皮膚貫通型医療機器およびストーマを有する患者のQOL向上を目的としたスキンボタンシステムの開発・実用化研究

文献情報

文献番号
201011020A
報告書区分
総括
研究課題名
皮膚貫通型医療機器およびストーマを有する患者のQOL向上を目的としたスキンボタンシステムの開発・実用化研究
課題番号
H20-活動・一般-005
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
巽 英介(独立行政法人国立循環器病研究センター 人工臓器部)
研究分担者(所属機関)
  • 妙中義之(独立行政法人国立循環器病研究センター)
  • 武輪能明(独立行政法人国立循環器病研究センター 人工臓器部 )
  • 水野敏秀(独立行政法人国立循環器病研究センター 人工臓器部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(低侵襲・非侵襲医療機器(ナノテクノロジー)研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
39,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究の目的は、長期間留置される皮膚貫通型医療機器やストーマの創部治療を緩和・不要化するスキンボタンを開発することである。留置カテーテルや補助人工心臓(VAD)の駆動ラインなどでは皮膚貫通部の炎症や感染が、またストーマでは炎症・感染や陥入・狭窄などが問題となり、患者のQOLや予後を大きく左右している。本研究ではこれら患者の創部管理を緩和・不要化し、患者QOLの大幅な向上と在宅医療の推進を目指す。
研究方法
 最終年度は、現在開発中の電気駆動軸流型の体内埋込式VADのドライブライン皮膚貫通部に設置するスキンボタンに焦点を絞り、プロトタイプ試作を繰り返しつつ慢性動物実験での長期評価・改良を進めた。また、製品化スキームの構築に関しては、品質保証と量産化を考慮したミニプラントの整備を推進すると共に、企業間の連携の元で開発企業から製造販売企業への技術移転を進めた。
結果と考察
1)体内埋込式VADのドライブライン用スキンボタンの設計・試作・改良
 治癒性・保護性・柔軟性を併せ持つ構造・力学物性を考慮し、体内埋込式VADのドライブライン用スキンボタンを設計した。ライン貫通部分と接して外力を分散する均質材のディスクと組織との癒着の役割をなす多孔体フランジ部分を一体化させた基本構造を有し、ドライブラインが皮膚面に対して斜めに貫くようなデザインとし、プロトタイプの試作・改良を重ねた。
2)体内埋込式VADのドライブライン用スキンボタンの慢性動物実験評価
 試作スキンボタンを実際の体内埋込み型VADシステムに組込み、長期慢性動物試験で3ヶ月間の創部管理不施行下での維持に成功した。安定期にはスキンボタンと皮膚の一体化とも言える強固な癒着形成により、皮膚損傷等も一切観察されなかった。また、皮膚のダウングロースは完全に防止され、微小孔内部への良好な組織浸潤と血管増生像が確認された。
3)電子制御量産システムの開発と改良
 スキンボタンに使用されるセグメント化ポリウレタン多孔体(SPU)のGMP準拠レベルの製造精度の向上・安定化を目的として、SPU多孔体の製造過程における工程を見直して電子制御量産システムの開発を行った。その結果、製品精度を向上させるとともに、安定した製品を作成することが可能となった。
結論
 優れた抗感染性・耐久性を有するスキンボタンシステムの開発に成功し、具体的適用を考慮した各種ボタンの試作を進展させた。現在、企業間技術移転も含めたロードマップに従って製品化行程を進めており、2~3年以内の実用化達成を目指している。

