独居認知症高齢者等の地域での暮らしを安定化・永続化するための研究

文献情報

文献番号
202416003A
報告書区分
総括
研究課題名
独居認知症高齢者等の地域での暮らしを安定化・永続化するための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22GB1003
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
粟田 主一(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 認知症未来社会創造センター)
研究分担者(所属機関)
  • 岡村 毅(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) 自立促進と精神保健研究チーム)
  • 津田 修治(東京健康長寿医療センター研究所 福祉と生活ケア研究チーム)
  • 石山 麗子(国際医療福祉大学大学院 医療福祉学研究科)
  • 涌井 智子(東京都健康長寿医療センター研究所 福祉と生活ケア研究チーム)
  • 井藤 佳恵(東京都健康長寿医療センター研究所 福祉と生活ケア研究チーム)
  • 堀田 聰子(慶應義塾大学 大学院健康マネジメント研究科)
  • 大塚 理加(国立研究開発法人防災科学技術研究所 災害過程研究部門)
  • 菊地 和則(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 福祉と生活ケア研究チーム)
  • 桜井 良太(東京都健康長寿医療センター研究所 社会参加とヘルシーエイジング研究チーム)
  • 稲垣 宏樹((財)東京都高齢者研究・福祉振興財団 東京都老人総合研究所 自立促進と介護予防研究チーム)
  • 川越 雅弘(公立大学法人埼玉県立大学 大学院保健医療福祉学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症政策研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
11,943,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
独居認知症高齢者等の尊厳ある地域生活の継続と安定化に関する科学的エビデンスを集積するとともに,多様な関係者向けのガイドと自治体向け手引き(改訂版)を作成する.
研究方法
13の分担研究課題を設定して分担研究を実施するとともに,59項目のResearch Question(RQ)を設定して文献レビューを行いエビデンスブックと自治体向け手引きを作成した.
結果と考察
1)認知症疾患医療センターの診断後支援に関する研究:認知症疾患医療センターの実態調査,事例分析,文献レビューを踏まえ,かつ本研究班で作成した自治体向け手引きとの整合性を考慮して,「認知症疾患医療センターにおける独居認知症高齢者の診断後支援ガイド」を作成した.2)生活支援ネットワークを構築する地域拠点に関する研究:大都市住宅地に設置した地域拠点をベースとするチームオレンジ活動の参与研究によって、チームオレンジが独居認知症高齢者等の地域での暮らしを安定化・永続化するための重要な方法であることを示した。