幹細胞制御によるがん治療法開発のための基盤研究

文献情報

文献番号
201019003A
報告書区分
総括
研究課題名
幹細胞制御によるがん治療法開発のための基盤研究
課題番号
H21-3次がん・一般-001
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
落谷 孝広(独立行政法人国立がん研究センター研究所 分子細胞治療研究分野)
研究分担者(所属機関)
  • 森 正樹(大阪大学 大学院 消化器がん)
  • 北村 俊雄(東京大学医科学研究所)
  • 岡本 康司(国立がん研究センター 研究所 早期がん研究プロジェクト)
  • 横山 明彦(国立がん研究センター 研究所 分子狩猟学部)
  • 金子 周一(金沢大学医薬保健研究域医学系)
  • 大河内 仁志(国立国際医療センター研究所 国際臨床研究センター 細胞組織再生医学研究部)
  • 畑田 出穂(群馬大学)
  • 増富 健吉(国立がん研究センター 研究所 がん性幹細胞研究プロジェクト)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
72,881,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
癌の発生・進展・移転・再発・治療抵抗性の全ての段階に於いて「がん幹細胞」が深く関わる。本研究の目的はがん幹細胞の生物学的特徴の解明のための基盤技術を開発することで、幹細胞の制御をもとにした新たながん治療法の創出を推進する。
研究方法
ヒト乳がん、肺がん、大腸がん、白血病細胞株等を用いて、がん幹細胞の標的分子候補やmicroRNAsの定量化を行い、がん幹細胞における標的分子群とそれを制御するmicroRNAsの発現様式の全体像を明らかにする。また、がん幹細胞、がん細胞のエピゲノムの状態を明らかにし、がん幹細胞に特徴的な遺伝子を特定する。
結果と考察
1)乳がん治療標的分子RPN2のがん幹細胞制御のメカニズム解明と前臨床試験
RPN2の阻害はがん幹細胞の消失につながる。さらにRPN2分子はがん幹細胞において、mutant p53を制御することでその治療抵抗性を維持するメカニズムも明らかにした。今後は、前臨床試験の位置づけである、RPN2陽性イヌの自然発生腫瘍でのRPN2siRNAの治療効果を判定する過程に進む。
2)治療抵抗性を克服するための標的分子の同定
CD13+CD90-癌幹細胞のCD13分子を阻害することにより癌幹細胞の治療後生存が阻害され、個体レベルでの腫瘍の縮小に寄与できることを見い出した。原発巣ニッチから逸脱して標的臓器に至り、新たなニッチを創成する転移の成立過程に於いて、CD13分子の役割解明に発展させる。CD44を標的にした核酸治療薬の開発を試みる可能性が生まれた。
3)がん幹細胞に対しての特異的抗がん作用を有する薬剤のスクリーニング
作製した、がん幹細胞モデルを用いて、抗がん剤ライブラリー、および製薬企業から提供をうけた天然化合物ライブラリー(共同研究契約締結にてすでに提供いただいている)を対象として、がん幹細胞に対しての特異的抗がん作用を有する薬剤のスクリーニングを検討する。
結論
平成22年度の研究成果としては、がんにおけるがん幹細胞の分子生物学的な性状をゲノム、エピゲノムなどの観点から解析することで、がん幹細胞の特異的分子マーカーと考えられるRPN2(乳がん、大腸がん)、CD13, CD90(大腸がん),EpCAM(肝細胞がん)などの分子メカニズムの解析を進めるとともに、これらの標的分子の阻害剤の開発にも着手し、動物実験等での成果を上げた。

公開日・更新日

公開日
2015-10-05
更新日
-

収支報告書

文献番号
201019003Z