文献情報
文献番号
201019012A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者がん治療アルゴリズム開発のためのガイドポスト・データベースの構築と必須情報及びその推定モデルの策定
課題番号
H21-3次がん・一般-010
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
西山 正彦(埼玉医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 岡崎 康司(埼玉医科大学 医学部 )
- 笹子 三津留(兵庫医科大学 医学部 )
- 渡邊 昌彦(北里大学 医学部)
- 光冨 徹哉(愛知県がんセンター 中央病院)
- 朴 成和(静岡県がんセンター)
- 大江 裕一郎(国立がん研究センター 東病院)
- 中森 正二(国立病院機構大阪医療センター)
- 谷山 清己(国立病院機構呉医療センター・中国がんセンター)
- 岩崎 基(国立がん研究センター がん予防検診センター)
- 坊農 秀雅(大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構ライフサイエンス統合データベースセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
33,442,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
3年間で、1) 後ろ向き、前向きに、臨床情報,疫学的調査による社会・生活情報,及びゲノム・遺伝子解析情報を収集してデータベースを構築し, 2)年齢階層別比較研究などを通じて、高齢者及び高齢者がん症例の生理的特性,腫瘍特性,治療応答特性を策定し, 3)有効な治療の明らかにするとともに、4)これを適正に選択するための 臓器予備能,治療リスク,効果の推定初期モデルを確立する。
研究方法
本年度(平成22年度)は、初年度(平成21年度)の後ろ向き研究の開始を受け、さらに症例登録を推し進め、目標症例数に達したものから順次、治療リスク、治療効果の客観的・科学的予測・推定指標の示唆・確定するための情報解析を開始する。
結果と考察
計2, 520例の登録が終了、後ろ向き研究(がん)、ゲノム・遺伝子研究の2研究でほぼ全症例の登録が完了した。順次情報解析を開始し、大腸がんに関し、a) 術後化学療法においては年齢による交互作用が示唆され、高齢者はむしろこれを行わない場合に予後が悪い傾向にあること、b)高齢者ではむしろ併存症を有する症例で予後が良い傾向にあること、などを明らかとした。また、同じく大腸がんに関して、a)プラチナ製剤、フッ化ピリミジン系抗がん薬の耐性関与遺伝子GSTP1、OPRTの発現が、加齢とともに減少していること、b)加齢とともに腫瘍のKRAS変異率は有意に高まるが、予後には大きく影響しないこと、などを見出した。さらに、塩酸イリノテカン、mFOLFOX6療法に関し、複数遺伝子による効果予測系を設定、特許を申請した。また、80才以上の肺がんであっても適切な症例選択がなされれば手術療法が推奨されることや、胃がんにおいては、化学療法レジメンによって年齢とリスク・ベネフィットバランスの関係が、化学療法レジメンによって異なることなどが示された。これらの新知見は、高齢者がん治療に新たな展開をもたらす可能性がある。
結論
症例の登録は急速に進み、ほぼ計画通りに進んでいる。ここで得られた情報および遺伝子ゲノム解析情報は順調にデータベース化され、これらデータを用いた解析から、大腸がん症例に関しては、一般的概念と異なり、高齢者であっても併存疾患が十分に管理されている状況であれば、若年者同様、標準的治療を行い、プラチナ製剤、フッ化ピリミジン系抗がん薬を中心とする術度保持化学療法はむしろ積極的に展開すべきことなどを示唆する新知見を得た。複数遺伝子による薬物療法効果予測系の設定にも至っており、治療リスク、治療効果の客観的・科学的予測・推定指標の示唆・確定を通じて高齢者がん治療のアルゴリズム確立に貢献するものと思われる。
公開日・更新日
公開日
2015-10-05
更新日
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