文献情報
文献番号
201008004A
報告書区分
総括
研究課題名
心筋細胞死誘導による心不全発症の新規モデルマウスの開発
課題番号
H20-生物資源・一般-001
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
赤澤 宏(大阪大学大学院医学系研究科 循環器内科学)
研究分担者(所属機関)
- 小室 一成(大阪大学大学院医学系研究科 循環器内科学)
- 塩島 一朗(大阪大学大学院医学系研究科 心血管再生医学寄附講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(創薬総合推進研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
8,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
わが国では生活習慣の欧米化や高齢化にともない心不全患者が急増しているが、心不全の予後は依然として不良であり、心不全に対する創薬のニーズは非常に高い。創薬研究には、標的分子の同定や薬効試験、安定性検定のためにモデル動物が必要である。本研究の目的は、心筋細胞死誘導による心不全発症のモデルマウスを確立し、創薬に役立てることである。
研究方法
ジフテリア毒素 (DT)受容体はヘパリン結合性EGF様増殖因子前駆体 (proHB-EGF) であるが、マウスproHB-EGFはDT受容体として機能しない。心筋特異的にヒトproHB-EGF遺伝子を発現するトランスジェニックマウスでは、DT投与によって受容体を発現する心筋細胞が細胞死を生じる。しかし、このマウスでは約17%の心筋細胞しかDT受容体を発現しておらず、量的に多様な心筋細胞死を誘導することができない。そこで、全ての心筋細胞でDT受容体の発現誘導が可能で、任意に心筋細胞死の割合を制御することで、心不全発症の経過を自在にコントロールできる新規モデルマウスの作製を計画した。
結果と考察
Chicken β-actinプロモーター/サイトメガロウイルスエンハンサーの下流に、loxP配列で挟まれたβ-galactosidase遺伝子、その下流にヒトproHB-EGF遺伝子を組み込んだトランスジーンを用いてトランスジェニックマウスの作成を試みたが、トランスジーンの発現がモザイク状で、発現比率は8.9%~18.8%であった。このマウスをとタモキシフェン投与によって心筋特異的にCre発現を誘導できるMerCreMerマウスを交配して得られたマウスを用いた解析の結果、タモキシフェン投与によるDT受容体の発現を誘導した後に、DTを筋肉内投与し、心筋細胞死誘導が可能であることが確認された。さらに、このモデルマウスでは、ランゲンドルフ灌流下に右房を電気刺激することで心房細動の誘発は困難であったが、心室性不整脈の誘発が可能であった。
結論
今回作成したモデルマウスでは、タモキシフェン投与によるDT受容体の発現を誘導した後に、DTを筋肉内投与し、心筋細胞死誘導が可能であった。また、このモデルモデルは、心房細動の誘発には適さないが、心室性不整脈の誘発に有用である可能性があり、複雑な心不全の病態生理の研究ツールとして役立つと期待される。
公開日・更新日
公開日
2011-07-27
更新日
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