ポストコロナ時代における人口動態と社会変化の見通しに資する研究

文献情報

文献番号
202501007A
報告書区分
総括
研究課題名
ポストコロナ時代における人口動態と社会変化の見通しに資する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23AA2005
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
小池 司朗(国立社会保障・人口問題研究所 人口構造研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 林 玲子(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 岩澤 美帆(国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部)
  • 守泉 理恵(国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部)
  • 菅 桂太(国立社会保障・人口問題研究所 人口構造研究部)
  • 中川 雅貴(国立社会保障・人口問題研究所 国際関係部)
  • 石井 太(慶應義塾大学経済学部)
  • 小島 克久(城西国際大学 福祉総合学部)
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
4,076,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、ポストコロナ時代における人口動態と社会変化について主に歴史的、国際的、制度的な観点から見通し、高精度の将来人口・世帯推計を実施するために必要な各種の分析研究を行う。とりわけ、コロナ禍が人口動態にもたらした影響を的確に把握するとともに、ポストコロナ時代における社会変化を見据えた将来人口・世帯数の推計へと還元させていくことを主たる目的とする。
研究方法
研究は以下の①~③の3領域に分けて進めた。
①新型コロナウイルスの人口動態への影響に関する研究
②コロナ禍およびコロナ後を見据えた将来人口・世帯推計モデルの開発
③コロナの影響を踏まえた将来推計の政策的シミュレーションへの応用に関する研究
結果と考察
出生順位別出生を組み合わせた配偶関係別多相生命表を用いた新型コロナ感染症拡大による出生縮減効果推計により、結婚状態と出生順位を考慮した多相生命表による日本の出生行動のモデリングは、新型コロナウイルス感染症拡大が出生率の縮減に与えた影響評価への応用などが可能であることが示された。
外国人の国際移動および国内移動が地域人口変動に与える影響の分析において、日本国内の大半の地域では、高齢化の進展に伴う自然減の拡大により人口減少が加速しており、地域人口変動に占める人口移動の寄与は相対的に低下している一方で、コロナ禍後の国際移動の回復を背景として、外国人の人口動態の影響が一層拡大したことが明らかとなった。外国人の国内人口移動の動向およびその影響の地域差については、雇用機会の地域的偏在に加えて、日本国内での定住志向の強い外国人割合の増加など、各地域に居住する外国人の特性が反映されている可能性がある。
死亡の市区町村較差に人口の配偶関係構造が及ぼす影響の分析から、平均寿命の地域差を、①人口の配偶関係構造の地域差の寄与、②当該地域の全般的な死亡水準の寄与、③配偶関係別死亡率の年齢パターンの地域差の寄与(配偶関係別死亡率の年齢パターンが全国と異なることの寄与)の3つにわけてみると、男女とも約3分の1が①の人口の配偶関係の地域差の寄与、約3分の1が②の全般的な死亡水準の地域差の寄与、約3分の1は以上の回帰分析では説明されない③の配偶関係別死亡率の年齢パターンの地域差の寄与と考えられることがわかった。
結論
出生順位別出生を組み合わせた配偶関係別多相生命表を用いた新型コロナ感染症拡大による出生縮減効果推計に関する研究で行った、結婚状態と出生順位を考慮した多相生命表による日本の出生行動のモデリングは、新型コロナウイルス感染症拡大が出生率の縮減に与えた影響評価への応用などが可能であることが明らかとなった。ただし、本研究では状態間の遷移に関して一定の制約を置いており、実際には死別・離別状態においても出生が発生することや、配偶状態間遷移確率に出生順位による格差が存在することから、このような点を精査していくことが今後の課題である。
外国人の国際移動および国内移動が地域人口変動に与える影響の分析において、近年の外国人人口の増加は、国内人口移動の動向にも影響を及ぼしており、その影響の地域差を伴いながら、多くの地域で人口変動要因として顕在化しつつあることを明らかにした。今後の地域別の人口動向を見通すうえでも、新たな変動要因としての外国人の国内人口移動の影響を考慮する重要性が高まっている。
死亡の市区町村較差に人口の配偶関係構造が及ぼす影響の分析により、地域人口の配偶関係構造は市区町村単位で見た平均寿命の地域差の約3分の1を占める重要な要因であり、地域死亡研究にとって重要な出発点であることがわかった。地域死亡研究において急速に変化する配偶関係構造を取り入れることは、地域人口研究一般の躍進につながる重要な課題であることがわかったことになる。人口の配偶関係構造を手がかかりに、市区町村やさらにミクロな町長字等の小地域の死亡の実態を解明することはますます重要な課題になっている。

