がん性疼痛などの緩和のための病態生理に基づいた新たな治療法の開発

文献情報

文献番号
201019014A
報告書区分
総括
研究課題名
がん性疼痛などの緩和のための病態生理に基づいた新たな治療法の開発
課題番号
H21-3次がん・一般-012
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
的場 元弘(国立がん研究センター 中央病院 緩和医療科・精神腫瘍科)
研究分担者(所属機関)
  • 白石 成二(国立がん研究センター 研究所 がん患者病態生理研究部 がん疼痛研究室)
  • 鈴木 勉(星薬科大学 薬学部 薬品毒性学教室 薬物依存、緩和医療)
  • 山口 重樹(獨協医科大学 医学部 麻酔科学講座)
  • 西野 卓(千葉大学大学院 医学研究院 麻酔学)
  • 海老原 充(国立がん研究センター東病院 頭頸部外科)
  • 岩瀬 哲(東京大学医学部付属病院 緩和ケア診療部)
  • 山口 拓洋(東北大学病院 医学系研究科 医学統計学分野)
  • 川股 知之(信州大学医学部 麻酔蘇生学講座)
  • 冨安 志郎(長崎市立市民病院 麻酔科診療部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
67,021,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、臨床的に難治性とされる疼痛や呼吸困難などの症状緩和の新たな治療法の
開発のため、動物モデルを用いたメカニズムの確立と臨床試験をトランスレーショナル
リサーチとして行う。
研究方法
胃がん細胞をマウスマウスの腹腔内に移植したがん性腹膜炎モデルマウスで疼痛評価を
行う。第6脊椎骨転移モデルラットを用いて、疼痛反応評価を確立しケタミンの動作時痛
に対する鎮痛効果を評価。ドロナビノールの精神依存の評価のため炎症性疼痛ラットに
よる安全性の評価を行う。これらの結果を臨床試験のプロトコルに反映。がん性呼吸困難
については前年度までに実施した健康成人でのデータをもとにフロセミドの吸入療法と
THAMのプロトコルを作成。
結果と考察
腹膜播種モデルでは、急性膵炎モデルマウスの腹痛を有意に抑制するモルヒネ量では疼痛行動の 抑制が認められず、高用量モルヒネ(5mg/kg)では疼痛スコアの有意な減少が認められたものの完全ではなかった。モルヒ5mg/kgとリドカイン0.4 mg/kgの併用では痛みはほぼ完全に抑制された。脊椎骨転移モデルではケタミン(10mg/kg)により改善が見られたが、NMDA受容体阻害薬のMK-801(0.1mg/kg)では鎮痛効果が有意ではなく、ケタミンの脊椎骨転移に対する鎮痛効果は、NMDA 受容体を介さない作用の可能性が示唆された。ドロナビノールは非疼痛下あるいは疼痛下において、側坐核領域における dopamine 遊離促進作用を示さなかった。さらに、非疼痛下あるいは疼痛下において、ドロナビノールを併用することにより、morphine 誘発 dopamine 遊離促進作用をほぼ完全に抑制した。これらの結果は、カナビノイド受容体作動薬である WIN55,212-2 における先行 実験の結果と相関していることから、ドロナビノールも精神依存形成能をほとんど有していないことが予想される。吸入フロセミドおよびトロメタモール(THAM)点滴静注の臨床試験のための研究 プロトコルの洗練化を行った。研究プロトコルの修正はほぼ終了し、プロトコル審査中。
進行頭頸部がんの症状と機能に関する観察研究は症例集積を開始している。
結論
予定している症状緩和治療のトランスレーショナルリサーチでは新たなモデルの作成に
成功し、試験薬剤の効果やメカニズムの検証も進んでいる。江印象試験のプロトコルも
ほぼ完成しており、症例集積を開始する段階に入っている。

公開日・更新日

公開日
2015-10-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2012-01-17
更新日
-

収支報告書

文献番号
201019014Z