文献情報
文献番号
201018002A
報告書区分
総括
研究課題名
不育症治療に関する再評価と新たなる治療法の開発に関する研究
課題番号
H20-子ども・一般-002
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
齋藤 滋(国立大学法人富山大学 大学院医学薬学研究部)
研究分担者(所属機関)
- 杉浦 真弓(名古屋市立大学 大学院医学研究科)
- 丸山 哲夫(慶應義塾大学 医学部)
- 田中 忠夫(東京慈恵会医科大学 産科婦人科学)
- 竹下 俊行(日本医科大学 産婦人科)
- 山田 秀人(神戸大学 大学院医学研究科)
- 小澤 伸晃(国立成育医療研究センター 周産期診療部)
- 中塚 幹也(岡山大学 大学院保健学研究科)
- 木村 正(大阪大学 大学院医学系研究科)
- 藤井 知行(東京大学 医学部附属病院)
- 下屋 浩一郎(川崎医科大学 産婦人科学)
- 山本 樹生(日本大学 医学部)
- 佐田 文宏(国立保健医療科学院 疫学部社会疫学室)
- 康 東天(九州大学 大学院医学研究院)
- 早川 智(日本大学 医学部)
- 一瀬 白帝(山形大学 医学部)
- 柳原 格(大阪府立母子保健総合医療センター研究所)
- 秦 健一郎(国立成育医療研究センター研究所 周産期病態研究部)
- 勝山 博信(川崎医科大学 公衆衛生学)
- 堤 康央(大阪大学 大学院薬学研究科)
- 中野 有美(名古屋市立大学 大学院医学研究科)
- 福井 淳史(弘前大学 医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
22,990,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
不育症の病態を明らかにし、それらの結果を基にした不育症管理法の向上を目的とする。あわせて広報活動を行ない不育症のことを正しく一般の方々に理解してもらうことを目的とする。
研究方法
不育症の病態を明らかにするために、臨床共同研究と基礎研究を行なった。また一般市民ならびに産婦人科医に対するアンケート調査を行なった。
結果と考察
健康診断を受ける35歳から75歳の一般市民の妊娠歴の調査により、日本における不育症の頻度が明らかとなった(2回以上の連続流産が4.2%、3回以上の連続流産が0.88%、毎年3万人の不育症患者出現と推計)。また、多くの一般市民は不育症のことを知らないため、ホームページ(HP)を開設し、正確な情報発信をおこなった。不育症の専門家が少なく、治療方針が決まっておらず一定した管理・治療がおこなわれていないため、研究班で検査や治療方針のエビデンスを整理し、「不育症管理に関する提言」として、全国の1、805ヶ所の産婦人科診療所、病院に配布した。不育症データベースの作成により、(1)不育症のリスク因子頻度(2)リスク因子が同定されず胎児染色体異常を繰り返したと考えられる偶発例では、その後特段の治療をしなくても予後良好であったこと(3)不育症例では流産回数が増すにつれて精神的ストレスが高まること(4)既往流産回数が2回の際、リスク因子の有無にかかわらずカウンセリングが妊娠成功率を高めること(5)初期流産を繰り返すプロテインS欠乏症ではアスピリンもしくはヘパリン療法が有効であること(6)子宮奇形では、中隔子宮では手術療法が妊娠予後を改善したが、双角子宮では手術療法のメリットはなかったこと、が明らかになった。その他基礎的研究ではストレス要因と遺伝的要因が流産に関与すること、原因不明流産の一部の胎盤にDNAメチル化異常が認められること、抗リン脂質抗体がtoll like receptor(TLR)やCD1Dを介して炎症を惹起させること、プロテインZ(PZ)、PZIが不育症で増加しないこと、化粧品や食品に含まれるナノマテリアルがマウスで流産や子宮内胎児発育遅延を起こす等の新知見を得た。また、ヘパリン自己注射について調査を行った結果、重篤な副作用はなく、患者を教育すれば十分自己注射が可能と考えられた。
結論
臨床的、基礎的立場から不育症の実態、病因、治療成績を明らかにし、一般の方々にはHPを介して情報発信し、不育症治療の均霑化を計るため、全国の産婦人科診療所に不育症管理に関する提言を発送した。不育症が患者ならびに医療関係者に正しく認識され、適切な治療が行なわれることに寄与した。
公開日・更新日
公開日
2011-09-06
更新日
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