大麻をはじめとする薬物の効果的な予防啓発活動の実施及び効果検証に向けた調査研究

文献情報

文献番号
202424026A
報告書区分
総括
研究課題名
大麻をはじめとする薬物の効果的な予防啓発活動の実施及び効果検証に向けた調査研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23KC2005
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 勉(湘南医療大学 薬学部)
研究分担者(所属機関)
  • 河井 孝仁(東海大学 文化社会学部広報メディア学科)
  • 関野 祐子(東京大学大学院薬学系研究科ヒト細胞創薬学寄付講座)
  • 花尻 瑠理(木倉 瑠理)(国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部)
  • 舩田 正彦(湘南医療大学 薬学部)
  • 森 友久(星薬科大学 薬品毒性学教室)
  • 山本 経之(長崎国際大学 薬学部 薬理学研究室)
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
7,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本においては、薬物事犯全体の検挙人員は近年横ばいで推移しているが、大麻事犯については検挙者数が2014年以降増加傾向にあり、2023年には覚醒剤事犯検挙者数を上回るなど、日本は「大麻乱用期」といえる状況にある。その中で特に30歳未満の検挙者は大麻事犯全体の約7割を占めており、若年層における大麻乱用が拡大している。その要因は、「大麻は安全」などの誤った情報がインターネット上に蔓延り、斯様な情報が容易に得られるため、それにより若者の大麻等の乱用へつながるものと考えられ、現状では日本での薬物乱用が一層進むことが危惧されている。このような状況に対応するため、先行研究では若年者を対象に、より効果的な予防啓発の実施等に関する研究が行われ、効果的な予防啓発に向けた考え方を整理したところであるが、本研究においてはその整理された考え方に基づき、大麻由来成分の医療での有用性等を含めた国内外の大麻に関する様々な規制・研究の調査を行い、それを踏まえた若年層を対象とする予防啓発資料の作成、効果検証のツール及び手法の検討を行い、若者による大麻等使用の抑制に貢献することを目的としている。
研究方法
研究分担者は、若者に向けた効果的な啓発活動を行うために
① 広報戦略の策定
② 啓発が効果的となるためのエビデンスの収集
③ 大麻の代替品として流通する大麻関連製品の流通の実態の把握と各国の取り扱い
状況
④ 大麻に関する海外での規制状況と社会問題:米国及び加国の現状
⑤ 薬物乱用防止を正しく理解するうえでの専門用語の理解
⑥ 大麻使用障害とそれに関わる諸問題
の6項目について、それぞれが担当分野を決めて研究し、研究最終年にその結果を一つにまとめた予防啓発資料を作成予定である。
結果と考察
令和6年度の研究において、
① については、
自治体でのヒアリング、学会等での意見交換、アンケート調査などにより、広報のガイドブック作成に繋がる重点事項の詳細について明確にした。
② については、
大麻成分であるカンナビノイドが脳の神経回路にどのような有害な影響を及ぼすか、その科学的根拠をとりまとめ、併せて画像データを得ることができた。
③ については、
代表的な35件の論文を精査したほか、日本国内での流通実態調査などを行い、それらがなぜ危険であるかの科学的根拠をまとめた。
④ については、
米国において大麻の規制状況が州ごとで統一されていないことなど規制上の問題点が明らかとなり、また大麻又は大麻含有の食品の摂取により健康被害が増加していること等が明らかとなった。
⑤ では、
医薬品とドラッグの言葉の使い分けや、医薬品であっても、その使い方により概念存が異なること等についてまとめた。
⑥ では、
大麻の主要成分であるTHCが精神疾患や認知症機能障害の発症リスクが懸念されることや、妊娠中の女性がTHCを摂取した場合の胎児に与える影響等を明らかにした。さらに小児てんかん治療薬として承認されたCBDの問題点を明らかにした。
結論
① については、
大麻の危険性や違法性を的確に伝えるとともに、生きづらい等の状況にあっても大麻等の嗜好的利用に進ませるのではなく、相談を促すことで一定の成果が出るものと期待できる。
② については、
カンナビノイドの神経に及ぼす有害な影響について科学的エビデンス、画像データ等をもとに視覚的に訴える資料を作成することで、リスク意識は高まるものと思われる。
③ については、
大麻由来成分関連化合物は、様々な形態で販売されているが、誤飲により健康被害を生じる可能性があるほか、合成時の副生物や、加熱時の副生物に毒性が報告されているものもあれば、体内で、もとの化合物よりも強い作用を有する代謝物が生成する可能性もある。このため特に青少年の“大麻関連製品”に対する精神的なハードルが低くならないように、このような大麻関連化合物含有製品について、どういうものが流通し、なぜそれが危険なのかを、正しく、わかりやすく伝えていくことが重要である。
④ については、
大麻使用を認めている米国、カナダなどの地域での規制手法およびその問題点が明らかとなっており、今後も大麻合法化の影響を経年的に調査することで、我が国の啓発事業に活用可能な資料となることが期待できる。
⑤ では、
薬物乱用を正しく理解するための薬物情報あるいは専門用語は難解であるが、それらを分かり安くすることで、乱用についての予防啓発の一助となる。
⑥ では、
世界的な大麻の規制緩和に伴う大麻使用障害および健康被害に関する諸外国の報告を継続的に調査し、新たな問題点を迅速に対応することが必要である。さらに得られた新知見はその情報共有とともに、我が国における大麻の新しい乱用防止教育の策定のみならず、行政及び法制度における発展的な方策の決定にも重要な指針を与えるものと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2025-06-12
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-06-12
更新日
-

収支報告書

文献番号
202424026Z