公開日・更新日

公開日
2026-06-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2026-06-22
更新日
-

文献情報

文献番号
202501007B
報告書区分
総合
研究課題名
ポストコロナ時代における人口動態と社会変化の見通しに資する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23AA2005
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
小池 司朗(国立社会保障・人口問題研究所 人口構造研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 林 玲子(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 岩澤 美帆(国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部)
  • 守泉 理恵(国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部)
  • 菅 桂太(国立社会保障・人口問題研究所 人口構造研究部)
  • 中川 雅貴(国立社会保障・人口問題研究所 国際関係部)
  • 石井 太(慶應義塾大学経済学部)
  • 小島 克久(城西国際大学 福祉総合学部)
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、ポストコロナ時代における人口動態と社会変化について主に歴史的、国際的、制度的な観点から見通し、高精度の将来人口・世帯推計を実施するために必要な各種の分析研究を行う。とりわけ、コロナ禍が人口動態にもたらした影響を的確に把握するとともに、ポストコロナ時代における社会変化を見据えた将来人口・世帯数の推計へと還元させていくことを主たる目的とする。
研究方法
研究は以下の①~③の3領域に分けて進めた。
①新型コロナウイルスの人口動態への影響に関する研究
②コロナ禍およびコロナ後を見据えた将来人口・世帯推計モデルの開発
③コロナの影響を踏まえた将来推計の政策的シミュレーションへの応用に関する研究
結果と考察
コロナ禍が明けて2 年が経過したが、出生率は回復を見せていない。これは、日本のみならず多くの先進諸国で軒並み観察されている動きであり、その原因として考えられる要因の一つには、プレパンデミック期の少子化傾向への回帰がある。社会生活がコロナ禍前に近い状態に戻ったものの、出産を延期する要因や社会構造は何ら変わっておらず、再び出産延期が始まったという動きに加え、パンデミック期のソーシャルディスタンシングに関わる行動変容や社会混乱の経験が、交際や出会い、結婚の機会減少をもたらし、将来の不確実性に対する不安感を増大させ、現在まで続く出生数・出生率の下落に影響している可能性がある。そうであれば、この下落傾向は簡単には回復しないだろう。
2014年以降における日本人と外国人それぞれの移動数の変化を人口構造要因とモビリティ要因に分解して分析を行ったところ、日本人と外国人の間で人口構造要因とモビリティ要因の変化のパターンは大きく異なり、とくに外国人の移動数の増加は単に人口の増加によるものだけではなく、モビリティの高まりも寄与していることなどが明らかになった。またコロナ禍において、日本人は「非東京圏→東京圏」のモビリティが低下、「東京圏→非東京圏」のモビリティが上昇していたのに対して、外国人は双方の移動ともモビリティが大幅に低下しており、日本人と外国人の間で全く異なる変化パターンを示すという興味深い知見が得られた。
結論
出生に関して、出生意欲と出生力の乖離をなくすためには、これまで行われてきた少子化対策をふまえた上で、さらに若年層の雇用・所得の安定・両立支援という生活基盤の安定化政策の拡充や、晩婚化・晩産化の定着に伴う不妊問題への対処の強化(不妊治療への経済的支援だけでなく、若い時期でも子どもを持てる就業環境の整備や、性と生殖の健康に対する知識の強化などを含む)を行うこと、さらに、ライフデザイン支援や子どもとの触れ合い体験、包括的性教育への取り組みなど教育政策の点からのアプローチも検討していくことが重要である。また、出生順位を組み合わせた配偶関係別生命表を利用することにより、新型コロナ感染拡大による出生の縮減前後の生命表関数を比較し、これに基づいた縮減効果を評価することが可能となった。
死亡に関して、団塊の世代が70歳代後半以上の年齢になる今後10~20年程度の期間は日本の人口史において他例をみない規模の死亡数が発生し、その推移と変化パターンには地理的な偏在があることが見込まれる。小規模自治体で相対的に高齢化が進んでおり、これら自治体では死亡数の早い段階での急増が見込まれる。また、高齢単独世帯には顕著な増加傾向がみられ、孤独死等への対策は喫緊の課題と言える。
人口移動に関しては、コロナ禍に伴って顕著な傾向の変化がみられた。地域人口の変動に対する外国人の国内移動の影響には、日本人の移動とは異なる地域的な傾向が認められるとともに、コロナ禍を経てその地域差が拡大していると結論付けられる。また、コロナ禍によって産み出されたリモートワークやオンライン会議の普及は、日本人の人口移動傾向にも不可逆的な変化をもたらしている可能性もあり、継続的な分析が不可欠である。
年金財政シミュレーションについて、外国人労働者受入れに関する議論は、当面の労働力不足を補うだけの短期的視点で行われることがあるが、本研究による老年従属人口指数と賦課保険料率の相似関係に見られたように、公的年金への財政影響は長期的な人口動向の変化に大きく影響を受ける。すなわち、受け入れた外国人は将来、高齢化して年金受給者に回る一方、家族呼び寄せや出生行動等は新たな年金の支え手を生み出す原動力ともなる。このように、外国人労働者受入れの問題は人口問題でもあって、長期的な視点に立って考えることが求められる。特に、外国人受入れに関する公的年金への影響評価にあたっては、本研究で考察を行ったような長期的かつ定量的な評価を行うことが具体的な施策の議論にとって極めて重要である。

