特殊健康診断等のデータ入力標準化およびデータ利活用ツール開発のための研究

文献情報

文献番号
202422001A
報告書区分
総括
研究課題名
特殊健康診断等のデータ入力標準化およびデータ利活用ツール開発のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22JA1003
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
大神 明(産業医科大学 産業生態科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 塩田 直樹(産業医科大学 医学部 小児科学)
  • 宮本 俊明(産業医科大学 産業医実務研修センター)
  • 上野 晋(産業医科大学 産業生態科学研究所)
  • 川波 祥子(産業医科大学 産業生態科学研究所)
  • 安藤 肇(産業医科大学 産業生態科学研究所 作業関連疾患予防学研究室)
  • 山本 誠(産業医科大学 産業生態科学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
3,462,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、特殊健康診断における自覚・他覚症状の記録を標準化・デジタル化し、作業者の健康状態と化学物質ばく露との関連を可視化することを目的とする。法令で定められた健診項目を網羅する問診票をデジタル形式で構築し、PHR(パーソナルヘルスレコード)としての利活用や長期保存を見据えた情報管理体制を構築することを目指した。
研究方法
① 北九州市内の製造業を対象に、開発したデジタル問診票(Formrun使用)を用いた実証実験を実施。対象者112名に対し、化学物質の取扱い状況、作業時間、保護具の使用、自覚症状などを調査し、従来の紙問診票との比較も行った。
② 特別化学物質ごとに求められる問診項目を整理し、Excelベースの検索テンプレートを作成。対象物質を選択すると関連する症状カテゴリとコードを表示できる構造とし、問診票生成と健康リスク評価の迅速化を図った。
結果と考察
平均作業時間は化学物質別に4.6~13.7時間でばらつきがあり、長時間作業者では全身倦怠感や集中力低下、抑うつ感、頭痛・しびれなどの自覚症状が有意に多く認められた。また保護具未使用者では皮膚・眼・呼吸器症状が高頻度に出現した。
問診票のユーザビリティ評価では、20代以下は高評価で一貫性がある一方、40代以降では満足度が低下し、特に60代では操作性改善の必要性が示唆された。検索テンプレートにより、化学物質と症状の関係が視覚的かつ系統的に把握可能となり、今後のリスクアセスメント支援ツールとしての有用性が確認された
結論
本研究により開発されたデジタル問診票は、作業者の健康情報の効率的な収集と管理に有効であり、産業保健における情報基盤強化に資する。特に、標準化されたコード体系はPHRの中核を成すものであり、今後の健診情報の一元管理と活用の基盤となる。一方、世代間での操作性格差やPHRに含める情報範囲に関する課題も明らかとなり、今後の運用改善と継続的な評価が求められる。今回の成果は、化学物質の自主管理と職業性疾病予防に向けた実践的ツールとして発展が期待される。

公開日・更新日

公開日
2025-08-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2025-08-08
更新日
-

文献情報

文献番号
202422001B
報告書区分
総合
研究課題名
特殊健康診断等のデータ入力標準化およびデータ利活用ツール開発のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22JA1003
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
大神 明(産業医科大学 産業生態科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 宮本 俊明(産業医科大学 産業医実務研修センター)
  • 塩田 直樹(産業医科大学 医学部 小児科学)
  • 上野 晋(産業医科大学 産業生態科学研究所)
  • 川波 祥子(産業医科大学 産業生態科学研究所)
  • 安藤 肇(産業医科大学 産業生態科学研究所 作業関連疾患予防学研究室)
  • 山本 誠(産業医科大学 産業生態科学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、特殊健康診断(特殊健診)に関する健診結果、作業条件、作業環境測定、保護具使用履歴などの情報を標準化し、PHR(パーソナル・ヘルス・レコード)として長期的に保存・活用可能な情報基盤を構築することである。近年の法制度改正(e-文書法、厚労省令第44号)やリスクアセスメント健診制度の導入を背景に、紙媒体依存から脱却し、電磁的記録による持続可能な管理体制の確立が求められている。特に業務起因性の判断や退職・廃業後の記録提出にも対応可能なシステムの整備が急務である。
研究方法
本研究では以下の4つのアプローチを用いた。(1) 問診項目(13系統・83項目)の標準化と症状・作業条件のコード体系整備、(2) 化学物質別に対応する問診項目を抽出可能な検索テンプレートの構築、(3) UBE株式会社でのPHRシステムの現場実装による介入研究、(4) 情報連携・法制度適合・プライバシー保護を含めたネットワーク構築要件の整理である。入力支援にはRFIDやQRコードを導入し、本人による作業記録入力と保護具選定支援ツールの開発も併せて実施した。
結果と考察
中規模事業場における問診票導入実証実験とUBEでの現場実装により、次のような成果が得られた:
・記録の構造化とコード体系によって、健診設計、業務起因性評価、労災補償調査等に即時対応できるPHRデータ基盤が構築された。
・中規模事業場における問診票導入実証実験の結果からは、作業時間や自覚症状の把握が容易になり、保護具の使用状況やばく露状況と症状の定量的把握が容易になることが示された。
・RFIDタグ等の導入で、本人によるリアルタイム記録が実現され、第三者による代理入力による改ざん・誤記録の防止に効果が認められた。
・保護具選定支援ツールの定量アルゴリズム化により、作業ごとに適切な保護対策を個別最適化でき、教育・管理・記録を連動させた保健行動支援モデルが構築された。
・長期保存性・検索性を担保した保存形式と法的根拠に基づく記録体系により、PHRを行政提出記録としても活用可能な体制を確立した。
 さらに、実装現場でのフィードバックをもとに、PHRの入力支援ツールが現場の作業フローに柔軟に適応し、記録ミスや記載漏れが従来より大幅に減少したことが確認された。特に、保護具の選定記録とばく露履歴が連動することで、作業者の健康影響と対策実施履歴とのトレーサビリティが明確化され、産業医による就業判定の根拠が強化された。また、PHRが紙媒体記録と比べて平均30%以上の管理工数削減を可能にしたという実務的成果も得られ、実装に伴う現場の負担感も低かった。
今後は、開発されたPHR・関連ツールを多拠点・多業種に展開し、実装支援とユーザ教育を進めることが求められる。特に、PHRの本人所有・本人アクセス権の保障、モバイルアクセス、退職後の記録保持等に関する制度的整備が必要である。
 また、医療系PHRとの連携(人間ドック、レセプト等)を可能とする標準APIや、地方自治体との健診情報連携なども今後の方向性として想定される。産業医や労働衛生技術者の活用範囲も、リスクアセスメントと事後措置の支援から、データ解析・戦略的健診設計・企業政策提言へと拡張されることが期待される。
結論
本研究は、特殊健診情報のデジタルPHR化を通じて、作業履歴やばく露情報を一元的に記録・活用可能とする基盤を構築し、法令対応、業務支援、予防強化を統合した産業保健の新たなモデルを提示した。UBEでの実装成果は、今後の全国展開や制度整備の試金石となりうる。PHRは産業保健における信頼性と活用性を兼ね備えた社会インフラとしての実装が期待される。

公開日・更新日

公開日
2025-08-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-08-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202422001C

収支報告書

文献番号
202422001Z