胃粘膜に蓄積したエピジェネティック異常の定量による多発胃がん発生予測に関する前向き研究

文献情報

文献番号
201007006A
報告書区分
総括
研究課題名
胃粘膜に蓄積したエピジェネティック異常の定量による多発胃がん発生予測に関する前向き研究
課題番号
H20-ゲノム・一般-006
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
牛島 俊和(国立がん研究センター 研究所 エピゲノム解析分野)
研究分担者(所属機関)
  • 中島 健(国立がん研究センター 中央病院 消化管内視鏡科)
  • 島津 太一(国立がん研究センター がん予防・検診研究センター 予防研究部)
  • 一瀬 雅夫(和歌山県立医科大学 第二内科)
  • 山道 信毅(東京大学医学部附属病院 消化器内科)
  • 田中 雅樹(静岡がんセンター 内視鏡科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(ヒトゲノムテーラーメード研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
54,450,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がん患者の非がん部には、既にDNAメチル化異常が蓄積しており、その量が発がんリスクと相関することがある。胃がんでは、早期胃がんに対する内視鏡的粘膜下層剥離術 (ESD)後に、異時性多発胃がんの発生が多く、多数の患者の高頻度の経過観察が負担となっている。そこで、本研究では、ESD後の異時性多発胃がんの発生予測に非がん部胃粘膜生検組織におけるDNAメチル化量の測定が有用であるか否かを前向き研究により明らかにすることを目的とした。
研究方法
早期胃がんに対してESDを施行予定または施行後の症例を登録した。除菌後胃粘膜のDNAメチル化レベルが一定化した時点でDNAメチル化レベルを測定し、追跡を開始した (目標1000例)。DNAメチル化レベルは、定量的methylation-specific PCR法により測定した。DNAメチル化アレイ解析は、抗メチル化DNA抗体による免疫沈降とCpGアイランドマイクロアレイ解析により行った。
結果と考察
(1) 症例登録:平成22年度までに829例の登録を完了し、追跡を開始した。(2) 新規マーカー同定:本研究の開始時に得られていたFLNcやTHBD、平成21年度までに同定したmiR-124a-3に加え、平成22年度には7遺伝子 (EMX1、miR-663、NKX6-1、OTP、OPLAH、CYP1B1、NEFM)を同定した。単発胃がん131例、多発胃がん22例を用いた横断的メチル化解析により、miR-124a-3、及び、NKX6-1はオッズ比6.1、3.6で多発胃がん患者を単発胃がん患者から区別できることを見出した。
結論
非がん部胃粘膜に蓄積したDNAメチル化異常定量による発がんリスク診断前向き試験のための症例登録・追跡を予定通り開始した。世界初の「組織に蓄積したDNAメチル化異常を利用した疾患リスク診断」として成果が得られる可能性が高い。

公開日・更新日

公開日
2011-08-15
更新日
-

文献情報

文献番号
201007006B
報告書区分
総合
研究課題名
胃粘膜に蓄積したエピジェネティック異常の定量による多発胃がん発生予測に関する前向き研究
課題番号
H20-ゲノム・一般-006
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
牛島 俊和(国立がん研究センター 研究所 エピゲノム解析分野)
研究分担者(所属機関)
  • 中島 健(国立がん研究センター 中央病院 消化管内視鏡科)
  • 島津 太一(国立がん研究センター 予防検診研究センター 予防研究部)
  • 一瀬 雅夫(和歌山県立医科大学 第二内科)
  • 藤城 光弘(東京大学医学部附属病院 光学医療診療部)
  • 山道 信毅(東京大学医学部附属病院 消化器内科)
  • 田中 雅樹(静岡がんセンター 内視鏡科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(ヒトゲノムテーラーメード研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がん患者の非がん部には、既にDNAメチル化異常が蓄積しており、その量が発がんリスクと相関することがある。胃がんでは、早期胃がんに対する内視鏡的粘膜下層剥離術 (ESD)後に、異時性多発胃がんの発生が多く、多数の患者の高頻度の経過観察が負担となっている。そこで、本研究では、ESD後の異時性多発胃がんの発生予測に非がん部胃粘膜生検組織におけるDNAメチル化量の測定が有用であるか否かを前向き研究により明らかにすることを目的とした。
研究方法
早期胃がんに対してESDを施行予定または施行後の症例を登録した。除菌後胃粘膜のDNAメチル化レベルが一定化した時点でDNAメチル化レベルを測定し、追跡を開始した (目標1000例)。DNAメチル化レベルは、定量的methylation-specific PCR法により測定した。DNAメチル化アレイ解析は、抗メチル化DNA抗体による免疫沈降とCpGアイランドマイクロアレイ解析により行った。
結果と考察
(1) 症例登録:平成22年度までに829例の登録を完了し、追跡を開始した。(2) 新規マーカー同定:本研究の開始時に得られていたFLNcやTHBD、平成21年度までに同定したmiR-124a-3に加え、平成22年度には7遺伝子 (EMX1、miR-663、NKX6-1、OTP、OPLAH、CYP1B1、NEFM)を同定した。単発胃がん131例、多発胃がん22例を用いた横断的メチル化解析により、miR-124a-3、及び、NKX6-1はオッズ比6.1、3.6で多発胃がん患者を単発胃がん患者から区別できることを見出した。(3) 測定方法の高度化:
数%程度のDNAメチル化の正確な定量には定量MSP法が最適とされている。しかし、発がんリスク診断では、異なる時間・場所・実施者による高度の再現性が必要である。平成21年度までに、細胞株由来のコントロールDNAを用いて複数回、DNAメチル化を定量し、変動係数0.03とほぼ同一の値が得られる測定手順を確立した。
結論
非がん部胃粘膜に蓄積したDNAメチル化異常定量による発がんリスク診断前向き試験のための症例登録・追跡を予定通り開始した。世界初の「組織に蓄積したDNAメチル化異常を利用した疾患リスク診断」として成果が得られる可能性が高い。

