ヒト誘導多能性幹(iPS)細胞由来心臓細胞の分化誘導と移植医療応用に関する研究

文献情報

文献番号
201006002A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒト誘導多能性幹(iPS)細胞由来心臓細胞の分化誘導と移植医療応用に関する研究
課題番号
H20-再生・一般-002
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
山下 潤(京都大学 再生医科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 池田 義(京都大学 医学部 心臓血管外科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
41,551,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ヒト人工多能性幹細胞(iPS細胞)(Takahashi, Cell, 2007)は、再生医療を中心とする臨床応用が大いに期待されている。本研究は、ヒトiPS細胞を用いた心臓再生治療の早期実現を目的とし、ヒトiPS細胞の心臓細胞分化誘導法、誘導細胞純化法、純化細胞の移植法の開発等に関する研究を行う。
研究方法
①マウスiPS細胞からの効率的心血管細胞分化誘導法の開発
 研究代表者らは、マウスES細胞から誘導・純化したFlk1陽性細胞を共通の前駆細胞として種々の心血管系細胞を分化誘導するシステムを構築し (Nature, 2000; FASEB J, 2005ほか)、新しい心筋前駆細胞(FCV細胞)の同定に成功している。免疫抑制剤サイクロスポリンAをFlk1陽性細胞に添加すると心筋細胞及びFCV細胞を特異的に増加させた。同システムをマウスiPS細胞に適用した。
②ヒトiPS細胞からの心筋分化誘導とサイクロスポリンAによる誘導の効率化
 ヒトES細胞との共培養により心筋細胞を誘導できるEND2細胞(Circulation, 2003)を用いてヒトiPS細胞からの心筋分化誘導を行った。またサイクロスポリンA法の導入を試みた。
③細胞シート技術を用いた心筋細胞シート移植
 東京女子医科大学との共同研究により温度応答性培養皿を用いた細胞シート技術のES細胞への導入を行った。マウスES細胞由来心筋細胞シートのラット心筋梗塞モデルへの移植を行った。
結果と考察
①マウスiPS細胞から種々の心血管細胞を分化誘導することに成功している (2008年Circulation誌基礎科学部門第1位Best Paper Award) 同分化系にサイクロスポリン法を導入したところ、誘導される心筋細胞量が約10倍増加した。
②ヒトiPS細胞をEND2上で培養し拍動心筋細胞を誘導することに成功。サイクロスポリンAを投与したところ、拍動細胞コロニーが約4倍あまりに増加した。ヒトiPS細胞からの機能心筋細胞を誘導する基盤技術の開発に成功した。
③マウスES細胞由来心筋細胞シートをラット心筋梗塞モデルに移植し、左室収縮率の有意な改善と線維化領域の有意な縮小が認められた。
結論
ヒトiPS細胞心筋分化技術に関して基盤となる成果を着実にあげた。心筋シート移植法は当初の予想以上の成果が認められ、今後これらの成果を複合的にヒトiPS細胞へ応用することにより、臨床応用に向けた展開が期待される。

公開日・更新日

公開日
2011-09-20
更新日
-

文献情報

文献番号
201006002B
報告書区分
総合
研究課題名
ヒト誘導多能性幹(iPS)細胞由来心臓細胞の分化誘導と移植医療応用に関する研究
課題番号
H20-再生・一般-002
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
山下 潤(京都大学 再生医科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 池田 義(京都大学 医学部 心臓血管外科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ヒト人工多能性幹細胞(iPS細胞)(Takahashi, Cell, 2007)は、再生医療を中心とする臨床応用が大いに期待されている。本研究は、ヒトiPS細胞を用いた心臓再生治療の早期実現を目的とし、ヒトiPS細胞の心臓細胞分化誘導法、誘導細胞純化法、純化細胞の移植法の開発等に関する研究を行う。
研究方法
①マウスES細胞から誘導・純化したFlk1陽性細胞から心血管系細胞を誘導するシステムを構築(Nature, 2000; FASEB J, 2005ほか)。同システムをマウスiPS細胞に適用。
②マウスES細胞分化系を用いて心筋分化誘導物質を探索。
③免疫抑制剤サイクロスポリンAが強力に心筋細胞及びFCV心筋前駆細胞分化を促進。同システムをマウスiPS細胞に適用した。
④END2細胞(Circulation, 2003)を用いてヒトiPS細胞からの心筋分化誘導を行った。またサイクロスポリンA法の導入を試みた。
⑤マウスES細胞由来心筋細胞及び心筋前駆細胞のラット心筋梗塞モデルへの細胞移植。
⑥東京女子医科大学との共同研究により温度応答性培養皿を用いた細胞シート技術のES細胞への導入を行った。マウスES細胞由来心筋細胞シートのラット心筋梗塞モデルへの移植を行った。
結果と考察
①マウスiPS細胞からの種々の心血管細胞分化誘導法を開発した(Narazaki, Circulation, 2008;2008年Circulation誌基礎科学部門第1位Best Paper Award)。
②免疫抑制剤サイクロスポリンAは、心筋細胞及びFCV心筋前駆細胞を特異的に増加させた(PCT特許出願済)。
③マウスiPS細胞においてもサイクロスポリン法が有効。
④ヒトiPS細胞から拍動心筋細胞を誘導。サイクロスポリンAによる効率化にも成功。機能的ヒト心筋細胞誘導の基盤技術を開発(Fujiwara, PLoS One, 2011;PCT特許出願済)。
⑤心筋前駆細胞移植では従来の分化心筋細胞の移植に比べ再生心筋量が約20倍多かった。
⑥マウスES細胞由来心筋細胞シート移植により左室収縮率の有意な改善と線維化領域の有意な縮小を認めた(特許出願済)。
結論
ヒトiPS細胞心筋分化技術に関して基盤となる成果を着実にあげた。心筋シート移植法は当初の予想以上の成果が認められ、今後これらの成果を複合的にヒトiPS細胞へ応用することにより、臨床応用に向けた展開が期待される。

