川崎病の疾患関連遺伝子の探索と遺伝子型に基づくテーラーメード治療法の確立

文献情報

文献番号
201007001A
報告書区分
総括
研究課題名
川崎病の疾患関連遺伝子の探索と遺伝子型に基づくテーラーメード治療法の確立
課題番号
H20-ゲノム・一般-001
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
羽田 明(千葉大学 大学院医学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 尾内 善広(理研横浜研究所ゲノム医科学研究センター)
  • 寺井 勝(東京女子医科大学 八千代医療センター)
  • 鈴木 啓之(和歌山県立医科大学)
  • 鈴木 洋一(千葉大学 大学院医学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(ヒトゲノムテーラーメード研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
33,156,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は以下の3項目である。
1.新たな川崎病発症関連遺伝子を同定しその関与について明らかにする、
2.発症関連遺伝子に関する研究成果を実際の川崎病治療に役立てるために、新規発症例を対象とした統一プロトコールによるゲノムコホート研究をおこない、ベッドサイドでの遺伝子検査によるCAL発生リスクと免疫グロブリン大量静注療法(IVIG)反応性の予知を可能にする、
3.我々が発見した疾患感受性遺伝子ITPKCが関与するNFAT系を抑制する薬剤であるシクロスポリン(CyA)の臨床的有用性を検証する。
研究方法
1.ITPKC、CASP3以外の染色体領域から新規感受性遺伝子の同定を進める。これまでの罹患同胞対法による連鎖解析に加えて、全ゲノム関連解析(GWAS)により、関連遺伝子領域を明らかにする。
2.川崎病の新規発症例に対して、統一治療プロトコールにしたがい、臨床経過を記録する。
3.治療反応性と遺伝子多型との関連を解析し、遺伝子タイピングによるテーラーメード医療の可能性を検討する。
4.NFAT系を抑制する薬剤であるシクロスポリン(CyA)の川崎病における安全性と臨床的有用性を検討する。
結果と考察
482例の川崎病患者の協力を得てDNAおよび臨床データを収集・蓄積することができた。ゲノムワイド関連解析により、新たな4つの関連遺伝子領域をみつけた。遺伝子多型とIVIG抵抗性との関連を検討した結果、ITPKC とCASP3のリスクアレルを1つ以上保有するとIVIG抵抗性リスクが有意に高まること、同様の関連の傾向がCALのリスクについても認められることから予知に役立つ可能性があることが明らかになった。統一プロトコールでIVIG治療を受けた川崎病患者329例中、2度のIVIG不応の患者中4か月齢以上の28例にCyAを経口投与した。その結果、CyA投与で3日以内に18例(64.3%)、4-5日以内に4例(14.3%)と速やかな解熱が認められたが、重篤な副作用は認められなかった。CyAは忍容性が高く有効性も期待できることが明らかになった。
結論
1.川崎病の疾患関連遺伝子としてITPKCとCASP3を合わせて、合計6か所の遺伝子領域が明らかになった。
2.感受性遺伝子の遺伝子多型解析による重症化および治療反応性が予測できる可能性があきらかとなりテーラーメード医療の実現に近づいた。
3.治療薬としてのCyAの安全性が明らかになり、臨床的有用性も示唆されたので、新たなプロトコールで標準的治療法としての検討が強く望まれる。

公開日・更新日

公開日
2011-08-12
更新日
-

文献情報

文献番号
201007001B
報告書区分
総合
研究課題名
川崎病の疾患関連遺伝子の探索と遺伝子型に基づくテーラーメード治療法の確立
課題番号
H20-ゲノム・一般-001
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
羽田 明(千葉大学 大学院医学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 尾内 善広(理研横浜研究所ゲノム医科学研究センター)
  • 寺井 勝(東京女子医科大学 八千代医療センター)
  • 鈴木 啓之(和歌山県立医科大学)
  • 鈴木 洋一(千葉大学 大学院医学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(ヒトゲノムテーラーメード研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は以下の3項目である。
1.新たな川崎病発症関連遺伝子を同定しその関与について明らかにする、
2.発症関連遺伝子に関する研究成果を実際の川崎病治療に役立てるために、新規発症例を対象とした統一プロトコールによるゲノムコホート研究をおこない、ベッドサイドでの遺伝子検査によるCAL発生リスクと免疫グロブリン大量静注療法(IVIG)反応性の予知を可能にする、
3.我々が発見した疾患感受性遺伝子ITPKCが関与するNFAT系を抑制する薬剤であるシクロスポリン(CyA)の臨床的有用性を検証する。
研究方法
1.ITPKC以外の新規感受性遺伝子の同定を進める。罹患同胞対法に加えて全ゲノム関連解析により、関連遺伝子領域を明らかにする。
2.川崎病の新規発症例に対して、統一治療プロトコールにしたがい、生体試料の採取と臨床経過の記録をおこなう。
3.明らかになった発症関連遺伝子の責任遺伝子多型と治療反応性との関連を解析し、遺伝子タイピングによるテーラーメード医療の可能性を検討する。
4.NFAT系を抑制する薬剤であるシクロスポリン(CyA)の川崎病における安全性と臨床的有用性を検討する。
結果と考察
482例の川崎病患者の協力を得てDNAおよび臨床データを収集・蓄積することができた。新たにCASP3が関連遺伝子であり、NFAT系に関与する事がわかった。さらにゲノムワイド関連解析により、新たに4つの関連遺伝子領域をみつけた。遺伝子多型とIVIG抵抗性との関連を検討した結果、ITPKC とCASP3のリスクアレルを1つ以上保有するとIVIG抵抗性リスクが有意に高まること、同様の関連の傾向がCALのリスクについても認められることから予知に役立つ可能性があることが明らかになった。統一プロトコールでIVIG治療を受けた川崎病患者329例中、2度のIVIG不応の患者中4か月齢以上の28例にCyAを経口投与した。その結果、CyA投与で3日以内に18例(64.3%)、4-5日以内に4例(14.3%)と速やかな解熱が認められたが、重篤な副作用は認められなかった。CyAは忍容性が高く有効性も期待できることが明らかになった。
結論
1.川崎病の疾患関連遺伝子としてITPKCとCASP3を合わせて、合計6か所の遺伝子領域が明らかになった。
2.感受性遺伝子の遺伝子多型解析による重症化および治療反応性が予測できる可能性があきらかとなりテーラーメード医療の実現に近づいた。
3.治療薬としてのCyAの安全性が明らかになり、臨床的有用性も示唆されたので、新たなプロトコールで標準的治療法としての検討が強く望まれる。

