残留農薬規制における国際整合を推進するための研究

文献情報

文献番号
202428014A
報告書区分
総括
研究課題名
残留農薬規制における国際整合を推進するための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23KA1014
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
渡邉 敬浩(国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部)
研究分担者(所属機関)
  • 佐藤 安志(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構果樹茶業研究部門 茶業研究領域)
  • 清家 伸康(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 農業環境研究部門)
  • 坂 真智子(株式会社エスコ)
  • 飯島 和昭(財団法人残留農薬研究所 化学部)
研究区分
食品衛生基準科学研究費補助金 分野なし 食品安全科学研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
6,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
農薬残留物規制の国際整合においては、最大残留基準値(MRL)の設定及び検査体制の構築が極めて重要である。厚生労働省が定めた基本原則は消費者庁に引き次がれ農薬残留物規制国際整合の基礎とされているが多くの課題が残されている。本研究では、国際整合をさらに進め世界に遅れることなく更新していくために、MRL設定と検査に関連する分野を横断して最新情報を収集・整理し、新たな提案や分析法開発を行うことを目的として、①後作物由来食品のMRL設定の国際整合に関する研究、②グループMRL設定対象食品群の決定方法の開発に関する研究、③茶のMRL設定の課題特定とQuEChERS法の開発と導入に関する研究、④国際標準のMRL設定に影響する評価機関等の動向調査、⑤残留農薬規制に影響する将来的な課題と各国の検討状況の調査を実施する。
研究方法
①後作物由来食品のMRL設定の国際整合:EU及び米国における後作物残留に関するガイダンス等に関する情報を入手し比較解析した。
②グループMRL設定対象食品群の決定方法:3Dスキャナーを用いた形態解析法を導入することにより、形態が複雑な作物における農薬残留物濃度予測法の適用拡大を試みた。
③茶のMRL設定の課題特定とQuEChERS法の開発と導入:近年新規登録された16種類(17成分)の農薬類をCritical GAP(cGAP)の条件で投与した大規模なインカード/コントロール試料を作製し、これらを有効活用して茶を対象とするQuEChERS法の妥当性確認や分析法、規制対策の国際整合に向けた検討を行った。
④国際標準のMRL設定に影響する評価機関等の動向調査:JMPR報告書を入手し、一般検討事項を中心にMRL設定に影響する議論の内容並びに背景を整理した。また、Codex委員会の枠組みにおけるMRL設定手続きの詳細を文書化した“Risk analysis principles applied by the Codex Committee on Pesticide Residues”を翻訳し解説を加えた。
⑤残留農薬規制に影響する将来的な課題と各国の検討状況の調査:U.S. EPA、EFSAといった機関や豪州、カナダ等の国による農薬残留物規制の動向を調査した。
結果と考察
①後作物由来食品のMRL設定の国際整合:国際整合の観点から後作物由来食品を対象としたMRL設定を検討する際には、OECDガイダンス及びテストガイドラインに準拠することが合理的であると考えられた。
②グループMRL設定対象食品群の決定方法:データに基づき導出した関係式を用いた残留物濃度予測モデルにより実残留物濃度を予測した結果、予測値と実測値との間には良好な相関関係が認められた。以上から、3Dスキャナーを用いた形態解析法の導入により球形以外の作物にも本予測モデルの適用が可能であることを確認した。
③茶のMRL設定の課題特定とQuEChERS法の開発と導入:茶の農薬残留物一斉分析の比較のためにインカード試料を使い、QuEChERS法による抽出・前処理をした複数の分析法とQuEChERS法による抽出等は行わず、公示分析法による分析値を比較するとともに、合組サンプルを用いたサンプル調製等についても検討し、茶の農薬残留物分析やQuEChERS法に係る基礎的な知見を得ることが出来た。
④国際標準のMRL設定に影響する評価機関等の動向調査:JMPR報告書に含まれる一般的検討事項の内容を翻訳するとともに論点を明らかにした。その結果、新たな長期ばく露量であるGECDEの導入には多くの課題があることが指摘された。Risk analysis principles applied by the Codex Committee on Pesticide Residuesの翻訳版は、Codex残留農薬部会(CCPR)の出席者にとって有用な資料となることが示された。
⑤残留農薬規制に影響する将来的な課題と各国の検討状況の調査:毒性評価における動物実験の代替法、また再評価の事例に注目した情報が収集され、わが国における将来の農薬残留物規制に必要となる可能性のある事項を把握することができた。
結論
わが国における後作物由来食品を対象としたMRL設定に関してもOECDにおける考え方を踏襲することが国際整合になることが示された。グループMRL設定に資する農薬残留性を評価するための手法並びに予測モデルの開発が進められた。茶に含まれる農薬残留物を対象とする簡易な農薬分析法(QuEChERS法)の開発が更に進められた。JMPR報告書の解析により、新たな長期ばく露量(GECDE)のリスク管理における実装に伴う課題が明らかにされた一方、CCPR出席者に有用な資料が作成された。また、諸外国が現在取り組んでいる残留農薬規制に関する課題が明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2025-10-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-10-02
更新日
-

収支報告書

文献番号
202428014Z