文献情報
文献番号
202423029A
報告書区分
総括
研究課題名
新型コロナ感染症拡大収束後の食品等事業者の新たな営業形態にも対応した食品防御の推進のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24KA1006
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
今村 知明(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
研究分担者(所属機関)
- 岡部 信彦(川崎市健康福祉局 川崎市健康安全研究所)
- 赤羽 学(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
- 加藤 礼識(学校法人 茨城キリスト教大学 生活科学部)
- 入江 芙美(九州大学 医学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和8(2026)年度
研究費
13,810,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
新型コロナウイルス感染症の収束後、食品業界では無人店舗やゴーストキッチン等の新業態が拡大し、従来の対策では対応が困難な新たな脅威が顕在化している。特に大阪・関西万博では、提供形態の多様化や動線の複雑化により新たな食品防御対策が求められている。そこで本研究では、これらの業態に対応したサイバー攻撃を含む食品テロ対策や、事業者の実践コストにも配慮したガイドラインの改訂と普及を目指し、飲食提供に関する対策検討、行政課題の把握、国際動向の確認を通じて、食品防御推進のための研究を行った。
研究方法
今年度は、大阪・関西万博に向けた食品提供対策、食品防御対策ガイドラインの修正、フードデリバリー事業者向けチェックリストの英訳試作、ロボット配膳システムに関する脆弱性調査、地方自治体行政の相談分析、海外政策動向の整理等を通じて研究を実施した。
結果と考察
1)大阪・関西万博に向けた食品防御対策の検討
パビリオンAや会場衛生監視センター等への実地調査により、営業前搬入、監視カメラ設置、刃物の事前申請制など現行の食品防御対策が確認された。一方、追加搬入や出展者交替工事期間、共用スペースの管理体制には課題が見られた。英語教材は準備されていたが、多国籍従業員に対応するにはさらに多言語対応が必要とされた。衛生管理の観点からも外国人従業員の理解促進と、マルチリンガルでの研修実施は喫緊の課題である。
2)フードチェーン全体の安全性向上に向けた調査と食品防御対策ガイドライン等の改善・普及
本年度は、食品防御対策ガイドライン(令和5年度版)において「調理・提供」の項目を見直し、「店頭販売品を含む」旨の文言を追加するなど、店舗販売形態への対応強化を図った。また、施設管理に関する監視体制や保管方法の記述修正、従業員の私物や外部業者の持ち物確認の対象範囲拡大も行われた。さらに、フードデリバリー業界における外国人配達員の増加を踏まえ、事業者・配達員向けチェックリストの英訳版を試作し、多言語対応の必要性が明らかとなった。英訳作業は今後の展開可能性も見据えたものである。ガイドラインの実効性を確保するには、現場のコストや感染症対応の実態を踏まえた継続的な見直しが求められる。
3)デリバリー等における食品防御課題の調査
ロボット配膳システムについて大手代理店への聞き取りを行い、設計上の脆弱性や防御機能未実装の実態を確認した。人件費削減を目的とする導入により、防御機能の追加が進みにくく、海外メーカーへの改善要請が伝わりにくいことも課題とされた。現場運用においても対応にばらつきがあり、管理レベルの標準化が求められる。人的監視との併用が重要な視点とされた。
4)地方自治体における課題の検討
アンケート調査手法の検討と川崎市の苦情相談記録の分析を通じて、意図的混入や予防策に関する相談、助言の事例が確認された。記録の表現の多様性が分析の難しさとして残った。監視員教材や事業者案内資料の整備、行政・事業者の役割整理も今後の課題とされた。防御に対する意識格差が地域間で生じている点も課題であり、支援体制の均質化が求められる。
5)海外における食品防御政策等の動向調査
