家族・労働政策等の少子化対策が結婚・出生行動に及ぼす効果に関する総合的研究

文献情報

文献番号
201001002A
報告書区分
総括
研究課題名
家族・労働政策等の少子化対策が結婚・出生行動に及ぼす効果に関する総合的研究
課題番号
H20-政策・一般-008
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 重郷(国立社会保障・人口問題研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 中嶋 和夫(岡山県立大学保健福祉学部)
  • 佐々井 司(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 守泉 理恵(国立社会保障・人口問題研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
5,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国において社会経済的要因が結婚・出生行動に及ぼす影響を明らかにすること、および政府や自治体が少子化対策として実施している諸施策が結婚・出生行動へ及ぼす影響・効果を検証することを通じて、今後の少子化関連施策の展開に資する研究知見を得るために本研究事業を行った。
研究方法
少子化の要因研究、政策効果研究、地方自治体の行動計画評価研究の3つの面から課題に接近した。研究方法は、人口・経済関連の公開デ-タを用いた計量経済モデル研究、就業構造基本調査等の個票データを使用した集計分析・多変量解析、ワーク・ライフ・バランスに関する研究総括、子育て支援の現状を把握する自治体を対象とした質問紙調査ならびにヒアリング調査である。
結果と考察
晩婚化、晩産化が進む中で、出産する女性の高齢化によって、健康問題を含む妊よう力に関する生物学的要因や不妊の心配といった心理的要因が生じ、第2、3子が実現できない現状にあることがわかった。育児休業法の充実に伴って、女性全体からみると未だに結婚・出産時に就業を中断する傾向があるものの、高学歴の女性では育児休業を取得し、就業を継続する傾向がある。ワーク・ライフ・バランスの実現を推進する政策や父親の育児参加によって母親の心理的ウェル・ビーイングに正の効果がある。マクロ計量モデルによる保育定員数の出生率への影響を推定した結果、出生率の押し上げ効果がみられた。地域の少子化対策については、都市部では待機児童対策、地方部ではワーク・ライフ・バランスの推進、親育て事業が求められることが明らかとなった。
結論
少子化対策には、経済支援や保育サービスの充実、ワーク・ライフ・バランスの推進といった施策の充実とともに、晩産化に伴う高齢出産女性の健康問題についても積極的な手当が必要である。保育サービスの拡充や女性の就業継続が容易な環境の整備等を含めて対策を行っていくことが望まれる。次世代育成支援対策推進法の前期行動計画が終わり、後期行動計画が進められている中で、地域性を反映した事業実施が行われつつあり、都市部と地方部での多様性が生じ始めている。地方自治体の少子化対策は直接的・間接的な効果の検証には、地域環境の状況や人口動態に関するより詳細な分析が望まれる。

公開日・更新日

公開日
2011-05-24
更新日
-

文献情報

文献番号
201001002B
報告書区分
総合
研究課題名
家族・労働政策等の少子化対策が結婚・出生行動に及ぼす効果に関する総合的研究
課題番号
H20-政策・一般-008
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 重郷(国立社会保障・人口問題研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 中嶋 和夫(岡山県立大学保健福祉学部)
  • 佐々井 司(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 守泉 理恵(国立社会保障・人口問題研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国において社会経済的要因が結婚・出生行動に及ぼす影響を明らかにすること、および政府や自治体が少子化対策として実施している諸施策が結婚・出生行動へ及ぼす影響・効果を検証することを通じて、今後の少子化関連施策の展開に資する研究知見を得るために本研究事業を行った。
研究方法
少子化の要因研究、政策効果研究、地方自治体の行動計画評価研究の3つの面から課題に接近した。研究方法は、人口・経済関連の公開デ-タを用いた計量経済モデル研究、就業構造基本調査等の個票データを使用した集計分析・多変量解析、地方自治体と連携したワーク・ライフ・バランスに関する質問紙調査、子育て支援の現状を把握する自治体を対象とした質問紙調査ならびにヒアリング調査である。
結果と考察
日本の低出生率は、未婚化の進行と出産の先送り、そしてその先送りの取戻し水準が低いことで生じている。計量経済学的分析では、保育所の充実と労働時間短縮の両方において、特に25-39歳層で政策効果がみられた。また、ワーク・ライフ・バランスの実現を推進する政策によって母親の心理的ウェル・ビーイングに正の効果があり、父親を対象とした調査では、職場の支援制度の利用は育児参加に、その育児参加は家庭への貢献満足度を介してワーク・ライフ・バランス充実度に影響していた。晩婚化、晩産化が進む中で、出産する女性の高齢化によって、第2、3子が実現できない現状にあることがわかった。少子化関連施策の直接・間接的効果を検証するには、地域を対象とした継続かつ詳細な調査分析が必要であり、より広域で展開される総合的な対策との連携が重要になる。
結論
少子化対策は次の3つの柱を政策提言とする。第一に、出産の先送りをせずに済む環境作りであり、仕事と家庭の両立支援にかかわる労働政策の一層の推進と、それを両輪として支える保育サービスの充実の推進である。女性就業については、正規就業では一定の政策効果が見いだせた。今後は非正規就業者の仕事と子育ての両立支援が重要となる。第二は、経済的支援である。現金給付需要、共働きできる就業環境整備による家計安定、教育費負担の軽減が重要である。現金給付だけではなく、幅広い視点から経済的支援を検討する必要がある。第三に、女性の健康支援である。女性の健康や不妊治療等への支援を今までよりもっと大きく取り上げ、先送りの結果を緩和できるよう対策を講じるべきである。

