文献情報
文献番号
202428012A
報告書区分
総括
研究課題名
既存添加物の品質確保に資する分析法開発のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23KA1012
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
杉本 直樹(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
研究分担者(所属機関)
- 阿部 裕(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
- 増本 直子(国立医薬品食品衛生研究所 生薬部)
- 井之上 浩一(立命館大学 薬学部)
- 永津 明人(金城学院大学 薬学部)
- 辻 厳一郎(国立医薬品食品衛生研究所 有機化学部)
- 渡辺 麻衣子(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
- 天倉 吉章(松山大学 薬学部)
- 大槻 崇(日本大学 生物資源科学部)
- 西崎 雄三(東洋大学 食環境科学部)
研究区分
食品衛生基準科学研究費補助金 分野なし 食品安全科学研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
9,768,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
既存添加物357品目の内,第9版食品添加物公定書が告示されたときに成分規格がなかったものは143品目(枝番を含まない場合の品目数) (枝番を含めた場合は151品目)であった.令和6年(2024年)2月に第10版食品添加物公定書が公示され,既存添加物44品目の成分規格が新たに収載された.よって,現時点では,残り99品目の成分規格の設定が急務となっている.しかし,1.流通が確認できない,2.製品実態が曖昧,3.成分組成が不明なものが残されている.1については引き続き調査が,2, 3については,成分分析及び試験法設定が必要とされている.しかし,現在の科学技術では分析不可能である場合も多く,分析法の開発も必要がある.更に,既存添加物には,公的な成分規格が設定されているが,古い分析法が用いられていたり国外の試験法と異なるものが設定されていたりするものもある.従って,国際的に通用する試験法への更新が,輸出入の障害を解消するため必要とされている.特に,流通量が多い,使用頻度が高い,あるいは利用価値が高い既存添加物については,最新技術の導入等により信頼性の高い成分規格への改正が望まれている.本研究では,上述の要求に応えるため,1) 既存添加物の成分規格に関する研究,2) 既存添加物の成分組成に関する研究,3) 分析法及び試験法の開発に関する研究を行う.
研究方法
1) 既存添加物の成分規格に関する研究
既存添加物について,1. 成分規格(自主規格(公定書収載案を含む)及び自社規格等),2. 流通・使用実態,3. 安全性評価状況,の情報を調査し,次改正の食品添加物公定書への成分規格収載のための基礎情報をまとめる.
2) 既存添加物の成分組成に関する研究
既存添加物の成分規格の試験法設定のため,有効成分や指標成分を同定及び分析法を検討する.成分規格が未設定の品目の他,古い分析法が成分規格の試験法が設定されている品目若しくは試験法の根拠が不確かな品目等,規格試験法の改修が必要である品目を対象とする.
3) 分析法及び試験法の開発に関する研究
分析法及び試験法を開発・実用化する.定量用標品の入手・供給が不可能である品目については,代替標品あるいは校正用標品の全合成ルートを検討する.相対モル感度(RMS)を利用した簡便且つ高精度な分析法を標準化する.また,基原生物の同定精度の向上等のため,生物学的又は分子生物学的手法を開発する.
既存添加物について,1. 成分規格(自主規格(公定書収載案を含む)及び自社規格等),2. 流通・使用実態,3. 安全性評価状況,の情報を調査し,次改正の食品添加物公定書への成分規格収載のための基礎情報をまとめる.
2) 既存添加物の成分組成に関する研究
既存添加物の成分規格の試験法設定のため,有効成分や指標成分を同定及び分析法を検討する.成分規格が未設定の品目の他,古い分析法が成分規格の試験法が設定されている品目若しくは試験法の根拠が不確かな品目等,規格試験法の改修が必要である品目を対象とする.
3) 分析法及び試験法の開発に関する研究
分析法及び試験法を開発・実用化する.定量用標品の入手・供給が不可能である品目については,代替標品あるいは校正用標品の全合成ルートを検討する.相対モル感度(RMS)を利用した簡便且つ高精度な分析法を標準化する.また,基原生物の同定精度の向上等のため,生物学的又は分子生物学的手法を開発する.
