がんの腹膜播種に対する標準的治療の確立に関する研究

文献情報

文献番号
201020008A
報告書区分
総括
研究課題名
がんの腹膜播種に対する標準的治療の確立に関する研究
課題番号
H20-がん臨床・一般-008
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
白尾 国昭(大分大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 瀧内 比呂也(大阪医科大学 化学療法センター)
  • 仁科 智裕(独立行政法人国立病院機構四国がんセンター)
  • 天貝 賢二(茨城県立中央病院 茨城県地域がんセンター)
  • 浜本 康夫(栃木県立がんセンター)
  • 澤木 明(愛知県がんセンター中央病院)
  • 畠 清彦(財団法人癌研究会有明病院)
  • 大川 伸一(神奈川県立がんセンター)
  • 宮田 佳典(厚生連佐久総合病院)
  • 奥野 達哉(神戸大学病院)
  • 山口 研成(埼玉県立がんセンター)
  • 安井 博史(静岡県立静岡がんセンター)
  • 田中 正博(大阪市立総合医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
13,650,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
腹膜播種を伴う進行胃がんを対象にMTX+5-FU時間差療法と5-FU単独持続静注療法の第Ⅲ相無作為化比較試験を行った(0106試験)。加えて、フッ化ピリミジン系抗がん剤を含むレジメンに不応な胃がん腹膜転移例に対するbest available 5-FUとweekly paclitaxelを比較した無作為化第Ⅱ相試験を行った(0407試験)。これらの試験を通して、腹膜播種を伴う進行胃がんに対する標準的治療法を確立することが本研究の目的である。
研究方法
0106試験:腹膜播種を伴う進行胃癌を対象にMTX+5-FU時間差療法(B群) vs 5-FU単独持続静注療法(A群)のランダム化比較試験を行った。0407試験:腹膜播種を伴う進行胃癌で、一次治療としてフッ化ピリミジン系抗がん剤を使用し不応となった症例を対象に5-FU単独持続静注またはMTX+5-FU時間差急速静注療法(best available 5-FU)(A群) vs weekly paclitaxel(B群)のランダム化比較試験(第Ⅱ相試験)を行った。
結果と考察
<結果>
0106試験:119例が5-FU単独持続静注療法(A群)、118例がMTX+5-FU時間差療法(B群)に割り付けられた。A群およびB群の全生存期間の中央値はそれぞれ9.4ヶ月、10.6ヶ月であり、両者に有意差は認められなかった(HR 0.94、p=0.31)。0407試験:A群に49例、B群に51例、計100例が登録された。生存期間に関して両群に差を認めなかった。
<考察>
本研究(0106試験)の結果はこの領域における初の試験として、世界的にも大きな貢献をもたらすものと思われる。0407試験においては、第Ⅱ相試験であることを考慮したうえで、weekly paclitaxelが今後の比較試験の候補の一つとして位置づけられたものと考える。また、JCOG参加施設で胃がん腹膜転移を対象に5-FU/LV + paclitaxelの第Ⅰ/Ⅱ相試験も行っており、これらをもとに、さらなる治療成績の向上を目指した次期第Ⅲ相試験を開始する予定である。
結論
腹膜播種を伴う進行胃がんを対象に行った第Ⅲ相無作為化比較試験において、現時点の標準治療は5-FU単独持続静注療法であるという結論を得た。

