胎児期から乳幼児期を通じた発育・食生活支援プログラムの開発と応用に関する研究

文献情報

文献番号
201018008A
報告書区分
総括
研究課題名
胎児期から乳幼児期を通じた発育・食生活支援プログラムの開発と応用に関する研究
課題番号
H20-子ども・一般-009
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
瀧本 秀美(国立保健医療科学院 生涯保健部)
研究分担者(所属機関)
  • 加藤 則子(国立保健医療科学院 生涯保健部)
  • 板橋 家頭夫(昭和大学 医学部)
  • 吉池 信男(青森県立保健大学 健康科学部)
  • 横山 徹爾(国立保健医療科学院 人材育成部)
  • 草間 かおる(山口県立大学 看護栄養学部)
  • 米澤 純子(国立保健医療科学院 公衆衛生看護部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
4,320,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
乳幼児の栄養評価指標としての発育曲線活用のための簡便な方法の確立を行う。また、小児の咀嚼行動と身体状況の把握を行う。よりよい妊娠転帰と児の健全な発育のために、妊娠中の食生活に関する問題把握と、食生活支援者の問題点を把握する。
研究方法
1) 平成12年乳幼児身体発育調査データにColeのLMSメソッドを適用し、発育曲線の作成を試みた。
2)小学1?3年生について乳児期の乳汁栄養と現在の体格について調査した。
3)5歳児61名を対象に、咀嚼回数と身体状況の関連を調査した。
4)大阪府と東京都で、子育て中女性204名から回収した妊娠中の食生活・体重・体型に関する質問紙調査の分析を行った。
5)中核市及び青森県、埼玉県、山口県、鹿児島県の約200市町村の母子保健事業担当者から、食生活支援で対応困難であった事例45件を回収、分析した。
 日本助産師会員820名から「妊産婦のための食生活指針」・「授乳・離乳の支援ガイド」の認知と活用状況に関する質問紙調査を回収した。
結果と考察
1)乳幼児身体発育曲線は、拡張3次スプラインによる平滑化曲線が求められ、比較的簡便な数式で表すことができた。
2)男児では母乳栄養群は人工栄養群に比べ体重が有意に少なかったが、女児では有意な体重の差は認められなかった
3)食事時間調整咀嚼回数と肥満度についてのみ、有意な負の相関(r = -0.28;p = 0.041)がみられた。さらに、食事に要した時間と身長、体重、肥満度に有意な負の相関がみられた。
4)妊娠中は「太っていた」と回答した者が56%みられた。妊娠中の体重増加に4割の者が「全く満足していない」と回答した。
5)対応に苦慮した事例では、「母乳・卒乳・離乳食」が27件と最も多かった。
助産師の「妊産婦のための食生活指針」と「授乳・離乳の支援ガイド」の認知度は6割、活用はその6割であり、30代・40代の活用が低い傾向にあった。
結論
1)身体発育曲線を計算するプログラムを作成し、計算手順の透明化が図られた。
2)男児は母乳栄養の方が人工栄養に比べ体重が有意に少なかった。
3)肥満傾向幼児ほど食事時間が短く、噛む回数が少ないことが明らかとなった。
4)妊娠中の体型に対する過大評価の傾向が顕著で、体重増加量が少ないほど満足度が高かった。
5)母子保健事業の栄養指導等について初めて事例収集が実施された。
 助産師の食生活支援を容易にするための情報提供が重要であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2011-09-15
更新日
-