3)プライマリケアにおける独居認知症高齢者等への支援に関する研究:独居認知症高齢者の訪問看護で「非常に重要」と判断した18項目のチェックリストとそれを活用するための手引きを作成した.4)独居認知症高齢者等へのケアマネジメントに関する研究:独居認知症高齢者に対して想定される支援項目73項目をもとに、エキスパートレビューを通じて独居認知症高齢者に対するケアマネジメント・ガイドを作成した。5)地域在住の独居認知症高齢者の家族支援に関する研究:別居介護における安否確認や生活管理の困難性、災害・パンデミック時の脆弱性、制度的支援の限界などが明らかにするとともに,独居認知症高齢者の家族にとっての地域環境の重要性を示した。「一人暮らしの認知症高齢者を支える家族のためのガイド」と「支援者のための家族支援のガイド」を作成した。6)複雑困難状況にある独居認知症高齢者等への支援に関する研究:認知症初期集中支援推進事業と高齢者精神保健事業の対象者を比較分析して、認知症以外の精神疾患をもつ人たちが排除されない仕組みとして、地域精神科コンサルテーション・リエゾン・サービスを提案した。7)独居認知症高齢者等の社会参加促進に関する研究:軽度認知症の人のスマホ利用割合は33.8%で、現在のところは連絡手段としての利用が大半であるが、認知機能をサポートするツールとして活用することによって社会参加を促進するツールとなり得ることを示した。8)独居認知症高齢者等の災害対策に関する研究:マンション管理員を対象とする調査から、災害時要配慮者の名簿作成を行っている分譲マンションは1割程度であることを示し,その促進のため管理組合向けの災害時要配慮者対応マニュアルを作成した。9)独居認知症高齢者等の行方不明対策に関する研究:全国市町村の調査によって、独居認知症高齢者の行方不明対策と重要と考えられる事業は、5領域に類型化されることを示した。10)見守り支援に資するテクノロジーに関する研究:独居認知症高齢者を介護する家族に対するインターネット調査から、複数の方法を用いた見守りが介護者の心理的負担を軽減すること、電気使用量のモニタリング事例のデータ分析から認知症を早期に発見できる可能性があることが示した。11)KDBシステム等を用いた自治体事業の質の評価に関する研究:市町村自治体では、KDBデータと地域調査の連結データを用いることで独居認知症高齢者の生活実態の解析が可能になることを示した。12)介護保険データを用いたサービス及び地域システムの質の評価に関する研究:既存の公的資料の分析から、市町村において認知症施策を担う介護部門と成年後見制度利用促進を担う障害・福祉部門が分断されていること、「地域資源の見える化」と「地域資源の機能別整理」を図ることによって、個別支援に関わるマネジメント担当者、地域づくりに関わる社協担当者、各種相談に対応する地域包括支援センター等の課題解決力の向上が図られること示した。13)独居認知症高齢者の消費者被害の実態把握に関する研究: 東京都内の居宅介護支援専門員が勤務する事業所の悉皆調査によって,①事業所の5割が過去1年間に独居認知症高齢者に対する「強引な訪問販売・リフォーム詐欺」、4割が「特殊詐欺」を経験していること、②「特殊詐欺」の手口ではオレオレ詐欺、キャッシュカード詐欺、還付金詐欺、預貯金詐欺、架空領域詐欺の順で多いこと、③事業所種別では地域包括支援センターが最も高い頻度で事例を経験していることを示した。
結論
分担研究の成果を統合するとともに、RQを設定して文献レビューを行い、エビデンスブックと自治体向け手引き「独居認知症高齢者等が尊厳ある暮らしを継続することができる環境づくりをめざして」を作成した。

