文献情報
文献番号
202421001A
報告書区分
総括
研究課題名
医療安全支援センターの機能評価及び質改善のためのICTを用いた地域連携と情報収集の体制構築に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22IA1005
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
荒神 裕之(国立大学法人 山梨大学 大学院総合研究部医学域)
研究分担者(所属機関)
- 松村 由美(京都大学医学部附属病院 医療安全管理部)
- 菊池 宏幸(東京医科大学 公衆衛生学分野)
- 天笠 志保(帝京大学 公衆衛生学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
3,696,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
医療安全支援センター(以下「センター」)は、約20年に渡り、患者や家族からの相談、苦情への窓口対応を中核機能として、医療の安全の確保を図ってきた。他方、ICTの利活用は、地理的、時間的な制約を乗り越える有効な方策として社会に定着し、新たなアプローチを検討する基盤が整いつつある。しかしながら、ICTを利活用したセンター事業への展開の具体的な方策は未だ明らかでない。そこで、本研究では、制度全体の運用状況と総合支援事業が提供すべき新たな支援の内容を解明し、ICTの利活用による地域を包括した連携の枠組み構築について、ICT利活用に伴うセキュリティ上の問題を含めた課題についても検討した上で、支援事業に実装化するための試行と検証を行うことを目的とした。
研究方法
令和6年度は、本研究班が開発した地域の医療機関等にセミクローズドで情報発信できるウェブページ型のシステムに関し、試行の協力が得られたセンターで実際に運用し、実装に向けた課題の検討を行うと共に、センター担当者、相談員向けの研修内容の見直しのための検討会を開催し、総合支援事業が実施するセンター担当者、相談員向け研修会についての提言を取りまとめた。また、分担研究者らにより、センター相談対応ガイドブック2016改訂版(相談対応ガイドブック)の修正や内容追加の検討、相談対応ガイドブックにおける「相談内容」の追加・修正の検討、相談・苦情事例の法的観点による分類と窓口の相談員へのインタビュー調査に基づく質的分析を行った。
結果と考察
センターが収集した情報を所在する地域の医療機関等にセミクローズドで情報発信できるウェブページ型のシステムについて、試行運用の協力が得られた保健所設置市区の2つのセンターで各センター管理者による運用を行い、設定段階でのトラブルはあったものの、運用中のトラブル発生はなく、地域の医療機関等への研修提供手段としての運用を切り口にセンターと医療機関の接点となる可能性を実証できた。また、総合支援事業による研修ストックの作成など、本システムの利用促進に向けた今後の取り組み課題も明らかとなった。センター機能の向上に関しては、従来の相談員だけでなく、センター担当者を対象とした研修構成の提言を取りまとめ、相談対応ガイドブックの改訂に向けた提言と、運用状況調査の「相談内容」の分類明確化を実施し、センター運用と調査精度をいずれも向上させることを目指した取り組みを完了した。また、相談・苦情事例の法的観点による分類と窓口の相談員へのインタビュー調査に基づく質的分析を通じて、対応困難事例に関する問題点を明らかにした。これら令和6年度の研究結果により、本研究が目指してきたICTの利活用による地域を包括した連携の枠組み構築について、ICT利活用に伴うセキュリティ上の課題もクリアして支援事業に実装化する試行と検証を完了することができ、加えて、制度全体の運用状況と総合支援事業が提供すべき新たな支援の内容を明らかにすることができた。
結論
今回、地域の医療機関等にセミクローズドで情報発信できるウェブページ型のシステムの試行運用で一定の成果を得ることができた。こうしたシステムの積極的な利活用を図っていくために必要な、相談・苦情対応以外のセンター機能の充実に向けたセンター担当者向け研修会の実施や、相談対応ガイドブックの改訂への提言、相談・苦情のより正確な情報収集のための「相談内容」の分類の整理に取り組んだ。相談・苦情への対応を通じて医療の質や安全の向上を図ることがセンターに期待された役割であり、対応困難な相談への対処も含めて、今回の研究で得られた成果を総合支援事業での実装につなげていくことが今後の課題である。
公開日・更新日
公開日
2025-07-09
更新日
-