非ヒト霊長類の動物実験代替法等の薬事上の取り扱いに関する研究

文献情報

文献番号
202424034A
報告書区分
総括
研究課題名
非ヒト霊長類の動物実験代替法等の薬事上の取り扱いに関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23KC2013
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
小川 久美子(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 病理部)
研究分担者(所属機関)
  • 平林 容子(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター)
  • 花木 賢一(国立健康危機管理研究機構国立感染症研究所 安全管理研究センター)
  • 松下 幸平(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
6,060,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
カニクイザル、アカゲザル等の非ヒト霊長類(NHP:non-human primates)は、医薬品開発における有効性、安全性等の評価において重要な役割を果たしている。特にNHPを用いた安全性試験は、抗体医薬品など近年開発が目覚ましい個別化医療の開発に必須とされている。国内で必要なNHPの多くは海外からの輸入に依存しているが、COVID-19のパンデミック以降、ワクチン等の開発におけるNHPの需要が急増するとともに、これまで主要な輸出国であった中国が輸出を停止したこと等により、現在、世界的にNHPの供給不足と価格高騰が生じている。本件は一過性の事象ではなく、パンデミック後も、バイオ医薬品の世界的な開発ペースの加速化に伴い、NHPの需要は引き続き高止まりすると予測される。このまま現状の供給不足が続いた場合、我が国での医薬品の開発・承認にも支障が生じるため、喫緊の対応が必要である。本課題では、国内におけるNHPの使用実態や代替法等に関する調査・研究をもとに、対応の提案を目的としている。
研究方法
コモンマーモセットは国内で実験動物として繁殖されているNHPであり、医薬品開発における非臨床試験に適用することができれば、これらの問題を解決する一助となることが期待される。本研究では免疫毒性試験であるT細胞依存性抗体産生試験(TDAR)へのコモンマーモセットの適用性について検討した。具体的には、コモンマーモセット(雄、22-24ヵ月齢)に免疫原であるkeyhole limpet hemocyanin(KLH)を2及び10 mg/kgの用量でアジュバンドであるAlumと共に試験開始時から2週間毎に計4回皮下投与し、投与前及び試験期間中に経時的に採取した血液から血漿を分離してELISA法により抗KLH抗体価を測定した。
また、非ヒト霊長類(NHP)の需給問題と代替法の動向を把握するため、国内外の関連学術集会や国際機関から情報収集を行った。
一方、感染症法で規定された一類感染症の内、クリミア・コンゴ出血熱、エボラウイルス病、マールブルグウイルス病、ラッサ熱は治療薬やワクチンの開発が渇望されている。それら動物モデルのゴールドスタンダートは非ヒト霊長類であるが、それに代わる動物モデルについて文献調査を行った。
結果と考察
2及び10 mg/kg投与群ともに2回の投与後から明らかな抗KLH抗体価の上昇が認められた。また本年度の解析に用いたELISA法により、昨年度に実施した動物実験より得られた血漿サンプルにおける抗KLH抗体価を測定した。その結果、KLH単独投与群(2 mg/kg、2回投与、アジュバンドなし)においても抗KLH-IgG抗体価の明らかな上昇が認められ、KLH及び免疫抑制剤であるシクロスポリン(25 mg/kg、28日間皮下投与)の併用投与群では抗KLH-IgG抗体価の上昇は確認されなかった。
日本実験動物学会やレギュラトリーサイエンス学会等において、New Approach Methods (NAMs) に関する発表・議論を通じ、オルガノイドや微小生体模倣システム (MPS) の活用とその適格性評価の重要性が明らかとなった。
一類感染症の動物モデルについて文献調査では、「ウイルス野生株+免疫不全マウス」と「マウス馴化ウイルス株+野生型マウス」の組み合わせが確認された。しかし、BSL4実験室で取り扱うにはマウス個体は小さい、ウイルスの馴化が必要等の難点がある。マカク属サルとマウスの間の大きさに位置するフェレットは、エボラウイルス病の優れた動物モデルであるが、他の一類感染症の原因ウイルスでは発症しない。そのため、ゲノム編集技術によりそれらウイルスに感受性を賦与する遺伝子改変フェレットの作出は、新たな動物モデルの樹立に寄与すると考えられた。
結論
コモンマーモセットにKLHを投与した結果、アジュバンドの有無に関わらず抗KLH抗体の産生が認められ、その産生は免疫抑制剤の投与により抑制された。本結果はコモンマーモセットのTDARへの適用の可能性を示すものと考えられた。
また、米国FDAが動物実験削減に向けたロードマップを発表し、今後の実験動物を使わない評価手法への転換に関する具体的な方向性が示された。これらの動向を踏まえ、我が国においても、NHPの適正な使用とともに、代替法の研究促進と実用化を強化することが期待された。

公開日・更新日

公開日
2025-06-13
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-06-13
更新日
-

収支報告書

文献番号
202424034Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,060,000円
(2)補助金確定額
6,060,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,846,192円
人件費・謝金 0円
旅費 60,546円
その他 3,153,845円
間接経費 0円
合計 6,060,583円

備考

備考
その他経費などに差額が出ましたが、自己資金で充填させていただきました。

公開日・更新日

公開日
2025-06-13
更新日
-