職場における女性の健康保持増進のための効果的な産業保健活動の確立に向けた研究

文献情報

文献番号
202422009A
報告書区分
総括
研究課題名
職場における女性の健康保持増進のための効果的な産業保健活動の確立に向けた研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23JA1005
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
立石 清一郎(産業医科大学 産業生態科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 藤野 善久(産業医科大学 医学部)
  • 小田上 公法(産業医科大学 産業生態科学研究所 産業保健経営学)
  • 五十嵐 侑(産業医科大学 災害産業保健センター)
  • 金城 泰幸(産業医科大学 医学部産科婦人科学)
  • 大河原 眞(産業医科大学 産業生態科学研究所環境疫学研究室)
  • 原田 有理沙(産業医科大学 医学部 両立支援科学)
  • 古屋 佑子(東海大学医学部 基盤診療学系衛生学公衆衛生学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
5,887,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、就労期の女性が経験する更年期症状や月経随伴症状といった健康課題に対し、産業保健の視点から、職場における具体的な支援の在り方を明らかにし、事業場での実践的な対応策を体系化することを目的とした。特に、職場における配慮の実際と支援体制のあり方、産業保健職の役割、制度活用の促進要因と阻害要因に着目し、アクションにつながるツール開発を図った。
研究方法
本研究では、5つの主研究課題に基づき、複数の分担研究を通じて多角的なアプローチを実施した。
結果と考察
上記の調査・研究により、以下のような知見と成果が得られた。文献レビューでは、支援施策として「更年期ポリシーの策定」「柔軟な勤務体制」「上司・同僚の理解促進」などが効果的とされ、これらの支援の有無が離職や生産性と関連する可能性が示された。事業場調査では、「制度はあるが利用されにくい」「上司が男性で相談しづらい」「健康課題を職場で話すこと自体へのためらい」といった阻害要因が多く確認された。一方、柔軟な個別対応や経営層の理解が促進要因として明らかとなった。疫学調査からは、PMSや月経困難症の重症度と業務パフォーマンスの有意な関連が確認され、一定数の女性労働者が症状により集中力や生産性の低下を経験していることが統計的に示された。大企業調査では、施策の「認知度」と「利用経験」が、職場に対する信頼や働きやすさの感覚(POS)と強く相関しており、制度の存在だけでなく周知と活用が重要であることが示唆された。臨床的知見としては、産業医や健診医が女性特有の健康課題に対応するための情報や研修が不足しており、対応ツールの整備が求められているというニーズが示された。
上記の成果を統合し、研究班では以下の3つの実践ツールを開発した。現時点では研究班が作成した原案であり今後のブラッシュアップが必要であることに留意が必要である。
アクションチェックリスト:人事、管理職、産業保健スタッフ、同僚など多様な立場からの対応ヒント集(全41項目)を整理。組織文化・制度整備・環境調整・教育・相談体制など、多面的な取組が必要であることが明示された。
症状別職場配慮集:更年期症状やPMS、月経困難症など10症状程度を対象に、それぞれの困りごとに対応した具体的な職場配慮例(5項目前後)を提示した。例えば、ホットフラッシュへの対応として服装自由化や空調の柔軟運用、集中困難への対応として業務の分割・在宅勤務の許容などが挙げられる。
仮想事例:実際の更年期症状を抱えた女性が、産業保健職や上司と連携して就業継続を実現した支援プロセスを再構成。相談のきっかけや周囲の理解、段階的支援などが記載され、実践的理解に資する内容となっている。
これらの資料は、研究成果を実際の現場に落とし込むための実用的なヒントであり、事業場の支援体制強化と、職場全体での配慮的な文化形成を促進する可能性がある。
上記の成果を統合し、研究班では以下の3つの実践ツールを開発した。現時点では研究班が作成した原案であり今後のブラッシュアップが必要であることに留意が必要である。
アクションチェックリスト:人事、管理職、産業保健スタッフ、同僚など多様な立場からの対応ヒント集(全41項目)を整理。組織文化・制度整備・環境調整・教育・相談体制など、多面的な取組が必要であることが明示された。
症状別職場配慮集:更年期症状やPMS、月経困難症など10症状程度を対象に、それぞれの困りごとに対応した具体的な職場配慮例(5項目前後)を提示した。例えば、ホットフラッシュへの対応として服装自由化や空調の柔軟運用、集中困難への対応として業務の分割・在宅勤務の許容などが挙げられる。
仮想事例:実際の更年期症状を抱えた女性が、産業保健職や上司と連携して就業継続を実現した支援プロセスを再構成。相談のきっかけや周囲の理解、段階的支援などが記載され、実践的理解に資する内容となっている。
これらの資料は、研究成果を実際の現場に落とし込むための実用的なヒントであり、事業場の支援体制強化と、職場全体での配慮的な文化形成を促進する可能性がある。
結論
女性の健康課題は、労働者個人の問題にとどまらず、組織としての対応が必要な社会的・労働政策的課題である。特に更年期症状や月経随伴症状は、プレゼンティーズム、離職、キャリア形成上の困難などと関連し、支援の欠如は労働市場における大きな損失につながりうる。
本研究により、症状に応じた具体的支援策とその実施方法が提案され、事業場にとっての対応ヒントが整理された。今後は、これらの成果を踏まえた制度の整備、産業保健職の研修、組織全体への啓発活動の強化が求められる。女性が健康を保持しつつ安心して働き続けられる社会の実現が期待される。

公開日・更新日

公開日
2025-08-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-08-08
更新日
-

収支報告書

文献番号
202422009Z