文献情報
文献番号
202428005A
報告書区分
総括
研究課題名
食品添加物の試験法の検討及び摂取量に基づく安全性確保に向けた研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22KA1007
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
多田 敦子(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
研究分担者(所属機関)
- 久保田 浩樹(国立医薬品食品衛生研究所食品添加物部)
- 建部 千絵(佐々木 千絵)(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
- 西崎 雄三(東洋大学 食環境科学部)
- 大槻 崇(日本大学 生物資源科学部)
研究区分
食品衛生基準科学研究費補助金 分野なし 食品安全科学研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
9,254,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
食品添加物の安全性確保には、適正な使用が重要であるため、1)生産量統計調査を基にした食品添加物摂取量の推定に関わる研究、2)香料(香料化合物及び天然香料物質)の使用量調査研究、3)香料化合物のSingle Portion Exposure Technique(SPET)法による摂取量推定研究、4)マーケットバスケット(MB)方式による香料の摂取量調査の検討を行った。また、食品添加物公定書(公定書)の規格試験法(一般試験法及び各条規格試験法)の改良のため、5)誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法(ICP-OES)を用いた規格試験法に関する研究、6)食品添加物の規格試験法の改良に関する調査研究並びに7)卓上NMRを用いた規格試験の開発に関する研究を行った。
研究方法
1)第14回指定添加物生産量調査(令和4年度対象)の追調査を実施し、既存添加物生産量第9回調査(令和5年度対象)のアンケート調査を実施した。2)グローバル調査と同時に実施した香料使用量調査(令和2年対象)について、他国の結果との食品用香料化合物使用量の比較を行った。3)SPET法による摂取量推定研究では、前年度の検討を踏まえて一部方法を改訂し、前年度と異なる計10品目の香料化合物について調査を実施した。4)チオエーテル系香料を対象にガスクロマトグラフィー質量分析(GC/MS)によりMB試料を分析し、摂取量を求めた。5)無機塩4品目について、ICP-OESを用いた鉛及びヒ素の定量分析を、絶対検量線法、内標準法、標準添加法(ヒ素のみ対象)により行った。6)前年度の結果を踏まえ、アスパルテームの規格試験について、定量NMR法(qNMR)に基づく相対モル感度係数(RMS)を用いた新規HPLC分析法の確立に関する検討を実施した。7)卓上NMRの規格試験法導入に向け、ピーク高さ(PH)法及びピークフィッティング(PF)法での解析について検討した。
結果と考察
1)指定添加物の生産量調査では前年度調査と今年度追調査の合計で89.0%の回収率、既存添加物の生産量調査では今年度調査で76.8%の回収率を挙げ、摂取量推計に資するデータが得られた。2)グローバル使用量調査リスト中の食品用香料化合物の使用量を比較した結果、推定摂取量が100 μg/人/日を超える香料化合物の占有率が日本では海外より低かった。3)前年度と異なる香料化合物10品目を選定し、調査方法を一部改訂してSPET法による摂取量推定を実施し、他の推定法での値と比較した。4)MB試料中のチオエーテル系香料を分析し、20歳以上の人の喫食量データに基づき一日摂取量の推計を行った。Maximized Survey-Derived Intake(MSDI)法による推定法に比べて低い値であった。5)キレート固相カートリッジによる前処理とICP-OES分析を適用した結果、絶対検量線法と標準添加法では、殆どの品目で良好な回収率を示した。内標準法では課題が認められた。6)アスパルテームに対する不純物2種の各RMSを明らかにし、アスパルテームを含めた計3種の測定対象の新たな定量法に応用し、良好な結果が得られた。7)卓上NMR に関する研究では、ジフェノコナゾールを用い、卓上NMRにおけるPH法、PF法による異性体比を算出したところ、精度は± 10%以内であった。ただし、半値幅の扱いにより誤差が大きくなる場合も認められた。
結論
生産量統計調査を基にした食品添加物摂取量の推定に関わる研究、香料(香料化合物及び天然香料物質)の使用量調査研究、香料化合物のSPET法による摂取量推定研究、MB方式による香料の摂取量調査の検討により、食品添加物の適正な使用に関わる知見が得られ、これらの結果は食品の安全の確保に資すると考えられる。食品添加物公定書の規格試験法(一般試験法及び各条規格試験法)の改良に向けた研究のうち、ICPを用いた規格試験法に関する研究では、キレート固相カートリッジによる前処理後、鉛及びヒ素をICP-OESで分析し、対象物質の殆どで、絶対検量線法、標準添加法により良好な結果が得られることが判明した。食品添加物の規格試験法の改良に関する調査研究では、アスパルテームの規格試験について、qNMRに基づくRMSを用いた新規HPLC分析法を確立した。また、卓上NMRを用いた規格試験の開発に関する研究では、PH法及びPF法がピークの分離分析に有効な解析手法であることが示唆され、半値幅の取り扱い等に留意する必要があることが判明した。以上、食品添加物の生産量や香料の使用量調査、各種摂取量推計法での検討、国際的な試験法や新たな試験法導入のための研究により、食品添加物の安全性確保のための基礎資料となる有益な結果が得られた。
公開日・更新日
公開日
2025-10-02
更新日
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