文献情報
文献番号
202417049A
報告書区分
総括
研究課題名
将来的な社会参加の実現に向けた補装具費支給のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24GC1015
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
中村 隆(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所義肢装具技術研究部)
研究分担者(所属機関)
- 阿久根 徹(国立障害者リハビリテーションセンター 病院(併任研究所))
- 陳 隆明(兵庫県立福祉のまちづくり研究所)
- 大島 隆司(兵庫県立福祉のまちづくり研究所)
- 横井 剛(横浜市総合リハビリテーションセンター 医療部)
- 横山 修(社会福祉法人神奈川県総合リハビリテーション事業団 診療部)
- 田中 洋平(JR東京総合病院 リハビリテーション科)
- 加々良 敦子(三ツ本 敦子)( 国⽴障害者リハビリテーションセンター(研究所) 義肢装具技術研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和8(2026)年度
研究費
10,885,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、高機能補装具の支給が利用者の社会参加を促進し、社会全体として正の費用対効果があること、及びそれを実現するために必要な因子のエビデンスを得ることを目的とする。なお対象とする補装具は義肢・装具・車椅子とする。
補装具部品の進歩は著しく、特にコンピュータによる電子制御部品を用いた高機能補装具は利用者の安全と安心を確保しつつ社会参加の機会を各段に広げている。しかし、それらは高額のため、公費を財源とする障害者総合支援法では、補装具費の支給が難しい状況にある。その理由として、その適応基準や有効性の評価指標が不明瞭であり、費用対効果が明確でないといったエビデンス不足が指摘されている。そのため行政も支給の可否判断を躊躇する状態にある。
一方、海外では高機能義肢の費用対効果に関して、高機能義肢を支給することにより就労機会が増え、障害者が納税者となることで社会全体としてはコスト減となること、あるいは高機能義肢を支給すれば利用者が安全な生活を送ることが可能となり、非使用のリスクにより生じる医療・社会保障費が軽減するとの報告がある。例えばLiuらは、膝折れしにくい高機能電子制御膝継手と非電子制御膝継手を使用した大腿義足使用者の比較で、転倒の治療に要する医療費が異なり、高機能電子制御膝継手を支給すれば、一人当たり年間$3,676 が削減されると報告している。(Liu, H. H. et al, Economic Value of Advanced Transfemoral Prosthetics. Santa Monica, CA: RAND Corporation, 2017.)。我が国ではこのような費用対効果に関する研究は渉猟したが見当たらず、高機能補装具の支給実態についても明らかでない。さらに、支給決定のための試用評価として、借受け制度はほとんど運用されていない。
この課題の解決には、現状での高機能補装具の使用実態を把握し、適応可能な障害者に対して一時的に補装具を貸与し、社会参加における補装具の機能と障害者の経済的・社会的効果を評価する実証実験から得られるエビデンスを基に、補装具支給制度へ組み入れることが必要である。
補装具部品の進歩は著しく、特にコンピュータによる電子制御部品を用いた高機能補装具は利用者の安全と安心を確保しつつ社会参加の機会を各段に広げている。しかし、それらは高額のため、公費を財源とする障害者総合支援法では、補装具費の支給が難しい状況にある。その理由として、その適応基準や有効性の評価指標が不明瞭であり、費用対効果が明確でないといったエビデンス不足が指摘されている。そのため行政も支給の可否判断を躊躇する状態にある。
一方、海外では高機能義肢の費用対効果に関して、高機能義肢を支給することにより就労機会が増え、障害者が納税者となることで社会全体としてはコスト減となること、あるいは高機能義肢を支給すれば利用者が安全な生活を送ることが可能となり、非使用のリスクにより生じる医療・社会保障費が軽減するとの報告がある。例えばLiuらは、膝折れしにくい高機能電子制御膝継手と非電子制御膝継手を使用した大腿義足使用者の比較で、転倒の治療に要する医療費が異なり、高機能電子制御膝継手を支給すれば、一人当たり年間$3,676 が削減されると報告している。(Liu, H. H. et al, Economic Value of Advanced Transfemoral Prosthetics. Santa Monica, CA: RAND Corporation, 2017.)。我が国ではこのような費用対効果に関する研究は渉猟したが見当たらず、高機能補装具の支給実態についても明らかでない。さらに、支給決定のための試用評価として、借受け制度はほとんど運用されていない。
