健康と医療の地域格差とその収斂に関する経済分析と政策評価

文献情報

文献番号
201001029A
報告書区分
総括
研究課題名
健康と医療の地域格差とその収斂に関する経済分析と政策評価
課題番号
H22-政策・一般-011
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
姉川 知史(慶應義塾大学 大学院経営管理研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
1,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 医療の地域格差について次の問題を分析する。第1に,人口,疾病構造,医療資本の地域格差にもかかわらず,平均余命等で測った医療の成果の地域格差は小さいという逆説である。第2は,地域格差の長期的収斂の有無とその速度である。第3は,長期にわたる政策的介入によって,医療資本の地域格差が解消されない原因と政策の妥当性の検討である。

研究方法
 この研究は2年計画で,医療の地域格差について次の分析を行う。初年度の平成22年度は,第1に,健康水準の各種の指標を再検討し,それと医療サービス,それ以外の要因によって決定される関係を,『国民生活基礎調査』等の個票データを使用した統計的研究によって確認した。第1に健康水準の決定要因の分析を行った。一定時点(t)の個人(h)の健康状態(y),医療保険の種類(i), さらに地域,年齢,性別,世帯要因,所得等のデータ(X)の関係式を推定し,分析した。さらに,経済成長論の収斂(convergence)理論を採用し,地域格差の水準と収斂に関する統計分析を行う。それにより全国平均からの乖離が大きい特異地域を特定し,その背景,原因について事例分析を行った。さらに,1980年以降の一人当たり医療費の分散の長期動向を分析した。

結果と考察
 国民生活基礎調査の回答者は健康の5段階を明確に区別して回答していた。健康水準の決定要因としては年齢,所得が明確に示された。主観的健康は年齢とともに,50歳代から低下することが判明した。都道府県による地域差は予想よりも小さかった。さらに分割して市町村レベルにすると,サンプル数が少なく分析が困難になる問題が確認された。
 老人・入院の1人あたり費用(C/N)は都道府県間で長期に収斂したことがわかった。また, 1人あたり費用の収斂は,C/NとD/Nの共分散の減少によって説明される。2000年の介護保険の導入によって,老人医療費の地域格差に影響があったことが判明した。
結論
 健康水準は年齢と所得に影響された。また,国民生活基礎調査による健康水準の分析の有効性が示された。しかし,健康水準の多変数による分析,さらに健康水準と,疾病構造,医療資本,世帯構成,世帯所得,所得分配との関係を分析する必要がある。また,1人あたり費用の長期的収斂が起きていることが示され,要因別に分解する方法の有効性が確認されたが,2000年以降の影響を分析するにはデータを延長する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2011-06-02
更新日
-

収支報告書

文献番号
201001029Z