公開日・更新日

公開日
2015-05-15
更新日
-

文献情報

文献番号
201020008B
報告書区分
総合
研究課題名
がんの腹膜播種に対する標準的治療の確立に関する研究
課題番号
H20-がん臨床・一般-008
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
白尾 国昭(大分大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 瀧内 比呂也(大阪医科大学 化学療法センター)
  • 仁科 智裕(四国がんセンター )
  • 天貝 賢二(茨城県立中央病院 茨城県地域がんセンター)
  • 浜本 康夫(栃木県立がんセンター)
  • 澤木 明(愛知県がんセンター中央病院 )
  • 畠 清彦(財団法人癌研究会有明病院)
  • 大川 伸一(神奈川県立がんセンター)
  • 宮田 佳典(厚生連佐久総合病院)
  • 奥野 達哉(神戸大学病院)
  • 山口 研成(埼玉県立がんセンター)
  • 安井 博史(静岡県立静岡がんセンター )
  • 田中 正博(大阪市立総合医療センター )
  • 朴 成和(静岡県立静岡がんセンター)
  • 加藤 俊介(東北大学病院)
  • 中村 朗(総合病院国保旭中央病院)
  • 矢野 友規(国立がんセンター東病院)
  • 山田 康秀(国立がんセンター中央病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
腹膜播種を伴う進行胃がんを対象にMTX+5-FU時間差療法と5-FU単独持続静注療法の第Ⅲ相無作為化比較試験を行った(0106試験)。加えて、フッ化ピリミジン系抗がん剤を含むレジメンに不応な胃がん腹膜転移例に対するbest available 5-FUとweekly paclitaxelを比較した無作為化第Ⅱ相試験を行った(0407試験)。これらの試験を通して、腹膜播種を伴う進行胃がんに対する標準的治療法を確立することが本研究の目的である。
研究方法
0106試験:腹膜播種を伴う進行胃癌を対象にMTX+5-FU時間差療法(B群) vs 5-FU単独持続静注療法(A群)のランダム化比較試験を行った。
0407試験:腹膜播種を伴う進行胃癌で、一次治療としてフッ化ピリミジン系抗がん剤を使用し不応となった症例を対象に5-FU単独持続静注またはMTX+5-FU時間差急速静注療法(best available 5-FU)(A群) vs weekly paclitaxel(B群)のランダム化比較試験(第Ⅱ相試験)を行った。
結果と考察
結果>
 0106試験:119例が5-FU単独持続静注療法(A群)、118例がMTX+5-FU時間差療法(B群)に割り付けられた。A群およびB群の全生存期間の中央値はそれぞれ9.4ヶ月、10.6ヶ月であり、両者に有意差は認められなかった(HR 0.94、p=0.31)。
0407試験:A群(best available 5-FU)に49例、B群(weekly paclitaxel)に51例が登録された。生存期間に関して両群に差を認めなかった。
<考察>
 胃がんの腹膜播種に対する抗がん剤治療はこれまで薬剤による強い毒性が懸念され、研究が行われてこなかった領域である。本研究(0106試験)の結果は今後この領域におけるレファレンスになるものと考える。
0407試験では、weekly paclitaxelが今後の比較試験の候補の一つとして位置づけられるものと考えた。さらに我々は、胃がん腹膜転移を対象にした5-FU/LV + paclitaxelの第Ⅰ/Ⅱ相試験を行っており、これらをもとにさらなる治療成績の向上を目指し、次期第Ⅲ相試験を開始する予定である。
結論
腹膜播種を伴う進行胃がんを対象に行った第Ⅲ相無作為化比較試験において、現時点の標準治療は5-FU単独持続静注療法であるという結論を得た。

公開日・更新日

公開日
2015-05-15
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2012-02-01
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201020008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
1)腹膜播種を伴う進行胃がんを対象にMTX+5-FU時間差療法と5-FU単独持続静注療法の第Ⅲ相無作為化比較試験を行った(0106試験)。その結果、現時点における標準治療は5-FU単独持続静注療法であるという結論を得た。2)胃がんの腹膜播種に対する抗がん剤治療はこれまで薬剤による強い毒性が懸念され、研究が行われてこなかった領域である。本研究では、当初の予想に反しMTX+5-FU時間差療法の有用性を示すことが出来なかったが、その結果は今後この領域におけるレファレンスになるものと考える。
臨床的観点からの成果
1)腹膜播種を伴う胃がんの標準的治療を確立することを目的とした本試験において、我々は5-FU単独持続静注療法が現時点における標準治療の候補であるという結論を得た。
2)これまで標準的治療法の検討さえ行われていなかった領域ではあったが、本研究によって、現時点での効果的でかつ安全な治療の提供が可能となり、大きな利益をもたらすもの思われる。また、標準的治療法の確立という点では、均てん化の促進にも貢献するものと思われる。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
平成23年11月に市民講座を開催、一般市民に向け本研究の成果発表を行い腹膜転移を伴う胃癌に対する安全な標準治療(の候補)の提供が可能となったことなどを述べた。その翌週平成23年11月26日大分合同新聞朝刊に上記内容が掲載された。

発表件数

原著論文(和文)
42件
原著論文(英文等)
104件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
30件
学会発表(国際学会等)
20件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Tetuya Hamaguchi, kuniaki Shirao, Noboru Yamamichi,et al.
A Phase ll Sutudy of Sequential Methotrexate and 5-fluorouracil Chemotherapy in Previously Treated Gastric Cancer : A Report from the Gastrointestinal Oncology Group of the Japan Clinical Oncology Group, JCOG 9207 Trial
Jpn J Clin Oncol , 38 (6) , 432-437  (2008)
原著論文2
Boku N, Yamamoto S, Shirao K,et al.
Fluorouracil versus combination of irinotecan plus cisplatin versus S-1 in metastatic gastric cancer: a randomised phase 3 study
Lancet Oncol , 10 (11) , 1063-1069  (2009)
原著論文3
Takashima A,Shirao K,Hirashima Y,et al.
Sequential chemotherapy with methotrexate and 5-fluorouracil for chemotherapy-naive advanced gastric cancer with disseminated intravascular coagulation at initial diagnosis
J Cancer Res Clin Oncol , 136 (2) , 243-248  (2011)
原著論文4
Shirao K, Boku N, Yamada Y,et al.
Randomized Phase III study of 5-fluorouracil continuous infusion vs. sequential methotrexate and 5-fluorouracil therapy in far advanced gastric cancer with peritoneal metastasis (JCOG0106)
Jpn J Clin Oncol , 43 (10) , 972-980  (2013)

公開日・更新日

公開日
2015-04-28
更新日
-

収支報告書

文献番号
201020008Z