公開日・更新日

公開日
2011-08-12
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201007001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
最近、全ゲノム関連解析(GWAS)により、多因子疾患の感受性遺伝子が明らかになりつつある。川崎病は感染症が疑われながらいまだに関与する病原体は不明であるが遺伝要因の関与が大きいことが知られていた。本研究では連鎖解析に加えGWASを駆使することにより世界で初めてITPKCとCASP3が関与することを明らかにした。また両遺伝子ともNFAT経路の抑制系因子として働くという発症機序に関する治験が得られたことは、極めて重要な発見である。
臨床的観点からの成果
疾患感受性遺伝子として明らかにしたITPKCとCASP3がNFAT経路の抑制系遺伝子として働いているとの治験から、川崎病の治療に、この経路を抑えることで知られているシクロスポリンが有用である事が示唆された。IVIG抵抗性の難治性川崎病を対象とした臨床研究により、安全性が確認でき、有用性も強く示唆される所見が得られ、新たな治療法を確立につながることがわかった。また、遺伝子タイピングにより治療抵抗性などが予測できる可能性が示唆され、テーラーメード治療実現に近づいた。
ガイドライン等の開発
川崎病の治療ガイドラインにおいて、シクロスポリンが記載された。
その他行政的観点からの成果
千葉大学臨床試験部の協力を得て,重症川崎病を対象とした医師主導治験を計画し,PMDAの助言を得たのち,日本医師会のヒアリングを受けた.その結果,治験推進研究事業の医師主導治験[治験の調整・管理に関する研究(シクロスポリン)]として採択された.参加施設を集め,2014年5月から症例登録を開始した.現在,症例登録を進めているが,目標数を達成するため,参加医療機関との連絡を密にとっている.
その他のインパクト
ITPKCとCASP3の発見時に記者会見およびテレビ、新聞等のマスコミで取り上げられた。多くの学会でのシンポジウム、特別講演、日本人類遺伝学会奨励賞の受賞などで注目をあびた。国際学会においても招待講演として招聘された。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
11件
その他論文(和文)
16件
その他論文(英文等)
3件
学会発表(国内学会)
31件
学会発表(国際学会等)
7件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
10件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Onouchi Y, Gunji T, Burns JC et al
ITPKC functional polymorphism associated with Kawasaki disease susceptibility and formation of coronary artery aneurysms
Nat Genet , 40 , 35-42  (2008)
原著論文2
Onouchi Y, Ozaki K, Burns JC
Common variants in CASP3 confer susceptibility to Kawasaki disease
Hum Mol Genet , 19 , 2898-2906  (2010)
原著論文3
Suzuki H, Terai M, Hamada H
Cyclosporin A treatment for refractory Kawasaki disease - A pilot study of 28 patients with Kawasaki disease resistant to both initial and additional IVIG
Pediat Infect Dis J , 30 , 871-876  (2011)
原著論文4
Hamada H, Suzuki H et al.
Inflammatory cytokine profiles during Cyclosporin treatment for immunoglobulin-resistant Kawasaki disease.
Cytokine , 60 , 681-685  (2012)
原著論文5
Onouchi Y, Ozaki K et al.
A genome-wide association study identifies three new risk loci for Kawasaki disease.
Nat Genet , 44 , 517-521  (2012)
原著論文6
Onouchi Y, Suzuki Y et al
ITPKC and CASP3 polymorphisms and risks for IVIG unresponsiveness and coronary artery lesion formation in Kawasaki disease.
Pharmacogenomics J , 13 , 52-59  (2013)

公開日・更新日

公開日
2015-05-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
201007001Z