新型コロナウイルス感染に起因すると考えられる精神症状に関する疫学的検討と支援策の検討に資する研究

文献情報

文献番号
202417002A
報告書区分
総括
研究課題名
新型コロナウイルス感染に起因すると考えられる精神症状に関する疫学的検討と支援策の検討に資する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22GC1005
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
中尾 智博(九州大学大学院医学研究院 精神病態医学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 村山 桂太郎(九州大学病院)
  • 高橋 晶(筑波大学 医学医療系 災害・地域精神医学)
  • 福田 治久(九州大学 大学院医学研究院)
  • 萱間 真美(国立健康危機管理研究機構 国立看護大学校)
  • 久我 弘典(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 認知行動療法センター)
  • 下野 信行(九州大学 大学病院 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
9,349,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、COVID-19の罹患者に出現した精神症状 (以下、罹患後精神症状と略す)に対して支援に結びつけるためのガイドラインの作成への提言を行うことであった。
研究方法
和6年度は以下1.〜3.の調査、すなわち、1. 日本におけるCOVID-19罹患後に新規発症した精神症状に対する薬物治療の導入時期・使用薬剤・継続期間などのtrajectoriesを記述的に調査する、2.本邦から報告されたエビデンスから「COVID-19罹患後に新規に発生した精神疾患は何か」、「COVID-19罹患後に悪化した精神疾患は何か」を検討するとともに、現時点における日本の罹患後精神症状について海外論文との知見と比較する、3.罹患後精神症状を有する者に対する自治体や保健所、精神保健福祉センター等における支援体制の現状把握と好事例の収集、を実施した。
結果と考察
それぞれの結果は、1. ある一つの自治体で発生した罹患後精神症状の205名中、不眠症が最も多く(71例)、次いで症状性を含む器質性精神障害60例、気分障害31例と続き、統合失調症や神経症性障害・ストレス関連障害の診断を認め、治療継続期間は疾患や患者ごとにばらつきがみられた、2. 本邦における質の高いエビデンスからは臨床疑問を解決するには至らなかったが、罹患後精神症状の種類(不安、抑うつ、倦怠感、認知機能の問題、睡眠障害)は国際的な知見と概ね一致していた、3. 保健所や精神保健福祉センターが対応した罹患後精神症状は不安やうつに関する対応が上位を占め、対応として相談者とのラポール形成や人的資源へのつなぎが重要である、というものであった。本研究結果は、日本国内の平均的な罹患後精神症状への治療方法に関する情報と臨床医にとって有益なデータになり得る。しかし、罹患後精神症状への治療に関する質の高い科学的根拠が現時点では不足しており、今後の厳密な臨床研究による検証が強く求められる。将来の未知の感染症への備えとして、平常時から患者の臨床データや治療経過を容易に蓄積でき、かつ速やかに開示されるシステムの構築が必要と考えられた。
結論
感染症を含めた自然災害発生後の住民への長期的なメンタルサポートが可能となるように、精神保健福祉センタースタッフの災害メンタルヘルスに対する専門的対応能力を強化するとともに、上述したデータを参照でき、それを国民に還元できるようなシステムの構築が望まれる。

公開日・更新日

公開日
2025-06-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2025-06-26
更新日
-

