文献情報
文献番号
202501010A
報告書区分
総括
研究課題名
分析ガイドラインの改定に向けた費用対効果評価における方法論およびツール等の開発に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24AA2003
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
福田 敬(国立保健医療科学院)
研究分担者(所属機関)
- 池田 俊也(国際医療福祉大学 医学部 公衆衛生学)
- 石田 博(山口大学大学院医学系研究科 医療情報判断学)
- 森脇 健介(神戸薬科大学 薬学部)
- 赤沢 学(明治薬科大学 公衆衛生・疫学)
- 佐藤 大介(藤田医科大学 大学院医学研究科)
- 大寺 祥佑(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター)
- 能登 真一(新潟医療福祉大学 医療技術学部)
- 齋藤 信也(岡山大学大学院保健学研究科看護学分野基礎看護学領域)
- 田倉 智之(日本大学 医学部 社会医学系 医療管理学分野)
- 後藤 励(慶應義塾大学 経営管理研究科)
- 古元 重和(北海道大学 大学院医学研究院 社会医学分野 医療政策評価学教室)
- 白岩 健(立命館大学 総合理工学院 生命科学部)
- 下妻 晃二郎(学校法人立命館 立命館大学 総合科学技術研究機構)
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
18,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
医薬品・医療機器等の費用対効果評価については中央社会保険医療協議会(中医協)の議論の結果、令和元年度から制度的に導入された。企業分析、公的分析ともに「中央社会保険医療協議会における費用対効果評価の分析ガイドライン」に基づいて分析が実施される。分析ガイドラインは、共通手法をまとめたものであり、費用対効果評価に関する最新の学術的な見解に基づいて作成される。本研究においては、我が国で実施された費用対効果評価の実例・経験の蓄積、諸外国における分析ガイドラインの動向の調査、最新の学術的な動向、我が国における最新の研究結果等を踏まえて、ガイドライン改定を実施し、そのための費用対効果評価に関する方法論やツールの開発を行うことが目的である。
研究方法
本研究では、1.我が国における費用対効果評価の実例、2.諸外国の動向、3.我が国における学術的な検討(3-1方法論に関するもの、3-2評価ツールに関するもの)といった観点に基づき分析ガイドラインに関する課題を検討し、これを踏まえて分析ガイドラインの改定案を作成し提案する。
結果と考察
1.我が国における費用対効果評価の実例
2019年度から本格的に開始された「費用対効果評価制度」において、2026年3月までに指定され評価が終了した43品目について、これらの課題を検討したところ、比較対照技術の選定、追加的有用性、介護費用の扱い等が挙げられた。
2.諸外国の動向
諸外国の動向として、英国NICE における意思決定要素について調査した結果、固定的な ICER 閾値の機械的適用ではなく、不確実性等の様々な要素を踏まえて判断する構造を有することが確認され、その判断が恣意的にならないためには、多様な参加者による委員会での合議が重要であった。
海外主要HTA機関の医薬品技術評価においては、代替エンドポイントの臨床的意義を一定程度認める一方で、真のアウトカムが予測可能な妥当なエンドポイントかを明確に断定されることはほとんどなく、それらの推定における代替性の判断にはいずれも慎重であった。
3.我が国における学術的な検討
3-1方法論に関するもの
生成AI・大規模言語モデル(LLM)は、システマティックレビューや経済モデル構築、RWD解析などの業務効率化に寄与している一方、透明性・再現性の不足、ハルシネーション、バイアスといった課題が指摘されている。諸外国でも対応が検討されており、日本の制度でもAI利用の明示、リスクに応じた段階的運用などの整備が必要である。AIは有用だが、透明性と検証可能性を担保した慎重な導入が求められる。
費用対効果評価におけるRWD活用について提案をまとめた。
3-2評価ツールに関するもの
費用データの分析方法の確立に向けて、具体的な疾患を例として、匿名医療保険等関連情報データベース(NDB)を用いた分析を行った。その結果、長期的費用データ算出に際しては、外的要因を踏まえた事前検討と手順を協議し、分析結果についても精査が必要であると考えられた。
NDBと介護DBに含まれるID4を用いた追跡可能性について検討を行った結果、一定程度、医療介護を跨いだ解析が可能であることが示唆された。
費用対効果評価に介護者のQOL値への影響を加味しようとする際の課題について現実的な手法を検討した.QOLデータベースに,2025年に新たに公表された論文を追加した.