この課題の解決には、現状での高機能補装具の使用実態を把握し、適応可能な障害者に対して一時的に補装具を貸与し、社会参加における補装具の機能と障害者の経済的・社会的効果を評価する実証実験から得られるエビデンスを基に、補装具支給制度へ組み入れることが必要である。
研究方法
令和6年度は下記4項目を行った。
① 高機能補装具の調査
・一般社団法人 日本福祉用具・生活支援用具協会(JASPA)義肢装具部会企業に対する有効活用事例調査および研究分担者の所属施設における後方視的調査を行い、実使用例を抽出する。
・電動車椅子の機能について、メーカーカタログより、製品名、特徴、メーカーが想定している対象者、機構、回転半径や走行性能などについて整理する。また、特例補装具としての支給実態を全国の更生相談所に対してアンケート調査した。
②高機能補装具の適応条件と有効活用
本研究参加施設の実務者会議を開催する。
③ 高機能補装具の実証実験
被験者のリクルートと実験準備を行う。
④ 海外文献調査
電子制御膝継手と高機能電動ハンドの費用対効果に関する海外文献を収集し分析する。
① 高機能補装具の調査
・一般社団法人 日本福祉用具・生活支援用具協会(JASPA)義肢装具部会企業に対する有効活用事例調査および研究分担者の所属施設における後方視的調査を行い、実使用例を抽出する。
・電動車椅子の機能について、メーカーカタログより、製品名、特徴、メーカーが想定している対象者、機構、回転半径や走行性能などについて整理する。また、特例補装具としての支給実態を全国の更生相談所に対してアンケート調査した。
②高機能補装具の適応条件と有効活用
本研究参加施設の実務者会議を開催する。
③ 高機能補装具の実証実験
被験者のリクルートと実験準備を行う。
④ 海外文献調査
電子制御膝継手と高機能電動ハンドの費用対効果に関する海外文献を収集し分析する。
結果と考察
実態調査では、総合支援法においても高機能補装具が支給されている事例があることを把握した。また、①練習用仮義肢の練習とは別に高機能義肢の練習が必要なこと、②高機能義肢部品のみの評価ではなく、練習用仮義肢で使用していた義肢との比較評価が必要なこと、③ADLだけでなくQOLの観点での評価が必要なこと、が各施設より指摘されていた。更生相談所の特例補装具として支給された車椅子・電動車椅子の調査では、より具体的な使用場面について記載されていた。海外文献調査では、電子制御膝継手と電動ハンドの費用対効果に関する論文数と発表年を比べると、電子制御膝継手のほうが早い段階で費用対効果の研究が発表されており、また論文数も多かった。
結論
高機能補装具の使用実態に関し、関連企業および研究参加施設での実態調査を行い、高機能補装具の使用者像を明らかにした。障害者支援法における支給は多くないものの、電子制御膝継手については支給実態があることを把握した。就労は支給のための十分条件であった。支給を決定しやすくするためには使用者像から高機能義肢の支給基準を作成することが必要である。
電動車椅子の調査では特例補装具の支給理由としてより詳細な使用場面が収集された。
高機能補装具の支給には、障害の現症、生活環境その他真にやむを得ない事情及び就労者若しくは就学のために真に必要と認められる場合、であることが必要である。各判定機関においては、判定例も少なく、その判断に苦慮していることも予想される。本調査では、一部ではあるが就労や就学を含めた支給実態を示すことができた。このことが行政における支給判定の参考となることが期待される。
電動車椅子の調査では特例補装具の支給理由としてより詳細な使用場面が収集された。
高機能補装具の支給には、障害の現症、生活環境その他真にやむを得ない事情及び就労者若しくは就学のために真に必要と認められる場合、であることが必要である。各判定機関においては、判定例も少なく、その判断に苦慮していることも予想される。本調査では、一部ではあるが就労や就学を含めた支給実態を示すことができた。このことが行政における支給判定の参考となることが期待される。
公開日・更新日
公開日
2025-07-18
更新日
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