文献情報
文献番号
202419016A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV感染者の妊娠・出産・予後に関するコホート調査を含む疫学研究と情報の普及啓発方法の開発および診療体制の整備と均てん化のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24HB1004
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
吉野 直人(岩手医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 杉浦 敦(武蔵野赤十字病院 産婦人科)
- 田中 瑞恵(国立国際医療研究センター 小児科)
- 喜多 恒和(奈良県総合医療センター 産婦人科)
- 高野 政志(防衛医科大学校 産科婦人科学講座)
- 出口 雅士(神戸大学 医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和8(2026)年度
研究費
25,990,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は将来のHIV母子感染根絶に向け、1)HIV母子感染根絶のための方法を検討し対策の策定・提言をすること、2)HIV感染妊婦およびその児の健康・発達を支援すること、3)HIV母子感染根絶のために将来のHIV感染妊婦を減らすことを目的とする。これまでの全国調査でHIV感染妊婦は毎年数十例程度報告され、近年でも散発的にHIV母子感染症例も報告されている。感染妊婦および母子感染児は稀少性であるため、全国規模での周産期医療および長期予後の情報集積が不可欠である。さらに、稀少性であるが故にHIV母子感染の詳細な認知度は低いと推測されるため、国民に対し母子感染に関する啓発活動を行い、医療従事者にも最新の関連情報を提供することはHIV母子感染根絶に向けた第一歩となる。
研究方法
全国一次調査:産婦人科および小児科施設を対象とした全国一次調査(症例数および臨床背景調査)を郵送にて行った。さらに、産婦人科施設を対象にHIV感染妊婦の診療時の対応と分娩施設の均てん化に関する調査を行った。産婦人科二次調査:産婦人科一次調査での有症例施設に対して産婦人科二次調査を行った。小児科二次調査:小児科一次調査での有症例施設に対して小児科二次調査を行った。統合データベースの構築:産婦人科と小児科のそれぞれの二次調査の臨床情報を統合しデータベースを構築し解析した。コホート調査:コホート調査は、医療者および患者(HIV感染女性)に対して患者とその児の健康調査を行った。啓発活動:啓発対象ごとに情報の内容や媒体を見直して啓発活動を実施し、その方法や効果について検証した。経腟分娩の検討:HIV感染妊婦の経腟分娩を実施した施設で医療者へのインタビュー調査を行い、安全に経腟分娩を行う上でマニュアルに記載する情報を調査した。研究方法評価:長期にわたるHIV母子感染に関する研究内容と成果を歴史的に評価し、今後の研究方法を提案した。
結果と考察
本調査で国内の妊婦の約7割の検査状況を把握できた。HIV感染妊婦の診療は周産期医療圏内で完結させることは困難であることが明らかになった。新規HIV母子感染例の報告はなかった。血中ウイルス量のコントロール良好例での経腟分娩例が増加しつつあることが明らかになった。HIV感染妊婦から出生した児に先天性形態異常や頭部画像異常、発達検査異常例を一定数認めた。予防投薬された児の多くで貧血や好中球減少が報告された。母子感染の啓発資材の効果をアンケートにより検証したところ、内容量がやや過多であるが有用であると考えられた。また、リーフレットの方が小冊子より理解度が高くなる傾向を認めた。マニュアル作成において必要となる項目が明らかになった。医療従事者の不安を解消するための啓発・情報提供が経腟分娩導入施設を増加させる上での課題であると考えられた。全国調査は経年的な継続が必要であり蓄積データの情報共有を評価した。HIV母子感染に関して医療従事者を含む国民全体の意識向上を目指した研究体制の構築が重要であると結論づけた。
結論
HIVによる母子感染がcARTや帝王切開での分娩により十分に予防可能であることが周知されるようになったことで、妊婦におけるHIV検査が妊娠初期の重要な検査のひとつとして認知され、多くの自治体で公的補助もなされ、日本におけるHIV感染妊婦の諸問題に関しての啓発活動が実を結びつつある。その一方で、HIV母子感染は少ない症例数であるが散発しており、HIV感染児の診療体制、HIV母子感染の啓発など改善の余地がある分野も残っている。本研究班は、HIV母子感染予防対策を推進するとともに、これらHIV感染妊婦やHIV感染児に対する諸問題に関しても十分に取り組む必要がある。母子感染根絶に向けた新たな母子感染予防対策の構築と、経腟分娩におけるマニュアル作成は、今後対応すべき課題と考えられる。また梅毒増加と同様にHIV感染妊娠も増加する可能性があり、より注意深く経過を追っていく必要があると考える。コホート研究と横断的研究はいずれも疫学調査であるものの、データの収集の手法は大きく異なるためコホート研究から横断的研究にデータを移行する仕組みの構築は容易ではなかった。しかし、産婦人科・小児科二次調査およびコホート調査のデータを全体としてデータベース化することや質の高いデータの蓄積を行う体制を開始することができた。日本のHIV感染女性およびその出生児に関するデータは本調査が唯一であり貴重であることから、今後も丁寧なデータの蓄積とデータ管理が必要とされる。
公開日・更新日
公開日
2026-10-20
更新日
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