大動脈瘤治療薬開発を目指した基礎的・臨床的基盤研究

文献情報

文献番号
201008017A
報告書区分
総括
研究課題名
大動脈瘤治療薬開発を目指した基礎的・臨床的基盤研究
課題番号
H22-創薬総合・一般-001
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 公雄(東北大学大学院 医学系研究科 循環器内科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 下川 宏明(東北大学大学院 医学系研究科 循環器内科学分野)
  • 福本 義弘(東北大学病院)
  • 高橋 潤(東北大学病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(創薬総合推進研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
9,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
動脈硬化や大動脈瘤の進展には、酸化ストレスが重要因子として働いていると考えられているが、そのメカニズムは不明な点が多い。我々は最近、酸化ストレス下で血管平滑筋細胞より分泌される18kDaの炎症促進蛋白 サイクロフィリンA (CyPA)を同定し、心血管疾患促進の重要因子であることを証明した。さらに、酸化ストレスによるCyPAの分泌はRho-kinase依存性であり、両者が密接に絡み合って相加・相乗効果を生む酸化ストレス増幅系を形成することを発見した。すなわち、新規炎症蛋白CyPAとRho-kinaseとの相互作用は、「酸化ストレス増幅機構」の基盤を担い、大動脈瘤を初めとするあらゆる心血管疾患の発症機構の根幹に関わる可能性がある。本研究では、大動脈瘤の進行におけるRho-kinase/ CyPA系に焦点し、その制御・破綻機構の解明およびバイオマーカーとしての可能性を探る。
研究方法
研究方法としては、大動脈瘤手術サンプルを用いた解析に加え、血清濃度測定法(ELISA)の開発、in vivo イメージング(マウス)、PET(ヒト)による病変部位検出法の開発を行う。既に開発済みである当科独自の臓器特異的Rho-kinase遺伝子欠損マウス、臓器特異的Rho-kinase遺伝子過剰発現マウス、CyPA遺伝子欠損マウス、CyPA受容体遺伝子欠損マウス(ApoE欠損背景)を駆使した動物モデルの検討に加えて、当科が保有するヒト冠動脈硬化病変検体、心疾患ごとにライブラリー化を進めている患者血清を用いて、臨床的意義も平行して検討する。
結果と考察
大動脈瘤症例を対象とした臨床研究において、血清サイクロフィリンA濃度測定が早期発見や重症度評価に有効である可能性を示唆する結果を得た。虚血性心疾患においても有効性が期待できる。今後、現在進行中の臨床研究においてはさらなる解析を追加する。また、基礎研究を加速することにより、サイクロフィリンAに着目した画期的な新規治療法の開発を目指す。
結論
心筋梗塞や大動脈瘤の患者数が年々増加しており、その予備軍とも言えるメタボリック症候群の患者数は激増している。そうした患者を早期発見・重症度評価する方法の開発は、医療経済的にも待ち望まれている。大動脈瘤や虚血性心疾患症例を対象とした初期の評価において、有効性を示唆する結果を得ており、今後、幅広い心血管疾患への応用が期待される。安全で負担のない検査法の開発は、患者の肉体的・精神的負担の軽減や医療費の大幅な削減、我が国の活力のある社会の実現に大きく貢献することが期待される。

公開日・更新日

公開日
2011-09-21
更新日
-

収支報告書

文献番号
201008017Z