公開日・更新日

公開日
2025-05-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2025-05-29
更新日
-

文献情報

文献番号
202416003B
報告書区分
総合
研究課題名
独居認知症高齢者等の地域での暮らしを安定化・永続化するための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22GB1003
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
粟田 主一(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 認知症未来社会創造センター)
研究分担者(所属機関)
  • 岡村 毅(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) 自立促進と精神保健研究チーム)
  • 津田 修治(東京健康長寿医療センター研究所 福祉と生活ケア研究チーム)
  • 石山 麗子(国際医療福祉大学大学院 医療福祉学研究科)
  • 涌井 智子(東京都健康長寿医療センター研究所 福祉と生活ケア研究チーム)
  • 井藤 佳恵(東京都健康長寿医療センター研究所 福祉と生活ケア研究チーム)
  • 堀田 聰子(慶應義塾大学 大学院健康マネジメント研究科)
  • 大塚 理加(国立研究開発法人防災科学技術研究所 災害過程研究部門)
  • 菊地 和則(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 福祉と生活ケア研究チーム)
  • 桜井 良太(東京都健康長寿医療センター研究所 社会参加とヘルシーエイジング研究チーム)
  • 石崎 達郎(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所)
  • 稲垣 宏樹((財)東京都高齢者研究・福祉振興財団 東京都老人総合研究所 自立促進と介護予防研究チーム)
  • 川越 雅弘(公立大学法人埼玉県立大学 大学院保健医療福祉学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症政策研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、独居認知症高齢者等の尊厳ある地域生活の継続と安定化に資する科学的エビデンスを集積し、多様なステークホルダー向けの手引きと自治体向け手引き(改訂版)を作成することにある。
研究方法
上記の目的を達成するために、13の分担研究課題を設定して分担研究を実施するとともに、59項目のResearch Question(RQ)を設定してスコーピングレビューを行い、エビデンスブック(改訂版)を作成し、それを踏まえて多様な関係者向けの手引き及び自治体向け手引き(改訂版)を作成した。
結果と考察
1.各分担研究の成果:1)認知症疾患医療センターの診断後支援に関する研究では、「認知症疾患医療センターにおける独居認知症高齢者の診断後支援ガイド」を作成した。2)生活支援ネットワークを構築する地域拠点に関する研究では、チームオレンジ活動が独居認知症高齢者等の地域生活の安定化・永続化に寄与することを示した。3)プライマリケアにおける独居認知症高齢者等への支援に関する研究では、訪問看護師のためのチェックリストと手引きを作成した。4)独居認知症高齢者等へのケアマネジメントに関する研究では、独居認知症高齢者に対するケアマネジメント・ガイドを作成した。5)地域在住の独居認知症高齢者の家族支援に関する研究では、独居認知症高齢者の家族にとっての地域環境の重要性を示すとともに「一人暮らしの認知症高齢者を支える家族のためのガイド」と「支援者のための家族支援のガイド」を作成した。6)複雑困難状況にある独居認知症高齢者等への支援に関する研究では、地域精神科コンサルテーション・リエゾン・サービスを提案した。7)独居認知症高齢者等の社会参加促進に関する研究では、スマホが社会参加をさらに促進するツールとなり得ることを示した。8)独居認知症高齢者等の災害対策に関する研究では、マンション管理組合向けの災害時要配慮者対応マニュアルを作成した。9)独居認知症高齢者等の行方不明対策に関する研究では、独居認知症高齢者の行方不明対策として重要と考えられる事業を類型化して可視化させた。10)見守り支援に資するテクノロジーに関する研究では、複数の方法を用いた見守りが介護者の心理的負担を軽減する可能性があること、電気使用量のモニタリングが認知症を早期に発見できる可能性があることを示した。11)KDBシステム等を用いた自治体事業の質の評価に関する研究では、KDBデータと地域調査の連結データを用いることで、独居認知症高齢者の生活実態の解析が可能になることを示した。12)介護保険データを用いたサービス及び地域システムの質の評価に関する研究では、独居認知症高齢者の暮らしを支える地域包括ケアシステムを推進するためのモデルを示した。13)独居認知症高齢者の消費者被害の実態把握に関する研究では、独居認知症高齢者に対する「強引な訪問販売・リフォーム詐欺」及び「特殊詐欺」の実態を明らかにした。2.エビデンスブックと自治体向け手引き改訂版の作成:上記の分担研究の成果と文献レビューの結果を統合して、エビデンスブック2024と自治体向け手引き「独居認知症高齢者が尊厳ある暮らしを継続することができる環境づくりをめざして」を作成した。
結論
本研究の分担研究を通して独居認知症高齢者の地域生活の継続と安定化に資する新たなエビデンスを集積することができた。これらの知見も含めて、エビデンスブック21の改訂版としてのエビデンスブック24を作成した。また、ここに集積された知見を踏まえて,自治体向け手引きの改訂版「独居認知症高齢者が尊厳ある暮らしを継続することができる環境づくりに向けて」を作成した.さらに,自治体向け手引きとの整合性を考慮して,「認知症疾患医療センターにおける独居認知症高齢者の診断後支援ガイド案」,「訪問看護師のためのチェックリストと手引き」,「独居認知症高齢者に対するケアマネジメント・ガイド」,」「一人暮らしの認知症高齢者を支える家族のためのガイド」、「支援者のための家族支援のガイド」、「家族介護者」、「マンション管理組合向けの災害時要配慮者対応マニュアル」を作成した。しかし、この研究を通して、独居認知症高齢者の権利利益の保護に関する知見が著しく不足していることも明らかになった。独居認知症高齢者の権利利益の保護を目的とする研究を実施し,その成果を社会実装していくことが今後の課題である。

