文献情報
文献番号
202417022A
報告書区分
総括
研究課題名
摂食障害に対する効率的かつ効果的な治療方法及び支援方法の開発に資する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24GC1013
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
中里 道子(学校法人国際医療福祉大学 医学部精神医学)
研究分担者(所属機関)
- 吉内 一浩(東京大学 医学部附属病院)
- 河合 啓介(国立研究開発法人国立国際医療研究センター国府台病院心療内科)
- 作田 亮一(獨協医科大学医学部 越谷病院 子どものこころ診療センター)
- 竹林 淳和(浜松医科大学 医学部)
- 安藤 哲也(国際医療福祉大学医学部心療内科)
- 原田 朋子(大阪公立大学 医学部)
- 川崎 洋平(埼玉医科大学 医学部)
- 髙倉 修(九州大学病院 心療内科)
- 細田 真澄(橘 真澄)(千葉大学 総合安全衛生管理機構)
- 久我 弘典(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 認知行動療法センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
8,462,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
摂食障害は、肥満恐怖、厳格な食事制限や代償行動を呈する難治の精神疾患であり、患者数が急増している。中でも神経性やせ症(AN)は若年女性に好発し、男性、中高年発症例も多く、重篤な身体合併症、半数以上にうつ病や神経発達症等の併発精神障害を伴い、遷延化、重症化し、入院期間は長期化し、再入院率も高く、精神疾患の中で最も致死率が高い。標準的な治療を日本で実装化し、重症度や併発症に対応可能な最適化された治療を提供し、標準的治療マニュアルを用いた研修システムの構築が急務である。しかし、標準的治療のエビデンス、研修システムが確立されていない。また、質の担保された治療最適化、地域包括ケア体制構築に向けた具体的な提言をすることができていない。これらの状況を鑑み、すべての摂食障害患者が標準的、適切な治療や支援を受けられるために、「摂食障害に対する標準的な治療方法(心理的アプローチと身体的アプローチ)とその研修方法の開発及び普及に資する研究」(R3~R5年度)で開発されたANの標準的治療マニュアルの実装化と、これらを用いた標準的治療の多職種研修システム構築を目指す。
研究方法
すべての研究は、ヘルシンキ宣言(世界医師会、2008年改訂)および「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」を遵守し実施される。
1.MANTRAランダム化研究、2.ANに対するCBT-Eランダム化研究、3.効率的かつ効果的な神経性やせ症の身体治療マニュアルの開発研究、4.小児摂食障害の治療と対応マニュアル作成及び検討に関する研究はそれぞれ連携、協力し、多職種研修システムの構築研究を行う。最終年度までに、多職種を対象に研修会を開催し、治療指針を全国に普及する。
1.MANTRAランダム化研究、2.ANに対するCBT-Eランダム化研究、3.効率的かつ効果的な神経性やせ症の身体治療マニュアルの開発研究、4.小児摂食障害の治療と対応マニュアル作成及び検討に関する研究はそれぞれ連携、協力し、多職種研修システムの構築研究を行う。最終年度までに、多職種を対象に研修会を開催し、治療指針を全国に普及する。
結果と考察
1. モーズレイ神経性やせ症治療(MANTRA)ランダム化研究
令和6年度末までに組み入れが完了した症例数は41例(目標症例数62例、66.1%)。
完遂件数は31例、脱落件数は6例であった。
令和6年度の組み入れ数はうち10例。完遂件数は6例、脱落件数は0例であった。
MANTRA介入を完遂した対象者、家族に対して、アンケート調査を行った結果、良好な治療関係、治療に対する積極的な取り組み、摂食障害の症状に対する理解、規則的な食習慣の改善が得られた、家族が摂食障害患者の症状に対する対応ができるようになった、といった肯定的な評価が得られた。
2. 神経性やせ症に対する強化された認知行動療法(CBT-E)のランダム化研究
令和6年度末までに CBT-E群17例, TAU群15例の合計32例の組入が完了した。。令和7年3月末時点で8例が40週の治療期間を完了、17例が20週の中間評価を完了した。
3. 効率的かつ効果的な神経性やせ症の身体治療マニュアルの開発研究