文献情報

文献番号
202417002B
報告書区分
総合
研究課題名
新型コロナウイルス感染に起因すると考えられる精神症状に関する疫学的検討と支援策の検討に資する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22GC1005
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
中尾 智博(九州大学大学院医学研究院 精神病態医学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 村山 桂太郎(九州大学病院)
  • 高橋 晶(筑波大学 医学医療系 災害・地域精神医学)
  • 福田 治久(九州大学 大学院医学研究院)
  • 萱間 真美(国立健康危機管理研究機構 国立看護大学校)
  • 久我 弘典(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 認知行動療法センター)
  • 下野 信行(九州大学 大学病院 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、COVID-19の罹患者に出現した精神症状に対して支援に結びつけるためのガイドラインの作成への提言を行うことであった。
研究方法
以下1.〜3.の調査を実施した。
1. 国内におけるCOVID-19罹患に起因すると考えられる気分障害や不安障害等の精神疾患の有病率に関する医療レセプトデータを用いた調査
2. 2.COVID-19罹患に起因すると考えられる精神症状の疫学研究について国内外の文献レビュー
3. COVID-19罹患後に起因した精神症状を有する者に対する自治体や保健所、精神保健福祉センター等における支援体制の現状把握と好事例の収集
結果と考察
1. 呼吸器感染症(RTI)罹患者に比べたCOVID-19罹患者の精神症状の発生状況は,F0では外来症例における従来株流行期(オッズ比:3.38,[95%信頼区間:1.61-7.09])に,F2では外来症例における従来株流行期(5.79 [1.37-5.79])に,F3では入院症例における従来株流行期(2.04 [1.37-5.79])およびデルタ株流行期(2.08 [1.02-4.25])において高かった.感染後3か月以内に発生した精神障害の発生率はワクチン未接種者の場合,すべての精神障害の発生割合はデルタ期間中が最も高く(器質性精神障害:9.9%,精神病性障害:9.2%,気分障害:4.8%,不安障害:2.6%,不眠症:13.2%),オミクロンBA.5期間中が最も低かった(器質性精神障害:4.8%,精神病性障害:3.2%,気分障害:2.0%,不安障害:1.7%,不眠症:5.9%)。
2. 系統的レビューにより論文を選定し、適格基準を満たす4報の論文を抽出した。「COVID-19罹患後に新規に発生した精神疾患は何か」という臨床疑問対して、精神科既往のない患者を対象とし且つDSMあるいはICDにより精神科診断をした論文が0報であったため、明らかにすることはできなかった。「COVID-19罹患後に悪化した精神疾患は何か」という臨床疑問に対して、統合失調症はCOVID-19の罹患により症状が悪化する可能性があることが示唆された。
3. 対象施設は全国69の精神保健福祉センターであり、63センターより回答を得た。調査実施時点である2022年4月から6月の時点でCOVID-19専用の相談窓口を有していたのは23センター(36.5%)であった。対応の概要は、2021年度の相談件数は372,262件であり、うち新型コロナウイルス感染症に係る相談件数は23,960件(コロナ罹患後症状に係る相談を含む)であった。対応した罹患後症状としては、「不安」が40センター(63.5%)、「倦怠感」が35センター(55.6%)、「うつ」が33センター(53.4%)と多かった。また、罹患後症状に関連する相談内容として「罹患後症状の経過や予後に関する不安」を挙げたセンターが40ヶ所(63.5%)、「家族等の罹患後症状に関する不安」を挙げたセンターが30ヶ所(47.7%)と多かった。4機関にてインタビュー調査を行い、好事例をまとめた。
結論
今回の調査は、日本国内の平均的な罹患後精神症状への治療方法に関する情報,臨床医にとって有益なデータになりえると考えられた。しかし、罹患後精神症状への治療に関する質の高い科学的根拠が現時点では不足しており、今後の厳密な臨床研究による検証が強く求められる。未知の感染症への備えとして、平常時から患者の臨床データを蓄積でき、かつ速やかに開示されるシステムの構築が必要と考えられた。感染症を含めた自然災害発生後の住民への長期的なメンタルサポートが可能となるように、精神保健福祉センタースタッフの災害メンタルヘルスに対する専門的対応能力を強化するとともに、上述したデータを参照でき、それを国民に還元できるようなシステムの構築が望まれる。

公開日・更新日

公開日
2025-06-26
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202417002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
COVID-19罹患者における精神症状の発生状況は、呼吸器感染症罹患者と比べて、高いことを明らかにした。またワクチン接種が精神症状の発生を低下させる可能性が示唆された。成果は、Brain Behavior and Immunity誌等に掲載された。系統的レビューからは、COVID-19罹患後に統合失調症の症状が悪化する可能性があることが示唆された。
臨床的観点からの成果
精神保健福祉センターへの罹患後症状に関連する相談内容は「罹患後症状の経過や予後に関する不安」が40ヶ所(63.5%)と最も多かった。今回の調査は、日本国内の平均的な罹患後精神症状への治療方法に関する情報,臨床医にとって有益なデータになりえると考えられた。
ガイドライン等の開発
特記事項無し。
その他行政的観点からの成果
未知の感染症への備えとして、平常時から患者の臨床データを蓄積でき、かつ速やかに開示されるシステムの構築が必要であることを明らかにした。
その他のインパクト
特記事項無し。

発表件数

原著論文(和文)
14件
原著論文(英文等)
18件
その他論文(和文)
9件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
52件
学会発表(国際学会等)
8件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
NAKAO Tomohiro, MURAYAMA Keitaro, FUKUDA Haruhisa et al.
Survey of psychiatric symptoms among inpatients with COVID-19 using the Diagnosis Procedure Combination data and medical records in Japan.
Brain, Behavior, & Immunity – Health.  (2023)
10.1016/j.bbih.2023.100615
原著論文2
Murata F, Maeda M, Murayama K et al.
Incidence of post-COVID psychiatric disorders according to the periods of SARS-CoV-2 variant dominance: The LIFE study.
Journal of Psychiatric Research ,  (174) , 12-18  (2024)
https://doi.org/10.1016/j.jpsychires.2024.04.010
原著論文3
Murata F, Maeda M, Murayama K et al.
Associations between COVID-19 vaccination and incident psychiatric disorders after breakthrough SARS-CoV-2 infection: The VENUS Study.
Brain Behavior and Immunity ,  (117) , 521-528  (2024)
https://doi.org/10.1016/j.bbi.2024.02.018
原著論文4
So Sugita, Kotone Hata, Krandhasi Kodaiarasu et al.
Psychological Treatments for the Mental Health Symptoms Associated With COVID-19 Infection: A Scoping Review
Psychiatry and Clinical Neuroscinece Reports.  (2024)
doi: 10.1002/pcn5.223
原著論文5
Kayama M, Sudo K, Kamata K et al.
Capacity development of nursing professionals for the next pandemic: Nursing education, on-the-job training, and networking
Global Health & Medicine  (2025)
doi: 10.35772/ghm.2025.01019

公開日・更新日

公開日
2025-06-26
更新日
-

収支報告書

文献番号
202417002Z