文献情報

文献番号
201018008B
報告書区分
総合
研究課題名
胎児期から乳幼児期を通じた発育・食生活支援プログラムの開発と応用に関する研究
課題番号
H20-子ども・一般-009
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
瀧本 秀美(国立保健医療科学院 生涯保健部)
研究分担者(所属機関)
  • 加藤 則子(国立保健医療科学院 生涯保健部)
  • 板橋 家頭夫(昭和大学 医学部)
  • 吉池 信男(青森県立保健大学 健康科学部)
  • 横山 徹爾(国立保健医療科学院 人材育成部)
  • 草間 かおる(山口県立大学 看護栄養学部)
  • 米澤 純子(国立保健医療科学院 公衆衛生看護部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
胎児期から乳幼児期の栄養は、一生涯にわたる健康維持にとって重要である。よりよい妊娠転帰と児の健全な発育のためには、妊娠期から乳幼児期を通じてのエビデンスに基づいた健康的な食生活の支援の推進が求められている。
研究方法
本研究では、1)新しい乳幼児身体発育値の作成にあたり、①諸外国での乳幼児身体発育曲線の文献的考察(平成20年度)、②乳幼児身体発育曲線の推定のための理論的検討(平成20―21年度)、③LMS法による発育曲線の作成に関する検討(平成22年度)を行った。2)妊娠期から子育て期の食生活支援の基礎資料作成と、支援プログラムの検討をおこなった。3)乳幼児期から学童期を通じた食育のアウトカム指標の一つとして咀嚼回数を正しく測定し、評価するために「小児用簡易咀嚼回数計」を用い検討した。
結果と考察
1)WHOおよび8カ国の成長曲線作成に関する論文について検討を行い、長所と短所を整理した。2000年の乳幼児身体発育調査を用い妊娠34・35週出生児の場合修正月齢を適用するとどの項目においても、出生後2,3か月は基準より大きい値となることが分かった。LMS法を用いた発育パーセンタイル曲線を推定するための数式を作成し、これを活用するための計算プログラムを開発した。
2)「妊産婦のための食事バランスガイド」を用いた食生活支援の有用性が示され、活用のための教育用ビデオ、ダイアリー、リーフレットの作成をおこなった。地域の医療機関と保健センターで、共通の認識の下で食に関する情報提供を進める環境整備が必要であると考えられた。分娩に携わる助産師のほとんどが妊産婦の食生活指導を実施し、個別指導や母親学級を通して指導しており、妊産婦への食生活指導の大きな担い手である実態が明らかとなった。自治体での対応困難事例では、母乳・卒乳・離乳食に関する者が約半数を占めた。
3)幼児期における肥満の改善や予防において、「よく噛んで食べる」「食事に時間をかける」といった咀嚼行動へのアプローチが有用であり、望ましい咀嚼行動を身につけさせる上で保護者の関わりの重要性が示唆された。
結論
これらの研究成果は、「日本人の食事摂取基準(2010年版)」の策定のための基礎資料となり、その基準に反映された。また地域の母子保健サービス事業の中で展開し得る妊娠初期から3歳児健診に至る継続的な食生活支援とモニタリングの仕組みに関して、実施可能性と有用性が示された。これらのことは、「胎児期から乳幼児期を通じた発育・食生活支援プログラムの開発と応用」に資する成果である。

公開日・更新日

公開日
2011-09-14
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201018008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
小児の咀嚼と身体状況や栄養摂取との関連を明らかにすることができた。また、継続的な葉酸サプリメントの摂取は胎児発育を促進しないことが示唆された。
臨床的観点からの成果
乳幼児身体発育曲線を簡便な数式で表すことができ、個々の児の身体発育評価に応用できると考えられた。「妊産婦のための食事バランスガイド」を用いた栄養教育の有用性が確認された。
ガイドライン等の開発
「日本人の食事摂取基準 2010年版」策定の際に「乳児・小児、妊婦・授乳婦」の項目内容に本研究班の成果が反映された。
その他行政的観点からの成果
乳幼児身体発育調査企画・評価研究会に分担研究者加藤・吉池・板橋・横山が委員として参画し、平成22年度乳幼児身体発育調査の企画・実施に貢献した。
その他のインパクト
平成23年2月22日釧路新聞、2月23日苫小牧民報、3月1日琉球新報に「考え直して!妊娠中のダイエット」として取り上げられた。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
7件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
15件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
その他成果(普及・啓発活動)
3件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
佐藤ななえ,吉池信男
小児用簡易咀嚼回数計を用いた測定方法の基礎的検討
栄養学雑誌 , 68 (3) , 213-219  (2010)
原著論文2
佐藤ななえ,吉池信男
実験食における咀嚼回数を指標とする小児の咀嚼行動に関連する因子の検討
栄養学雑誌 , 68 (4) , 253-262  (2010)
原著論文3
林芙美
"妊産婦のための食事バランスガイド"を活用した栄養教育及びセルフモニタリングについて
栄養学雑誌 , 68 (6) , 359-372  (2010)
原著論文4
Takimoto H, Hayashi F, Kusama K, et al.
Elevated maternal serm folate in the third trimester and reduced fetal growth: a longitudinal survey
J Nutr Sci Vitaminol , 57 , 130-137  (2011)

公開日・更新日

公開日
2014-05-23
更新日
-

収支報告書

文献番号
201018008Z