加工食品中の残留農薬等による暴露量を評価するための研究

文献情報

文献番号
202428013A
報告書区分
総括
研究課題名
加工食品中の残留農薬等による暴露量を評価するための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23KA1013
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 美成(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
研究分担者(所属機関)
  • 渡邉 敬浩(国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部)
  • 藤原 綾(国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部)
  • 村上 健太郎(東京大学 大学院医学系研究科)
  • 篠崎 奈々(東京大学 医学系研究科 公共健康医学専攻 社会予防疫学分野)
研究区分
食品衛生基準科学研究費補助金 分野なし 食品安全科学研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
7,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、2016年~2021年に実施された食品摂取頻度・摂取量調査の結果から、農薬の最大残留基準値 (MRL) 設定時に行われる暴露量推定に使用可能な生鮮農産品 (RAC) 消費量を算出することを最大の目的とし、さらに算出した消費量を用いて暴露量を推定するため、4つの分担課題を実施した。
分担課題1: 生鮮農産品消費量算出における課題と算出方針に関する研究
分担課題2: 生鮮農産品消費量の算出に関する研究
分担課題3: 残留農薬の暴露量推定およびリスク評価に関する研究
分担課題4: 加工食品に係る残留農薬規制と暴露評価の国際標準に関する研究.
研究方法
分担課題1: RAC消費量を算出するための技術的特記事項を検討し、マッピング案を作成した。
分担課題2: 分担課題1で作成した情報を基に、算出根拠を明確化した上で、食品変換係数及び配合割合を算出した。
分担課題3: 現行の暴露評価書の情報を基に、暴露評価の対象食品について情報を整理した。また、厚生労働省が行った「食品中の残留農薬等検査結果」の2013~2018年の公表データを用いて、より現実的な暴露露評価を行うための、残留濃度について解析を行った。
分担課題4: 欧州における取組の情報を収集し整理することを通じて、加工食品の消費に由来する農薬残留物への暴露量の科学的評価の必要性について考察した。
結果と考察
本年度は、日本食品標準成分表(七版)の農産品に相当する食品分類のうち、残りの「1 穀類」~「6 野菜類」、「8 きのこ類」、「14油脂類」~「17 調味料類及び香辛料類」を対象とした。技術的特記事項の検討については、RAC消費量を算出するための具体的な方法とプロセスを構築し、その実施において留意すべき事項を取りまとめた。特に、今後の暴露量推定における課題として、派生品や複合食品が多い食品群における歩留まりや配合割合に関する情報収集の必要性が示唆された。マッピング案の作成については、食品成分表の収載食品とMRL設定のために策定した食品分類との対応関係を明確化した。
きのこ類36品、野菜類333品、調味料及び香辛料類21品、種実類41品、油脂類19品、穀類72品、いも及びでんぷん類41品、砂糖及び甘味類5品、豆類61品に対して食品変換係数を算出した。また、きのこ類13品、野菜類34品、調味料及び香辛料類7品、種実類2品、油脂類7品、穀類89品、いも及びでんぷん類21品、砂糖及び甘味類26品、豆類32品に対して配合割合を算出した。
その結果、現行の暴露評価において、「その他の野菜」のように複数の大分類に跨る可能性のある食品については、「暴露評価に用いる食品」を、分担課題1で分類した食品にどのように割り当てるべきか検討する必要があると考えられた。
分担課題4: 加工食品からの農薬残留物暴露量推定に積極的な報告もある欧州においても、規制における基本的な枠組みにおいては、上記、Codex委員会によるMRLの定義に含まれる要素が科学的評価の前提とされていることが明らかとなった。
結論
本研究の成果は、MRL設定時等に行われる暴露量推定において、より正確なRAC消費量の算出を可能にする基盤となると考えられた。特に、今後の暴露量推定における課題として、派生品や複合食品が多い食品群における歩留まりや配合割合に関する情報収集の必要性が示唆された。さらに、今回対象としたworkable packageにおいても、一部の個別食品が食品成分表に未収載である点や、両食品分類システムにおける差異の存在も明らかになった。農薬残留物のより正確な暴露量推定を行う上で、これらの課題の考慮が必要だと考えられた。また、本成果は、加工食品から生鮮農産品への変換を行うための信頼性の高い基礎データであり、菓子類などの別の食品群への応用に向けた重要なステップとなると考えられた。
国際整合性の観点から、EUにおけるる加工食品からの農薬残留物の暴露評価に対する考え方について調査・整理したところ、EUには加工食品を対象にMRLを設定する法的根拠はないことが明確となった。一方で、加工食品が検査対象となる場合のMRL適合性の判断、また加工食品由来の短期食事性暴露量推定において、加工係数が利用されていることが明らかとなった。加工係数が設定されている加工食品の類型数は121であったが、大豆の絞りかすといった飼料用途となる品目を多く含む。このことからも、加工食品を対象とした検査並びにIESTIの算出は限定的であると考える。また、Codex委員会によるMRLの定義にも述べられている通り、生鮮農産品のMRLへの適合を評価し流通管理することにより、それを原材料として生産された加工食品の消費を介した健康危害リスクは、適切に管理されるものと考える。

公開日・更新日

公開日
2025-10-02
更新日
-

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公開日・更新日

公開日
2025-10-02
更新日
-

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文献番号
202428013Z