公開日・更新日

公開日
2011-09-20
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201006002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
マウスiPS細胞からの心血管分化誘導は、2008年に研究代表者らが世界に先駆けて成功し、2008年にCirculation誌掲載全論文中から基礎科学部門Best Paper Awardを受賞するなど非常に高い評価を得た。サイクロスポリンAによる心筋分化促進効果は、心筋前駆細胞移植治療という新しい可能性を開く成果である。ヒトES細胞にサイクロスポリンA法を用いヒト心筋モデル細胞樹立の基本的技術基盤を確立した。ES細胞由来心臓細胞シートによる新しい細胞治療の可能性を示した。
臨床的観点からの成果
ヒトiPS細胞からの機能的心筋細胞の分化誘導に成功し、QT延長など薬剤毒性の検索が可能なヒト心筋モデル細胞樹立の基本的技術基盤の確立に成功した。また細胞シート作製技術をES細胞に応用し、新しい心臓組織細胞シートを開発した。ラット心筋梗塞モデルに対する同シート移植は、心筋梗塞後の心不全進行過程において明らかな機能改善を認めた。同方法のヒトiPS細胞への応用による新しい心臓再生治療の可能性を示した。これらはいずれも臨床応用に直結できる成果である。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
新聞9件
H20.12.8日経マウスES細胞から心筋作成10倍
H21.1.6京都iPSの未来探る 
同12.17 Medical Tribune Circulation年間ベスト基礎科学論文
H22.4.15Medical Tribune心血管再生医療の課題を着実に解決
同4.21日経動脈形成しくみ解明 
同4.22産経ES細胞で動脈作られる仕組み
2011.3.1日経万能細胞から心筋 新技術で
産経iPS細胞から高効率に心筋
日刊工業免疫抑制剤で心筋細胞分化を効率化

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
11件
その他論文(和文)
15件
その他論文(英文等)
5件
学会発表(国内学会)
79件
学会発表(国際学会等)
25件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計5件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Fujiwara M, Yan P, Otsuji TG, et al.
Induction and enhancement of cardiac cell differentiation from mouse and human induced pluripotent stem cells with cyclosporin-A.
PLoS One , 6 , 16734-  (2011)
原著論文2
Yamamizu K, Matsunaga T, Uosaki H, et al.
Convergence of Notch and β-catenin signaling induces arterial fate in vascular progenitors.
J Cell Biol , 189 , 325-338  (2010)
原著論文3
Yamamizu K, Kawasaki K, Katayama S,et al.
Enhancement of vascular progenitor potential by protein kinase A through dual induction of Flk-1 and Neuropilin-1.
Blood , 114 , 3707-3716  (2009)
原著論文4
Yan P, Nagasawa A, Uosaki H, et al.
Cyclosporin-A potently induces highly cardiogenic progenitors from embryonic stem cells.
Biochem Biophys Res Commun , 379 , 115-120  (2009)
原著論文5
Narazaki G, Uosaki M, Teranishi M,et al.
Directed and systematic differentiation of cardiovascular cells from mouse induced pluripotent stem cells.
Circulation , 118 , 498-506  (2008)
原著論文6
Nakao Y, Narazaki G, Hoshino T,et al.
valuation of antiangiogenic activity of azumamides by the in vitro vascular organization model using mouse induced pluripotent stem (iPS) cells.
Bioorg Med Chem Lett , 18 , 2982-2984  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-06-18
更新日
-

収支報告書

文献番号
201006002Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
54,017,000円
(2)補助金確定額
54,017,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 0円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 0円
間接経費 0円
合計 0円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2015-06-17
更新日
-