AN患者において、治療開始時BMI13以上をRS発現の低リスク群として開始エネルギー摂取量を一律1400kcalとした治療プログラムを施行する。主要評価項目をRSの発現(低リン血症)の有無、副次的評価項目を治療開始後の体重増加とし、治療プログラムによる安全性・効率性について検討する。
4. 小児摂食障害の治療と対応マニュアルの作成及び検証
(1)小児摂食障害プライマリー診療マニュアルの作成を継続した。小児摂食障害を多く治療経験のあるエキスパートの意見を集約し、デルファイ法に基づきエキスパートコンセンサスを編集した。70%の合意が得られたものをエキスパートコンセンサスとした。CQは9つの項目が選ばれた。完成に向かって編集を継続している。
(2)令和5年度に作成した「はじめてのFBT実践ガイド」の内容を再検討した。FBT研修に参加経験のある医師、心理士等を対象にアンケート調査を実施、意見を集約し、実践ガイドの改定を行い完成し、摂食障害情報ポータルサイト(専門職)に公開した。
5. 摂食障害研修システムの構築研究
FBTの原則に基づいた家族への対応、成人の神経性やせ症に対するCBT-E(AN CBT-E)とMANTRAのパイロット研修を企画、開催し、その効果を評価し、改善点を調べた。研修は90分の対面講義形式で実施された。FBT研修には27名、MANTRA研修会には54名、AN-CBT-E研修会には30名が参加した。FBT研修前後でFBTの原則の理解が増加、2/3が課題が解決、MANTRA研修後に80%がテキストを理解し、85%が治療への意欲、22が自信、39%が知識を得たと回答した。さらにCBT研修前後で治療の自信、知識が増加し、2/3が研修に満足と回答した。研修の改善点としてロールプレイやケース検討などより実践的内容が求められた。
令和6年度末までに組み入れが完了した症例数は41例(目標症例数62例、66.1%)。
完遂件数は31例、脱落件数は6例であった。
令和6年度の組み入れ数はうち10例。完遂件数は6例、脱落件数は0例であった。
MANTRA介入を完遂した対象者、家族に対して、アンケート調査を行った結果、良好な治療関係、治療に対する積極的な取り組み、摂食障害の症状に対する理解、規則的な食習慣の改善が得られた、家族が摂食障害患者の症状に対する対応ができるようになった、といった肯定的な評価が得られた。
2. 神経性やせ症に対する強化された認知行動療法(CBT-E)のランダム化研究
令和6年度末までに CBT-E群17例, TAU群15例の合計32例の組入が完了した。。令和7年3月末時点で8例が40週の治療期間を完了、17例が20週の中間評価を完了した。
3. 効率的かつ効果的な神経性やせ症の身体治療マニュアルの開発研究
AN患者において、治療開始時BMI13以上をRS発現の低リスク群として開始エネルギー摂取量を一律1400kcalとした治療プログラムを施行する。主要評価項目をRSの発現(低リン血症)の有無、副次的評価項目を治療開始後の体重増加とし、治療プログラムによる安全性・効率性について検討する。
4. 小児摂食障害の治療と対応マニュアルの作成及び検証
(1)小児摂食障害プライマリー診療マニュアルの作成を継続した。小児摂食障害を多く治療経験のあるエキスパートの意見を集約し、デルファイ法に基づきエキスパートコンセンサスを編集した。70%の合意が得られたものをエキスパートコンセンサスとした。CQは9つの項目が選ばれた。完成に向かって編集を継続している。
(2)令和5年度に作成した「はじめてのFBT実践ガイド」の内容を再検討した。FBT研修に参加経験のある医師、心理士等を対象にアンケート調査を実施、意見を集約し、実践ガイドの改定を行い完成し、摂食障害情報ポータルサイト(専門職)に公開した。
5. 摂食障害研修システムの構築研究
FBTの原則に基づいた家族への対応、成人の神経性やせ症に対するCBT-E(AN CBT-E)とMANTRAのパイロット研修を企画、開催し、その効果を評価し、改善点を調べた。研修は90分の対面講義形式で実施された。FBT研修には27名、MANTRA研修会には54名、AN-CBT-E研修会には30名が参加した。FBT研修前後でFBTの原則の理解が増加、2/3が課題が解決、MANTRA研修後に80%がテキストを理解し、85%が治療への意欲、22が自信、39%が知識を得たと回答した。さらにCBT研修前後で治療の自信、知識が増加し、2/3が研修に満足と回答した。研修の改善点としてロールプレイやケース検討などより実践的内容が求められた。
結論
本研究で開発、検証された治療マニュアル、研修システムを発展、普及することで、摂食障害の治療者数の拡大、対応力の向上と治療施設の増加、治療の均てん化が期待される。
公開日・更新日
公開日
2025-06-26
更新日
-