公開日・更新日

公開日
2011-09-12
更新日
-

文献情報

文献番号
201011020B
報告書区分
総合
研究課題名
皮膚貫通型医療機器およびストーマを有する患者のQOL向上を目的としたスキンボタンシステムの開発・実用化研究
課題番号
H20-活動・一般-005
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
巽 英介(独立行政法人国立循環器病研究センター 人工臓器部)
研究分担者(所属機関)
  • 妙中義之(独立行政法人国立循環器病研究センター 人工臓器部 )
  • 妙中義之(独立行政法人国立循環器病研究センター 研究所 )
  • 武輪能明(独立行政法人国立循環器病研究センター 人工臓器部 )
  • 水野敏秀(独立行政法人国立循環器病研究センター 人工臓器部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(低侵襲・非侵襲医療機器(ナノテクノロジー)研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、長期間留置される皮膚貫通型医療機器やストーマの創部治療を緩和・不要化するスキンボタンを開発することである。留置カテーテルや補助人工心臓(VAD)の駆動ラインなどでは皮膚貫通部の炎症や感染が、またストーマでは炎症・感染や陥入・狭窄などが問題となり、患者のQOLや予後を大きく左右している。本研究ではこれら患者の創部管理を緩和・不要化し、患者QOLの大幅な向上と在宅医療の推進を目指す。
研究方法
1)臨床ニーズと問題点を明らかにし、具体的開発方針を決定する。2)試作スキンボタンは、慢性動物実験にて長期信頼性・有効性・安全性を評価する。 3)セグメント化ポリウレタン多孔体(SPU)の組織適合性・病理学的評価に基づき、ミクロ構造の最適化を行う。4)臨床的ニーズと工学的観点に基づいたマクロデザイン設計を進める。5)SPU多孔体素材のミクロ構造の制御技術を検討するとともに、工学面からの基礎的製造技術を確立をする。6)各種スキンボタンの試作を行い、またそれらの製造技術を確立する。7)臨床ニーズ調査・市場調査を進め具体的な製品化スキームを確立するとともに、製品製造のためのプラント整備を進める。
結果と考察
1)臨床ニーズ調査・臨床面からの製品デザインとして、慢性腹膜透析チューブおよび補助人工心臓送脱血管/駆動ラインを具体例としてとりあげ、これらの臨床実態、合併症やQOL上の問題点について調査した。2)SPU素材のミクロ構造の制御技術を確立するとともに、機械的強度や伸縮性なども含め基礎的製造技術を確立した。3)各種SPU多孔体の動物実験を行い、組織適合性・病理学的評価最適化に基づいて孔径・空孔率等ミクロ構造の最適化を行った。4)慢性腹膜透析用スキンボタンを設計/試作し、2ヶ月間の実使用状態での長期動物試験で創部管理不施行下での維持に成功した。5)体内埋込式VADのドライブライン用スキンボタンを設計/試作し、実際の体内埋込み型VADシステムに組込み長期慢性動物試験で3ヶ月間の創部管理不施行下での維持に成功した。6)スキンボタンのGMP準拠レベルの製造精度の向上・安定化を目的として、SPU多孔体の電子制御量産システムの開発を行った結果、安定した製品を作成するが可能となった。
結論
 優れた抗感染性・耐久性を有するスキンボタンシステムの開発に成功し、具体的適用を考慮した各種ボタンの試作を進展させた。現在、企業間技術移転も含めたロードマップに従って製品化行程を進めており、2~3年以内の実用化達成を目指している。

公開日・更新日

公開日
2011-09-12
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201011020C

成果

専門的・学術的観点からの成果
国内外に皮膚貫通装置の研究開発の報告は僅かにみられるが、何れも我々の開発実績には遠く及ばない。本研究で開発するスキンボタンは前例のない極めて先進的なもので、開発が成功すれば市場を独占し得る可能性もあり、製品輸出・世界展開を通じて本邦発の革新的医療機器創出の成功例となり得るものである。これまでに、皮膚貫通型医療機器で消毒・ドレーピング等を行う必要のないものは存在せず、それを可能とする本スキンボタンは学術的観点からも高い革新性を有する。
臨床的観点からの成果
本邦で100万人存在する長期留置皮膚貫通型医療機器およびストーマ造設患者の創部治療の不要化で、①自己管理の緩和やストーマ漏れ防止による患者QOLの大幅な向上、②通入院の頻度低減による在宅医療の推進と医療費の大幅削減、等が期待できる。とくに、本研究で具体的に開発した次世代型人工心臓システムの駆動ライン出口部用スキンボタンは、その長期使用において予後を大きき左右する感染症の合併を大幅に低減できるものと考えられ、容易な入れ替えが不可能な埋込み型デバイス使用患者の成績を大きく向上させることが期待できる。
ガイドライン等の開発
とくになし。
その他行政的観点からの成果
本研究は厚労省「医療機器産業ビジョン」の目的に叶い、厚労省科学技術政策の「先端科学技術の開発と応用:ナノテクノロジーや情報通信技術等の先進技術を活用した融合領域」の「患者や障害者のニーズに基づく生活支援・社会参加を促進する機器の開発」に合致する。また「革新的医療機器創出のための推進5か年計画」の趣旨にも沿い、スーパー特区「先端的循環器系治療機器の開発と臨床応用、製品化に関する横断的・統合的研究」の研究開発対象にも含まれる。独創的な治療系機器として、今後の医療産業活性化戦略への貢献も期待できる。
その他のインパクト
国内企業4社(人工心臓関係3社と透析関係1社)および海外企業2社(医療機器関係1社と医療用測定機器関係1社)から本研究成果のスキンボタンに関する問い合わせや共同研究の提案があった。本開発物は様々な皮膚貫通型医療機器に横断的に使用できるが、それ故単体としての薬事承認に前例となるものがなく、製品化への準備そのものが新規の行程となる。現在、早期探索的臨床開発拠点整備事業のシーズとして取り上げられ、革新的医薬品・医療機器・再生医療製品実用化促進事業を通じてPMDAとその行程についての協議を進めている。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
3件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
17件
学会発表(国際学会等)
6件
その他成果(特許の出願)
35件
「出願」「取得」計35件
その他成果(特許の取得)
3件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Aoyama M, Mizuno T, Tatsumi E, et al.
An animal study of a newly developed skin-penetrating pad and covering material for the catheter to prevent exit-site infection in continuous ambulatory peritoneal dialysis
Artif Organs , 33 , 1127-1135  (2009)
原著論文2
Mizuno T, Nemoto Y, Tsukiya T, et al.
Development and in vivo long-term testing of a novel skin button system for preventing driveline infection of an implantable VAD system
J Artif Organs (in press) , 14  (2011)

公開日・更新日

公開日
2015-05-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
201011020Z