公開日・更新日

公開日
2025-05-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-05-29
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202416003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
独居認知症高齢者の地域生活の継続にフォーカスをあてた研究は国際的にも数少ないが、ガイドライン策定に向けて体系的に実施されて研究は本研究が最初である。この研究の中で、医療機関、訪問看護、介護支援専門員等が直面している独居認知症高齢者支援の実態が明らかにされるとともに、消費者被害(特に特殊詐欺被害)の出現頻度など、世界でも類を見ないはじめての知見が得られている。超少子高齢化が進展するわが国において、この領域の自治体向け手引き、ケアマネジメントガイド、家族支援ガイド等を作成した社会的意義は大きい。
臨床的観点からの成果
本研究で作成された独居認知症高齢者にフォーカスをあてた「エビデンスブック2024」、「認知症疾患医療センターにおける診断後支援ガイド」、「訪問看護のチェックリストと手引き」、「ケアマネジメントガイド」、「一人暮らしの認知症高齢者を支える家族のためのガイド」、「支援者のための家族支援のガイド」は、いずれも実臨床の場での独居認知症高齢者支援の質の向上に寄与するものである。
ガイドライン等の開発
「エビデンスブック2024」、「自治体向け手引き:独居認知症高齢者が尊厳ある暮らしを継続することができる環境づくりをめざして」、「認知症疾患医療センターにおける診断後支援ガイド」、「訪問看護のチェックリストと手引き」、「ケアマネジメントガイド」、「一人暮らしの認知症高齢者を支える家族のためのガイド」、「支援者のための家族支援のガイド」等を作成した。研究成果の一部は、厚生労働省「2040年のサービス提供体制あり方検討会」、「社会保障審議会介護保険部会」等で示されている。
その他行政的観点からの成果
「自治体向けガイド:独居認知症高齢者が尊厳ある暮らしを継続することができる環境づくりをめざして」は、2040年に向けて独居認知症高齢者が急増するわが国の高齢者の保健医療・福祉・介護施策のあり方を基礎資料として活用可能であり、また、本年度より策定作業が進む都道府県・市町村認知症施策推進計画や、第10期都道府県介護保険事業支援計画・市町村介護保険事業計画の策定の際の参考資料として活用可能である。
その他のインパクト
本研究の手引きで提案している個別支援(社会的支援のコーディネーション)と地域づくり(ネットワーキング)を2本の柱とする市町村施策全体の総合的なデザインは、2040年のサービス提供体制のあり方として注目されねばならない独居認知症高齢者の増加という問題のみならず、消費者被害等の権利侵害のリスク増大、社会的孤立(災害時やパンデミック下でそれがさらに増幅されること)、生活支援を担う人材不足、社会資源の地域格差等の問題解決に対しても重要な示唆を与えるものである。

発表件数

原著論文(和文)
13件
原著論文(英文等)
25件
その他論文(和文)
55件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
83件
学会発表(国際学会等)
25件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
3件
認知症施策推進基本計画,厚生労働省「2020年のサービス提供体制のあり方検討会」中間報告,東京都認知症施策推計計画などに研究成果の一部が反映されている.
その他成果(普及・啓発活動)
68件
研究成果に関する自治体職員,保健医療福祉専門職,海外視察団等に対する講演は,2022年には13回,2023年24回,2024年には31回実施している.

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2025-05-29
更新日
-

収支報告書

文献番号
202416003Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
15,525,000円
(2)補助金確定額
15,053,770円
差引額 [(1)-(2)]
471,230円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,250,445円
人件費・謝金 1,519,436円
旅費 1,580,055円
その他 6,121,834円
間接経費 3,582,000円
合計 15,053,770円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2025-05-29
更新日
-