米国ではFSMA第204条に基づく最終規則が2023年1月発効、2028年7月施行予定であり、今後、供給チェーン全体での記録保持と情報共有が義務づけられる。高リスク食品を対象とし、意図的汚染や食品偽装の抑止にも資する制度とされる。Codexでは食品偽装ガイドラインがCCFICS第27回でステップ5に進み、CAC47で予備採択されたが、知的財産(IP)、地理的表示(GI)、飼料の適用範囲が論点として残り、作業部会(EWG)での審議継続が決定している。英国PAS96は契約手続きの影響による改訂作業停滞のためパブリックコンサルテーション時期は未定であり、引き続き注視が必要である。
パビリオンAや会場衛生監視センター等への実地調査により、営業前搬入、監視カメラ設置、刃物の事前申請制など現行の食品防御対策が確認された。一方、追加搬入や出展者交替工事期間、共用スペースの管理体制には課題が見られた。英語教材は準備されていたが、多国籍従業員に対応するにはさらに多言語対応が必要とされた。衛生管理の観点からも外国人従業員の理解促進と、マルチリンガルでの研修実施は喫緊の課題である。
2)フードチェーン全体の安全性向上に向けた調査と食品防御対策ガイドライン等の改善・普及
本年度は、食品防御対策ガイドライン(令和5年度版)において「調理・提供」の項目を見直し、「店頭販売品を含む」旨の文言を追加するなど、店舗販売形態への対応強化を図った。また、施設管理に関する監視体制や保管方法の記述修正、従業員の私物や外部業者の持ち物確認の対象範囲拡大も行われた。さらに、フードデリバリー業界における外国人配達員の増加を踏まえ、事業者・配達員向けチェックリストの英訳版を試作し、多言語対応の必要性が明らかとなった。英訳作業は今後の展開可能性も見据えたものである。ガイドラインの実効性を確保するには、現場のコストや感染症対応の実態を踏まえた継続的な見直しが求められる。
3)デリバリー等における食品防御課題の調査
ロボット配膳システムについて大手代理店への聞き取りを行い、設計上の脆弱性や防御機能未実装の実態を確認した。人件費削減を目的とする導入により、防御機能の追加が進みにくく、海外メーカーへの改善要請が伝わりにくいことも課題とされた。現場運用においても対応にばらつきがあり、管理レベルの標準化が求められる。人的監視との併用が重要な視点とされた。
4)地方自治体における課題の検討
アンケート調査手法の検討と川崎市の苦情相談記録の分析を通じて、意図的混入や予防策に関する相談、助言の事例が確認された。記録の表現の多様性が分析の難しさとして残った。監視員教材や事業者案内資料の整備、行政・事業者の役割整理も今後の課題とされた。防御に対する意識格差が地域間で生じている点も課題であり、支援体制の均質化が求められる。
5)海外における食品防御政策等の動向調査
米国ではFSMA第204条に基づく最終規則が2023年1月発効、2028年7月施行予定であり、今後、供給チェーン全体での記録保持と情報共有が義務づけられる。高リスク食品を対象とし、意図的汚染や食品偽装の抑止にも資する制度とされる。Codexでは食品偽装ガイドラインがCCFICS第27回でステップ5に進み、CAC47で予備採択されたが、知的財産(IP)、地理的表示(GI)、飼料の適用範囲が論点として残り、作業部会(EWG)での審議継続が決定している。英国PAS96は契約手続きの影響による改訂作業停滞のためパブリックコンサルテーション時期は未定であり、引き続き注視が必要である。
結論
本研究では、新型コロナ収束後の食品等事業者における新たな営業形態の広がりを踏まえ、食品防御の推進に資する複数の視点から調査を実施した。大阪・関西万博に向けた調査では、実地調査を通じて搬入・保管から販売までの各段階の課題を整理した。食品防御対策ガイドライン(令和5年度版)については、調理・提供施設向けに店頭販売形態を加味した見直しを行い、多言語対応も試行された。ロボット配膳の普及に伴う新たな脆弱性も把握され、実態に即した対応の必要性が示唆された。地方自治体においては、食品防御に関する相談記録の分析や教育資材の検討を行い、行政機関の役割明確化の必要性が浮かび上がった。さらに、FSMA第204条やCodex食品偽装対策など海外動向も整理し、今後の国内対応への示唆が得られた。これらの成果は、持続可能な食品防御体制構築の基盤となる。
公開日・更新日
公開日
2025-08-14
更新日
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