欧米諸国における障害年金を中心とした障害者に係る所得保障制度に関する研究

文献情報

文献番号
201001047A
報告書区分
総括
研究課題名
欧米諸国における障害年金を中心とした障害者に係る所得保障制度に関する研究
課題番号
H22-政策・指定-030
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
百瀬 優(高千穂大学 人間科学部)
研究分担者(所属機関)
  • 小島 晴洋(専修大学 法学部)
  • 福島 豪(関西大学 法学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、①欧米諸国における障害者に係る所得保障制度の現状を調査すること、②その結果をもとにして、日本の制度の課題や問題点を把握すること、③比較の視点から、各制度(特に障害年金)の今後の改善の方向性や選択肢を提示することを主な目的とした。
研究方法
スウェーデン、イタリア、ドイツ、イギリス、フランス、アメリカについて、各国の担当者が、文献・資料を収集し、それをベースに各国の障害年金および関連制度の調査研究を行なった。イタリアとスウェーデンについては、現地調査も実施している。研究代表者は、各担当者の研究成果報告と研究会での全体討議をもとに比較研究を進めた。
結果と考察
まず、各国の障害年金および関連制度の特徴を明確にすることができた。
その結果を踏まえて、欧米諸国における障害者に係る所得保障制度の共通点や相違点を整理した。共通点としては、①社会保険による障害年金が実施されている、②無年金・低年金の障害者を主な対象とする特別な無拠出給付が設けられている、③障害年金の給付対象となる障害が稼得・労働能力との関連で捉えられている、④就労所得がある場合は現金給付が制限される、④高齢の障害者に対する所得保障は老齢年金等で行われる、などが挙げられる。一方、相違点も多く存在するが、主なものとして、①障害年金を年金保険で運営する場合と医療保険で運営する場合があること、②社会保険による障害年金の果たす役割が各国で異なることなどが挙げられる。
また、欧米諸国の制度と日本の制度を比較した場合には、欧米諸国の制度の共通点が目立ち、日本の制度がそれとは異なる仕組みとなっていることが分かった。大きな相違点として、障害年金の給付対象となる障害の捉え方の違いや障害年金とも一般的な公的扶助とも異なる無拠出給付の有無が挙げられる。
結論
本研究で行なった欧米諸国の障害者に係る所得保障制度の構造の把握は、これからの障害年金および関連制度の企画立案の基礎資料になると思われる。また、諸外国の制度設計や改革動向を参考にすれば、日本では、障害認定の基準や方法、無拠出給付のあり方、障害年金と老齢年金の関係、障害年金の給付水準、年金額加算と障害者手当の見直し、障害年金受給者の老後保障、一時的な離職・転職時の保険事故への対応などが今後の検討課題になると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2011-06-02
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201001047C

成果

専門的・学術的観点からの成果
文献調査と現地調査を通じて、欧米諸国の障害年金および関連制度の特徴を明確にすることができた。ついで、欧米諸国の制度の共通点や相違点を整理した。最後に、日本との比較検討を通して、新たな視点から、日本の制度の課題や問題点を把握し、改善の方向性や選択肢を提示した。障害者に係る所得保障制度は、障害者施策のなかで最も重要な仕組みの一つであるにもかかわらず、これまでのところ研究蓄積が極めて少なかった。それゆえ、本研究は、この分野での基礎研究として意義があり、今後の発展的な研究の前提資料としても活用されうる。
臨床的観点からの成果
ガイドライン等の開発
その他行政的観点からの成果
海外調査後に、研究代表者と分担者が、厚労省年金局内での報告会に出張し、スウェーデンとイタリアの障害年金の概要と特徴や改革動向について説明した。また、欧米諸国の障害者に係る所得保障を取り扱った本研究は、今後の障がい者制度改革論議や年金改革論議に資するとともに、日本の障害年金および関連制度の企画立案の参考資料としても活用可能である。なお、2012年10月の障害者政策委員会第2小委員会にて、研究代表者が、専門委員として、本研究の結果を踏まえて、障害者の所得保障についての提案、発議を行った。
その他のインパクト
研究事業実施中に、研究代表者と協力者が、日本年金学会と社会政策学会にて研究成果の途中経過を報告した。また、研究事業終了後に、研究代表者が、障害者団体や社会保険労務士の勉強会に招かれて、本研究の成果について講演を行った。2011年度には、研究代表者が厚生労働省年金局国際年金課の障害年金の運用体制に関する勉強会に参加し、ドイツ及びスウェーデンの障害認定に関する調査研究に協力した。

発表件数

原著論文(和文)
3件
福島豪「障害と社会保険―若年障害者の所得保障の日独比較」菊池馨実編『社会保険の法原理』法律文化社 百瀬優の『自立と福祉』(庄司洋子他編)及び『多元的共生社会の構想』(菅沼隆他編)現代書館の各論文
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
4件
百瀬優『日本年金学会誌』No.30、『月刊社労士』2012年8月号、『年金時代』No.589、『週刊社会保障』No.2747掲載の各論文
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
松本由美「フランスにおける障害者の所得保障」第121回社会政策学会 2010年10月 百瀬優「障害年金に関する論点整理」第30回日本年金学会 2010年10月
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2014-05-21
更新日
2014-06-09

収支報告書

文献番号
201001047Z