があることが示された。研究成果が、世界最大の放射線治療学の学会である米国放射線腫瘍学会(ASTRO2013)の口演に採択された。

発表件数

原著論文(和文)
27件
原著論文(英文等)
139件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
113件
学会発表(国際学会等)
105件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計2件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
体内での呼吸性移動が大きい癌に対する放射線治療における呼吸性移動対策が健保収載となった。
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Mizuno H, Kanai T, Kusano Y, et al.
Feasibility study of glass dosimeter postal dosimetry audit of high-energy radiotherapy photon beams.
Radiother Oncol , 86 , 258-263  (2008)
原著論文2
Inoue T, Shimizu S, Onimaru R, et al.
Clinical outcomes of stereotactic body radiotherapy for small lung lesions clinically diagnosed as primary lung cancer on radiologic examination.
Int J Radiat Oncol Biol Phys , 75 , 683-687  (2009)
原著論文3
Bengua G, Ishikawa M, Sutherland K, et al.
Evaluation of the effectiveness of the stereotactic body frame in reducing respiratory intrafractional organ motion using the real-time tumor-tracking radiotherapy system.
Int J Radiat Oncol Biol Phys , 77 , 630-636  (2010)
原著論文4
Nishimura Y, Shibata T, Nakamatsu K,
A two-step intensity modulated radiation therapy method for nasopharyngeal cancer: the Kinki University Experience.
Jpn J Clin Oncol , 40 , 130-138  (2010)
原著論文5
Niibe Y, Hayakawa K
Oligometastases and oligo-recurrence: the new era of cancer therapy
Jpn J Clin Oncol , 40 , 107-111  (2010)
原著論文6
Onodera Y, Nishioka N, Yasuda K,
Relationshiip between diseased lung tissues on computed tomography and motion of fiducial marker ner lung cancer.
Int J Radiat Oncol Biol Phys , 79 , 1408-1413  (2010)
原著論文7
Kato K, Muro K, Minashi K,
Phase II study of chemoradiotherapy with 5-fluorouracil and cisplatin for stage II-III esophageal squamous cell carcinoma:JCOG trial(JCOG9906).
Int J Radiat Oncol Biol Phys  (2010)
原著論文8
Onishi H, Kawakami H, Marino K,
A simple respiratory indicator for irradiation during voluntary breath holding: a one-touch device without electronic materials.
Radiology , 255 , 917-923  (2010)
原著論文9
Onishi H, Shirato H, Nagata Y,
Stereotactic body radiotherapy (SBRT) for operable stage I non-small cell lung cancer : can SBRT be comparable to surgery?
Int J Radiat Oncol Biol Phys  (2010)
原著論文10
Nagata Y, Wulf J, Lax I, et al.
Stereotactic radiotherapy of primary lung cancer and other targets : results of consultant meeting of the international atomic energy agency.
Int J Radiat Oncol Biol Phys , 79 , 600-609  (2010)
原著論文11
Matsuo Y, Nakamoto Y, Nagata Y, et al.
Charaterization of FDG-PET images after stereotactic body radiation therapy for lung cancer.
Radiother Oncol , 97 , 200-204  (2010)
原著論文12
Matsuo Y, Shibuya K, Nagata Y, et al.
Prognostic factors in stereotactic body radiotherapy for non-small-cell lung cancer.
Int J Radiat Oncol Biol Phys , 79 , 1104-1111  (2011)

公開日・更新日

公開日
2015-04-28
更新日
-

収支報告書

文献番号
201020020Z