3-3その他
最終的な意思決定のためのアプレイザルの方法について、Equity-Adjusted QALY(公平性で調整した質調整生存年)としてのDCEA(distributional cost-effectiveness analysis:分配的費用効果分析)について検討した。DCEAはその理論的基盤を支える社会の在り方等がわが国とは異なる面も多く、それをそのままわが国の費用対効果評価制度に導入するには、課題も多いと考えられた。
「医療倫理と医療経済」を、診療ガイドラインにおける活用の視点も含めつつ整理を行った。
医療経済評価人材育成の現状について調査しまとめた。
費用対効果評価制度の検討過程を記録しておくことは重要であるため、制度導入に向けた議論を整理した。
4.分析ガイドラインの改訂案の作成
2年間の検討を踏まえて、「中央社会保険医療協議会における費用対効果評価のガイドライン」の改訂版を作成した。
2019年度から本格的に開始された「費用対効果評価制度」において、2026年3月までに指定され評価が終了した43品目について、これらの課題を検討したところ、比較対照技術の選定、追加的有用性、介護費用の扱い等が挙げられた。
2.諸外国の動向
諸外国の動向として、英国NICE における意思決定要素について調査した結果、固定的な ICER 閾値の機械的適用ではなく、不確実性等の様々な要素を踏まえて判断する構造を有することが確認され、その判断が恣意的にならないためには、多様な参加者による委員会での合議が重要であった。
海外主要HTA機関の医薬品技術評価においては、代替エンドポイントの臨床的意義を一定程度認める一方で、真のアウトカムが予測可能な妥当なエンドポイントかを明確に断定されることはほとんどなく、それらの推定における代替性の判断にはいずれも慎重であった。
3.我が国における学術的な検討
3-1方法論に関するもの
生成AI・大規模言語モデル(LLM)は、システマティックレビューや経済モデル構築、RWD解析などの業務効率化に寄与している一方、透明性・再現性の不足、ハルシネーション、バイアスといった課題が指摘されている。諸外国でも対応が検討されており、日本の制度でもAI利用の明示、リスクに応じた段階的運用などの整備が必要である。AIは有用だが、透明性と検証可能性を担保した慎重な導入が求められる。
費用対効果評価におけるRWD活用について提案をまとめた。
3-2評価ツールに関するもの
費用データの分析方法の確立に向けて、具体的な疾患を例として、匿名医療保険等関連情報データベース(NDB)を用いた分析を行った。その結果、長期的費用データ算出に際しては、外的要因を踏まえた事前検討と手順を協議し、分析結果についても精査が必要であると考えられた。
NDBと介護DBに含まれるID4を用いた追跡可能性について検討を行った結果、一定程度、医療介護を跨いだ解析が可能であることが示唆された。
費用対効果評価に介護者のQOL値への影響を加味しようとする際の課題について現実的な手法を検討した.QOLデータベースに,2025年に新たに公表された論文を追加した.
3-3その他
最終的な意思決定のためのアプレイザルの方法について、Equity-Adjusted QALY(公平性で調整した質調整生存年)としてのDCEA(distributional cost-effectiveness analysis:分配的費用効果分析)について検討した。DCEAはその理論的基盤を支える社会の在り方等がわが国とは異なる面も多く、それをそのままわが国の費用対効果評価制度に導入するには、課題も多いと考えられた。
「医療倫理と医療経済」を、診療ガイドラインにおける活用の視点も含めつつ整理を行った。
医療経済評価人材育成の現状について調査しまとめた。
費用対効果評価制度の検討過程を記録しておくことは重要であるため、制度導入に向けた議論を整理した。
4.分析ガイドラインの改訂案の作成
2年間の検討を踏まえて、「中央社会保険医療協議会における費用対効果評価のガイドライン」の改訂版を作成した。
結論
本研究では、費用対効果評価の学術的な課題について、これまでの評価結果や諸外国の同様の制度における最近の取り組み、さらに分析方法やツールの検討などを行った。これらの検討を踏まえて、「中央社会保険医療協議会における費用対効果評価のガイドライン」の改定版を作成した。本分析ガイドラインは2026年1月の中医協総会で了承され、2026年度から分析に使用される予定である。
公開日・更新日
公開日
2026-06-22
更新日
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