食品を介したダイオキシン類等有害物質摂取量の評価とその手法開発のための研究

文献情報

文献番号
202423010A
報告書区分
総括
研究課題名
食品を介したダイオキシン類等有害物質摂取量の評価とその手法開発のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22KA2001
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
堤 智昭(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木 美成(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
  • 登田 美桜(国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部)
  • 鹿嶋 晃平(東京大学 医学部附属病院総合周産期母子医療センター(小児科))
  • 平林 容子(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター)
  • 伊藤 美千穂(国立医薬品食品衛生研究所 生薬部)
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
83,256,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

概要版(繰越課題)
目的
本研究では、リスク管理やその効果の検証に不可欠な食品(母乳含む)を介した有害物質の摂取量を適時かつ継続的に調査する。また、摂取量調査に必要な有害物質の分析法を開発する。さらに、リスク管理の優先順位付けに必要な有害物質の暴露マージン(MOE)情報を収集する。今年度、緊急に追加された研究課題として、紅麹由来の機能性表示食品に起因する腎障害等の健康被害事例について、原因物質や発生機序の解明等を行う。

方法
2024年度に作製した全国約10地域のトータルダイエット(TD)試料を分析し、ダイオキシン類(DXN)、ポリ塩化ビフェニル(PCB)、有害元素(ヒ素、カドミウム、水銀、鉛等)等について国民平均の一日摂取量を推定し、経年変化の情報を更新した。有機フッ素化合物(PFAS)は、新たに2地域のTD試料を分析した。乳幼児の一食分試料のDXN摂取量を調査した。畜産物を対象にGC-MS/MSによるDXN分析法の性能を評価した。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(BT)及びリン酸エステル系難燃剤(PR)は、分析法の初期評価を行った。母乳のDXN濃度を測定し、経年変化を調査した。有害物質のMOE情報等を国内外の機関から収集した。プベルル酸(PA)及び新たに構造解析された2化合物(化合物Y、Z)を用いてラットによる毒性試験を実施した。紅麹製品におけるPAの混入経路を明らかにするため共培養試験を実施した。

結果と考察
TD試料の分析により、国民平均の摂取量はDXNが0.41 pg TEQ/kg/日、PCBが5.0 ng/kg/日と推定された。DXNはTDIの約10%、PCBは暫定一日摂取許容量の約0.1%であった。主な元素類では、ヒ素が219(無機ヒ素は21.2)、カドミウムが13.4、水銀が5.04、メチル水銀が3.69、鉛が3.96(単位はμg/人/日)と推定された。ハザード比を求めた結果、無機ヒ素が最も高かった。摂取量の経年変化を解析した結果、DXN、PCB、カドミウム、水銀、鉛は減少傾向であったが、無機ヒ素はほぼ一定であった。一食分試料からのDXN摂取量の平均値は乳児で1.2 pg TEQ/食、幼児で5.7 pg TEQ/食であった。2地域のTD試料の分析より、PFAS摂取量(Lower~Upper-bound)は、PFOSでは0.23~5.2、PFOAでは0.025~1.1(単位はng/kg/日)と推定され、日本のTDIの0.1~26%に相当した。畜水産物におけるEI法によるGC-MS/MS法のDXN分析値は従来法と良く一致し、添加回収試験の結果も良好であった。APCI法によるGC-MS/MSでは、概ね良好な結果であったが、一部に問題があった。BT及びPR分析法は食品試料への添加回収試験の結果、一部の対象物を除き良好な回収率であった。初産婦の出産後1か月の母乳中のDXN濃度は5.04±1.74 pg TEQ/g fatで、漸減傾向が継続していた。母乳中DXN濃度と児の身体発育や発達との明確な相関は認められなかった。MOEを指標とした有害物質のリストを更新・発展させた。PFASでは、我が国で水道水やミネラルウォーター類における規制について具体的な方針が示されたことが重要事項であった。PAを雌雄SDラットに28日間反復経口投与した結果、腎臓及び腺胃に毒性影響が認められた。本条件下における、ラットに対するPAの無毒性量は雌雄共に1 mg/kg/日と判断された。化合物YとZを雌雄SDラットに7日間反復経口投与した結果、いずれの検査項目にも被験物質投与による毒性影響は認められなかった。紅麹製品におけるPAの混入経路を明らかにするために、製造工場から分離されたP. adametzioidesが産生する代謝物の解析と、M. pilosusとの共培養試験を行った。その結果、紅麹におけるPA汚染の原因が、紅麹の製造工場に生息していたP. adametzioidesであること、及び紅麹の生産工程におけるP. adametzioidesの混入は、前培養の開始から本培養後までのいずれかの時点で発生した可能性が明らかとなった。また、PAと同様に混入したと思われる化合物YとZの立体構造を決定した。

結論
食品からのDXN、PCB、カドミウム、水銀、鉛の摂取量や母乳中DXN濃度は、行政施策の効果等により減少傾向が示された。無機ヒ素はハザード比が高く、継続調査の優先度が高い。PFAS摂取量はTDIを下回っていたが、調査拡充が望まれる。検討した分析法はTD試料への適用を検証し、摂取量調査に活用する。MOE情報はリスク管理すべき有害物質の選定に有用であり、継続して収集する。紅麹由来の機能性表示食品に起因する腎障害等の健康被害事例について、その原因物質や発生機序の解明に貢献した。

公開日・更新日

公開日
2025-07-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2025-07-02
更新日
-

文献情報

文献番号
202423010B
報告書区分
総合
研究課題名
食品を介したダイオキシン類等有害物質摂取量の評価とその手法開発のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22KA2001
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
堤 智昭(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
研究分担者(所属機関)
-
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
202423010C

収支報告書

文献番号
202423010Z