公開日・更新日

公開日
2011-08-15
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201007006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
非がん部胃粘膜に蓄積したDNAメチル化異常定量による異時性多発胃がんリスク診断前向き試験のための症例826名を登録し、782名について3年間の追跡を完了した。高度のDNAメチル化蓄積を示す症例は、再度別の胃がんを発生する危険が2.3倍高いことが明らかになった。本研究は、個人の生活歴を反映して組織に蓄積したDNAメチル化異常を測定することで発がんリスクが予測出来ることを世界で始めて証明したものであり、消化器学の最高峰の学術誌Gutに発表された。
臨床的観点からの成果
他の方法では予測困難な一度胃がんを発生した人の異時性多発胃がんのリスクが予測できるようになった。また、より臨床的に必要性が高い「ピロリ菌除菌後の健常者の胃がんリスク診断」に関しても同様のアプローチで実現できることがほぼ期待できると考えられた。
ガイドライン等の開発
該当無し
その他行政的観点からの成果
該当無し
その他のインパクト
・TBS番組2013年2月11日 (月) 最新遺伝子ミステリー ”人間とは何だ…?”
・10以上の国際学会で招待講演を実施した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
41件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
7件
学会発表(国内学会)
6件
学会発表(国際学会等)
21件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
10件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Asada K, Nakajima T, Ushijima T, et al.
Demonstration of the usefulness of epigenetic cancer risk prediction by a multicenter prospective cohort study
Gut , 64 (3) , 388-396  (2015)
doi: 10.1136/gutjnl-2014-307094.
原著論文2
Nanjo S, Asada K, Ushijima T, et al.
Identification of gastric cancer risk markers that are informative in individuals with past H. pylori infection
Gastric Cancer , 15 (4) , 382-388  (2012)
doi: 10.1007/s10120-011-0126-1.
原著論文3
Yoshida T, Yamashita S, Ushijima T, et al.
Alu and Satalpha hypomethylation in Helicobacter pylori-infected gastric mucosae
Int J Cancer , 128 (1) , 33-39  (2011)
doi: 10.1002/ijc.25534.
原著論文4
Nakajima T, Enomoto S, Ushijima T, et al.
Persistence of a component of DNA methylation in gastric mucosae after Helicobacter pylori eradication
J Gastroenterol , 45 (1) , 37-44  (2010)
doi: 10.1007/s00535-009-0142-7.
原著論文5
Hosoya K, Yamashita S, Ushijima T, et al.
Adenomatous polyposis coli 1A is likely to be methylated as a passenger in human gastric carcinogenesis
Cancer Lett , 285 (2) , 182-189  (2009)
doi: 10.1016/j.canlet.2009.05.016.
原著論文6
Oka D, Yamashita S, Ushijima T, et al.
The presence of aberrant DNA methylation in noncancerous esophageal mucosae in association with smoking history: a target for risk diagnosis and prevention of esophageal cancers
Cancer , 115 (15) , 3412-3426  (2009)
doi: 10.1002/cncr.24394.
原著論文7
Terada K, Okochi-Takada E, Ushijima T, et al.
Association between frequent CpG island methylation and HER2 amplification in human breast cancers
Carcinogenesis , 30 (3) , 466-471  (2009)
doi: 10.1093/carcin/bgp021.
原著論文8
Ando T, Yoshida T, Ushijima T, et al.
DNA methylation of microRNA genes in gastric mucosae of gastric cancer patients: its possible involvement in the formation of epigenetic field defect
Int J Cancer , 124 (10) , 2367-2374  (2009)
doi: 10.1002/ijc.24219.
原著論文9
Nakajima T, Yamashita S, Ushijima T, et al.
The presence of a methylation fingerprint of Helicobacter pylori infection in human gastric mucosae
Int J Cancer , 124 (4) , 905-910  (2009)
doi: 10.1002/ijc.24018.
原著論文10
Yanaoka K, Fujishiro M, Ichinose M, et al.
Cancer high-risk subjects identified by serum pepsinogen tests –outcomes after 10-year follow-up in asymptomatic middle-aged males
Cancer Epidemiol Biomarkers Prev , 17 (4) , 838-845  (2008)
doi: 10.1158/1055-9965.EPI-07-2762.
原著論文11
Yanaoka K, Fujishiro M, Ichinose M, et al.
Risk of gastric cancer development in asymptomatic middle-aged Japanese subjects based on serum pepsinogen and Helicobacter pylori antibody levels
Int J Cancer , 123 (4) , 917-926  (2008)
doi: 10.1002/ijc.23571.

公開日・更新日

公開日
2015-06-16
更新日
-

収支報告書

文献番号
201007006Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
70,785,000円
(2)補助金確定額
70,785,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 0円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 0円
間接経費 0円
合計 0円

備考

備考
研究の遂行に必要な実験用消耗品を購入する際に研究費が86円不足し、自己資金を充てた。

公開日・更新日

公開日
2015-06-17
更新日
-