文献情報
文献番号
201015013A
報告書区分
総括
研究課題名
アデノ随伴ウイルスを用いたデュシェンヌ型筋ジストロフィーに対する遺伝子変異集積領域のエクソン・スキップ治療
課題番号
H21-トランス・一般-011
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
武田 伸一(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 遺伝子疾患治療研究部)
研究分担者(所属機関)
- 岡田 尚巳(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 遺伝子疾患治療研究部)
- 永田 哲也(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 遺伝子疾患治療研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
47,056,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
従来我々は、アンチセンス・モルフォリノを用いたデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)に対するエクソン・スキップ治療の前臨床的研究および治験を推進してきた。ただし、現行の人工核酸では、心筋への導入効率および作用時間が不十分であり、高い臨床的効果を得るためには、これらの課題を克服する必要がある。本研究では、安全で心筋への導入効率が高いアデノ随伴ウイルス(AAV)を応用したベクターや中空粒子を構築し、その治療効果を検証することを目的とする。
研究方法
最小限のエクソンを標的として広範囲のスキップを誘導する条件を、培養細胞の系で検討した。9型AAVをアンチセンスの担体とする工夫としては、効率的にモルフォリノを中空粒子に取り込ませる手法を開発し、培養細胞の系でモルフォリノ含有中空粒子の細胞内導入効率を検証した。また、核内局在化と持続的な効果を目的として、改変U7snRNAに結合したアンチセンス配列を発現させるベクターを構築した。さらに、mdxマウスや筋ジス犬に小型ジストロフィン発現ベクターを投与し、心筋や全身骨格筋への送達効果や免疫応答を検討した。
結果と考察
マウス筋芽細胞C2C12を用い、広範囲のスキッピングを効果的に誘導する条件を検討したところ、5種類のアンチセンスで10個のエクソンのスキップが誘導できた。心筋DDS担体の開発としては、界面活性剤を用い、効率的にモルフォリノを中空粒子に取り込ませることに成功した。また、改変U7snRNAに結合したアンチセンス配列を発現させる9型AAVベクターを構築し、ヒト培養細胞の系でエクソン51スキップの誘導を確認した。mdxマウスに短縮型ジストロフィン発現9型AAVベクターを静脈内投与したところ、心筋において一年半以上発現が持続し、心機能改善効果が得られた。筋ジス犬においても、胎児治療による長期発現と呼吸循環機能の改善効果を確認した。
以上の通り、遺伝子変異集積領域における複数エクソンをスキップさせるための基盤的技術が開発できた。また、アンチセンス分子を効果的に標的組織に送達するための手段として、9型AAVを応用したベクターや中空粒子が有効であった。
以上の通り、遺伝子変異集積領域における複数エクソンをスキップさせるための基盤的技術が開発できた。また、アンチセンス分子を効果的に標的組織に送達するための手段として、9型AAVを応用したベクターや中空粒子が有効であった。
結論
本研究の結果から、AAVを応用したエクソン・スキップ治療は、現在の人工核酸を用いた治療方法の効果を大きく改善できると考えられる。改変U7 snRNA発現ベクターや中空粒子を用いたDMDに対するエクソン・スキップ治療の有効性と安全性が期待される。
公開日・更新日
公開日
2011-09-09
更新日
-