文献情報
文献番号
202428015A
報告書区分
総括
研究課題名
畜水産食品中の動物用医薬品等の新たな評価管理手法の導入のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24KA1007
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
穐山 浩(星薬科大学 薬学部 薬品分析化学研究室)
研究分担者(所属機関)
- 小川 久美子(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 病理部)
- 中村 公亮(国立医薬品食品衛生研究所 食品部第五室)
研究区分
食品衛生基準科学研究費補助金 分野なし 食品安全科学研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和8(2026)年度
研究費
3,061,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
日本でも動物用医薬品の評価管理においても、ARfDを含めた評価方法の確立が必要であるが、海外でも動物用医薬品にARfDが設定された例は限定的であり、継続的な国際状況の情報収集が必要である。また、欧州医薬品庁(EMA)ではサケ(salmon)以外が、米国食品医薬品局(FDA)では全ての水産物は希少動物種(minor species)とされる。。特に、水産品目については、日本での使用実績のある医薬品の対象品目の分類や暴露基準に関する国際整合性構築の為、十分な調査が必要である。また、動物用医薬品のみならず、以前に使われていた農薬で、現在では使用が禁止されている農薬や、日本に規格基準がない汚染物質の規格基準設定にあたっても、コーデックス基準や海外の規格基準の設定手法との整合が求められている。国際機関及び諸外国等における評価手法及び評価実績の情報収集を実施してARfDの算出方法等を提案するとともに、日本の畜水産物の食品摂取量を調査し、国際整合性のとれたリスク評価・暴露評価に資する評価手法の提案を目指すことを目的とする。
研究方法
欧州食品安全機関(Europe Food Safety Authority; EFSA)、EMA、FAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)の畜水産食品中の動物用医薬品の評価ガイダンスと評価実績の情報収集をおこない、問題点の抽出、ARfDの付与状況及び農薬での扱いについて検討した。水産食品の摂取量の調査データは、水産食品の種類に応じて分類し、日本食品標準成分表の食品番号との対応表を作成して比較した。調査データおよび日本食品標準成分表の食品番号を解析し、個別に記載されている食品名の分類の精査を行った。年齢区分ごとの各個人の体重あたりの、個々の1日摂取量を集計した。
結果と考察
EFSA、EMA、JECFAの畜水産食品中の動物用医薬品の評価ガイダンスと評価実績の情報収集をおこない、問題点の抽出、急性参照用量(ARfD)の付与状況及び農薬での扱いについて検討した。EFSA, EMAなどにおいては、動物用医薬品にARfDを付与する事例は確認できなかった。一方で、農薬が動物の可食部位から検出される事例や、発達神経毒性などの新規データによるADI及びARfD値の変更事例などから、定期的な見直しが必要と考えられた。また、JECFAに比較し、農薬を対象とするJMPRでは、ARfDの付与例は多くみられるため、その精査はARfDの要件解析に有用と考えられた。水産食品に残留する動物用医薬品等による短期ばく露リスクの評価を目的とし、ARfDに基づいたばく露評価の国際的手法であるGlobal Estimate of Acute Dietary Exposure(GEADE)を活用して、日本の食事調査データを用いた評価方法の整備を試みた。まず、2005~2007年度の全国食事調査データから水産食品10分類を抽出し、年齢区分別に一人当たりの体重あたりの摂取量を統計的に解析した。摂取量97.5パーセンタイルと水産食品の残留基準値を用い、ARfDとの比較を行った結果、一部の動物用医薬品ではARfDの50%以上に達する可能性が示された。特に小児層では高いばく露量が見られた。本研究は、国内におけるばく露評価に必要な水産食品の摂取量データの整備と、国際的評価基準との整合性の確保の必要性を示すとともに、将来的にはより現実的で精緻な評価手法の構築を促す基盤を提供した。
結論
EFSA, EMAなどにおいては、動物用医薬品にARfDを付与する事例は確認できなかった。一方で、農薬が動物の可食部位から検出される事例や、発達神経毒性などの新規データによるADI, ARfD値の変更事例などから、定期的な見直しが必要と考えられた。また、JECFAに比較し、農薬を対象とするJMPRでは、ARfDの付与例は多くみられるため、その精査はARfDの要件解析に有用と考えられた。JECFA、EFSA、EMA等で採用された国際的な短期ばく露量の推定モデルであるGEADEに基づいて、畜水産食品の一人当たり一日摂取量97.5パーセンタイルから推計される動物用医薬品等の短期ばく露量への影響を解析した。水産食品については、2000年代全国食事調査の結果から、国内で基準値が設定された分類10種に分けてデータの抽出を行い、5つの年齢区分の各個人の体重1kgあたりの1日摂取量を集計した。特に1~6歳の年齢区分における短期ばく露量が高く算出される傾向にあった。日本人の短期ばく露量を導き出すための食事調査データは十分に得られておらず、そのような食事調査データからの統計値の算出の問題は課題として残された。
公開日・更新日
公開日
2025-10-02
更新日
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