抗体プロテオミクス技術を駆使した悪性中皮腫関連バイオマーカーの探索と創薬への展開

文献情報

文献番号
201009022A
報告書区分
総括
研究課題名
抗体プロテオミクス技術を駆使した悪性中皮腫関連バイオマーカーの探索と創薬への展開
課題番号
H22-政策創薬・一般-009
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
長野 一也(独立行政法人 医薬基盤研究所 創薬基盤研究部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬総合研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
2,693,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
悪性中皮腫は、1970年頃に頻用されたアスベストの曝露を主要因とする疾患で、5年生存率は4%と予後不良である。また本疾患は、曝露から約40年遅れて発症するため、現在患者数は急増している。本観点から、悪性中皮腫に対する有用な診断・治療法の開発は緊急課題であるが、これまで有用なマーカーはみつかっていない。そこで本研究では、創薬マーカーを迅速に探索可能な抗体プロテオミクス技術により、悪性中皮腫関連マーカーを探索し、分子病態の解明や有用な診断・治療法の確立に資する知見の収集を目的とする。
研究方法
●2D-DIGE解析;悪性中皮腫細胞H28と正常中皮細胞HMCから調製した蛋白質を蛍光試薬Cy2,3,5で標識した。これらを混合後、等電点と分子量を指標に展開し、蛍光強度から各蛋白質を定量・比較した。
●発現変動蛋白質の同定;上記蛋白質をゲルからピックし、トリプシンでゲル内消化した。抽出ペプチドをnano-LCで分離し、ESI-Q-TOF MSにて配列決定した。
●抗体の作製;ゲルを溶解して調製した抗原をニトロセルロース膜に固相した。ファージ抗体ライブラリを添加し、抗原結合クローンを回収する操作を4回繰り返して目的抗体を濃縮した。モノクローン化後、ELISAでスクリーニングした。
●シスプラチン(CDDP)感受性試験;悪性中皮腫細胞(H28、H2052、H2452、H226、MSTO221H)に種々濃度のCDDPを添加し、24時間後の傷害性をWST8法で評価した。
結果と考察
2D-DIGE解析により、HMCに比べH28で1.5倍以上発現変動していた15スポットを見出した。そこでこれらを質量分析したところ、全てを同定し、14種類の悪性中皮腫特異的な候補蛋白質を見出した。次に、これらのバリデーションのため、このうち3種類の蛋白質に対してまず抗体の作製を試みた。その結果、全てに対して、複数の抗体を単離することができた。更に、治療薬として汎用されているCDDPに対する感受性マーカーも探索するため、そのソースとする細胞の選択を試みた。各細胞にCDDPを添加して傷害性を比較した結果、H28が最も感受性が低く、H2052が最も高いことを明らかとした。
結論
悪性中皮腫特異的マーカー候補として14種類の蛋白質を同定し、バリデーションのための抗体を作製した。更に、CDDP感受性マーカーを探索するためのソースになる2細胞を決定した。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

収支報告書

文献番号
201009022Z