結果と考察
1) 既存添加物の成分規格に関する研究
既存添加物の流通・使用実態及び成分規格について調査した.流通・使用実態については,既存添加物357品目(成分規格数として402)の生産量流通調査3回で報告がなく流通情報が得られなかった成分規格数は102品目,使用状況が確認できなかった成分規格数は160品目であった.
2) 既存添加物の成分組成に関する研究
カロブ色素,スピルリナ色素,香辛料抽出物について検討した.カロブ色素については,昨年度に引き続き色素成分の同定を行った結果,酵素加水分解することによって,主成分のschaftosideに収束させることができた.スピルリナ色素については,酵素消化によりフィコシアノビリンの前駆物質であるジヒドロビルベルジンと考えられる物質が生成され,確認試験の指標となると考えられた.香辛料抽出物については,1H-qNMRにより,主成分を直接定量することが可能であった.
3) 分析法及び試験法の開発に関する研究
RMSを利用した定量法とその校正物質の開発,元素分析法を利用した窒素定量法の優位性,真菌基原の酵素の分析法について検討した.その結果,アントシアニンについては,1H-qNMRによる定量条件(測定条件及び溶媒条件)を確立した.メナキノン等については,RMS法が有効であることを明らかとした.アントラキノンについては,JECFA法を参考にRMSを利用した方法に改良可能であることがわかった.また,RMS法に必要な校正物質の候補を合成した結果,校正物質として適したものを開発可能と考えられた.窒素定量法については,ケルダール法等と元素分析法を比較したところ,元素分析法が試験者や環境への負荷低減のため有効であることがわかった.酵素については,二次元電気泳動とPMF法を組合せ,同定結果の正確性を向上した.
既存添加物の流通・使用実態及び成分規格について調査した.流通・使用実態については,既存添加物357品目(成分規格数として402)の生産量流通調査3回で報告がなく流通情報が得られなかった成分規格数は102品目,使用状況が確認できなかった成分規格数は160品目であった.
2) 既存添加物の成分組成に関する研究
カロブ色素,スピルリナ色素,香辛料抽出物について検討した.カロブ色素については,昨年度に引き続き色素成分の同定を行った結果,酵素加水分解することによって,主成分のschaftosideに収束させることができた.スピルリナ色素については,酵素消化によりフィコシアノビリンの前駆物質であるジヒドロビルベルジンと考えられる物質が生成され,確認試験の指標となると考えられた.香辛料抽出物については,1H-qNMRにより,主成分を直接定量することが可能であった.
3) 分析法及び試験法の開発に関する研究
RMSを利用した定量法とその校正物質の開発,元素分析法を利用した窒素定量法の優位性,真菌基原の酵素の分析法について検討した.その結果,アントシアニンについては,1H-qNMRによる定量条件(測定条件及び溶媒条件)を確立した.メナキノン等については,RMS法が有効であることを明らかとした.アントラキノンについては,JECFA法を参考にRMSを利用した方法に改良可能であることがわかった.また,RMS法に必要な校正物質の候補を合成した結果,校正物質として適したものを開発可能と考えられた.窒素定量法については,ケルダール法等と元素分析法を比較したところ,元素分析法が試験者や環境への負荷低減のため有効であることがわかった.酵素については,二次元電気泳動とPMF法を組合せ,同定結果の正確性を向上した.
結論
既存添加物に関する研究成果は,食品添加物公定書の公的な成分規格の設定の根拠情報として利用されている.本研究では上述の1)〜3)を検討し,得られた情報は第11版食品添加物公定書作成検討会等において基礎データとして活用される.令和7年度も検討品目を増やし本研究を継続する.公定法の規格試験法に開発した分析法を導入するだけでなく,JAS, ISO等においても標準化を具体的に進めており,国内外,別分野のレギュラトリーサイエンスの発展にも貢献している.
公開日・更新日
公開日
2025-10-07
更新日
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