公開日・更新日

公開日
2011-05-24
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201001002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
少子化対策に関わる家族・労働政策の効果測定について、公表データや二次利用による個票データによって計量的に測定し、保育サービスの充実、労働時間短縮、育児休業制度利用、父親の育児参加といった政策が出生率の回復ならびにワーク・ライフ・バランスの推進に資することを明らかにした。また、地域の子育て支援策の把握についても質問紙調査やヒアリング調査を行うことによって実態を把握するとともに、今後の支援策について提言をまとめた。
臨床的観点からの成果
次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画の実施状況や、東北および九州における結婚動向についてのヒアリング調査を3カ年で27箇所について行い、それぞれの自治体が抱える社会経済的背景要因や人口構造と移動に関するヒアリング、実際に行っている事業の実施状況について詳細に調査を行うなど、データから見えてこない現場の事業実施体制等について明らかにした。
ガイドライン等の開発
ガイドライン等の開発は行っていない。また、2011年6月時点で審議会等での引用はない。
その他行政的観点からの成果
その他行政的観点からの成果は2011年6月時点では、特段記する事項はない。
その他のインパクト
地方自治体の子育て支援計画等担当者を対象に、2009年度(6月12日)と2010年度(6月10日)において、日本人口学会特別セッションを開催し、多くの自治体職員の参加をいただいた。2011年度は企画セッションとして、同様の企画を行う予定である(2011年6月12日)。
研究の成果を高橋重郷・大淵寛編著『人口減少と少子化対策』(人口学ライブラリー16)としてまとめ、出版した(2015年3月25日)。

発表件数

原著論文(和文)
7件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
15件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
4件
日本人口学会特別セッション(2009-10)、企画セッション(2011)、高橋重郷・大淵寛編著『人口減少と少子化対策』(人口学ライブラリー16)原書房(2015.3)

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
佐々井司
出生率の変化に見る自治体少子化対策の効果と課題
地方自治職員研修 , 41 (9) , 32-34  (2008)
原著論文2
Ji-Sun Park, Rie Kondo, Jung-Suk Kim et al.
Examination of Generating Mechanism Concerning Father’s Participation in Child-rearing
Korean Journal of Health Education Promotion , 26 (5) , 57-70  (2009)
原著論文3
鎌田健司、岩澤美帆
出生力の地域格差の要因分析―非定常性を考慮した地理的加重回帰法による検証―
人口学研究 , 45 , 1-20  (2009)
原著論文4
鎌田健司
地方自治体における少子化対策の政策過程-「次世代育成支援対策に関する自治体調査」を用いた政策出力タイミングの計量分析-
政経論叢 , 78 (3) , 213-242  (2010)
原著論文5
増田幹人
経済環境および家族政策が出生率に及ぼす影響
中央大学経済研究所年報 , 41 , 421-443  (2010)
原著論文6
永瀬伸子、守泉理恵
1990年代から2000年代に大卒女性の就業継続行動はどう変わったか:26~33歳を対象とした聞き取り調査より
生活社会科学研究 , 17 , 1-21  (2011)
原著論文7
桐野匡史・朴志先・近藤理恵・佐々井司・高橋重郷・中嶋和夫
共働き世帯の父親の育児参加と母親のWell-beingの関係
厚生の指標 , 58 (3) , 1-8  (2011)
原著論文8
鎌田健司
多様化する次世代育成支援対策-前期行動計画の事業実績評価と政策波及パターンの測定-
人口問題研究 , 67 (4) , 40-61  (2011)
原著論文9
増田幹人
The Effects of the Child-Care Policy on Birth and Female Labor Force in Japan
経済学論纂 , 53 (5・6) , 225-239  (2013)

公開日・更新日

公開日
2014-05-21
更新日
2015-05-27

収支報告書

文献番号
201001002Z