公開日・更新日

公開日
2026-06-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-06-22
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202501007C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究で行われた新型コロナウイルスが人口や社会に及ぼした短期的・長期的影響に関する各種の分析により、人口変化に直接影響する出生・死亡・移動(国際・国内)の動趨勢について的確に把握できるようになることが期待される。研究成果は学術雑誌や学会を通じて発表し、活発な議論が展開されている。
臨床的観点からの成果
対象外
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
本研究で得られた分析結果は関連各分野の施策立案に資する基礎資料として活用が可能である。たとえば、外国人受入れの拡大が長期的な将来人口変動を通じて公的年金財政に与える影響に関する人口学的研究では、受け入れた外国人は将来、高齢化して年金受給者に回る一方、家族呼び寄せや出生行動等は新たな年金の支え手を生み出す原動力ともなることから、公的年金への影響評価にあたっては長期的かつ定量的な評価を行うことが具体的な施策の議論にとって極めて重要と結論づけられた。
その他のインパクト
現時点では特になし

発表件数

原著論文(和文)
7件
原著論文(英文等)
19件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
39件
学会発表(国際学会等)
16件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
小池司朗
都道府県別人口移動数の変化に関する人口学的分析―コロナ前後における非東京圏と東京圏間の移動を中心に―
人口問題研究 , 81 (4) , 283-302  (2025)
https://doi.org/10.50870/0002000604
原著論文2
林玲子
動態積上による日本人生年別人口の再構成と静態統計との比較―1944/45年の死亡構造推計をふまえて―
人口問題研究 , 81 (2) , 147-166  (2025)
https://doi.org/10.50870/0002000515
原著論文3
岩澤美帆・鈴木貴士
人口・子育て環境の地域性と出生力
人口問題研究 , 80 (1) , 3-25  (2024)
https://doi.org/10.50870/0002000266
原著論文4
岩澤美帆・余田翔平・石井太
拡張リー・カーター・モデルを適用した年齢別出生率の推計
人口問題研究 , 81 (3) , 197-220  (2025)
https://doi.org/10.50870/0002000557
原著論文5
菅桂太・小池司朗・鎌田健司
2000年以後の全国と三大都市圏の別にみた月別人口動態の趨勢
人口問題研究 , 82 (1) , 77-100  (2026)
https://doi.org/10.50870/0002000654
原著論文6
守泉理恵
日本・中国・韓国の少子化の進展とその政策対応に関する国際比較
人口問題研究 , 80 (2) , 227-257  (2024)
https://doi.org/10.50870/0002000321
原著論文7
石井太・別府志海・菅桂太、他
月別に拡張した「日本版死亡データベース」による死亡率の期待値と実績値の乖離分析
人口問題研究 , 81 (3) , 221-241  (2025)
https://doi.org/10.50870/0002000558

公開日・更新日

公開日
2026-06-22
更新日
-

収支報告書

文献番号
202501007Z