水道水異臭被害を及ぼす原因物質の同定・評価および低減技術に関する研究

文献情報

文献番号
200942009A
報告書区分
総括
研究課題名
水道水異臭被害を及ぼす原因物質の同定・評価および低減技術に関する研究
課題番号
H19-健危・一般-013
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
西村 哲治(国立医薬品食品衛生研究所 環境衛生化学部)
研究分担者(所属機関)
  • 越後 信哉(京都大学大学院 工学研究科)
  • 松下 拓(北海道大学大学院 工学研究科)
  • 小坂 浩司(国立保健医療科学院 水道工学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
4,551,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
水質基準項目のカビ臭物質以外の,異臭原因化学物質の同定および的確な定量分析方法の確立,臭気官能試験方法の適用条件に関する検討,浄水処理における新たな臭気物質除去法に関する研究を遂行し,臭気被害を低減化するための技術と臭気を的確に評価できる方法の確立を達成し,水道水の快適性の一層の向上に資する。
研究方法
臭気被害発生の原因となりうる化学物質,塩素処理により生成する臭気原因物質の文献調査を行った。確立したHS-GS/MS法を用いてトリクロラミンを測定した。臭気物質及び臭気物質前駆物質の促進酸化処理等による除去処理特性を検討した。
結果と考察
異臭原因物質となる可能性のある化学物質に関して,異臭被害の予防対応策および発生時に利用できる臭気原因物質のデータベースの構築を進めた。
全てのアミノ酸はトリクロラミン前駆物質となるが,その生成能は大きく異なり,フェニルアラニンの生成能が特に高かった。また,アルコール性水酸基含有アミノ酸は生成能が高く,1級アミノ基の数とトリクロラミン生成能との間に関連が示唆された。トリクロラミン前駆物質としてのアミノ酸の寄与は数分の一程度あると推算された。一方,臭気についてトリクロラミン以外の臭気原因物質の寄与が示唆された。ジペプチドは,対応する遊離アミノ酸より生成量が低かった。
酸化処理とイオン交換処理の組み合わせによるカルキ臭低減の可能性を示した。ジクロラミン,トリクロラミンを還元分解することから,塩素酸化によるアンモニア態窒素除去を補完する処理として粉末活性炭処理が効果的であり,処理性が向上することが示唆された。一方で,トリハロメタン・ハロ酢酸に対しては吸着除去することが難しいため,処理時間の短縮や塩素添加量の抑制で,消毒副生成物の生成量を抑える必要があると考えられる。よって,アンモニア性窒素の除去は,塩素添加量を窒素との反応当量分以上に保った上で,できるだけ少なく抑えて添加して,ジクロラミン・トリクロラミンが卓越して残留する状態にし,活性炭により分解除去することにより,微生物分解が期待できない低水温期においても効率的な窒素除去が可能であること示された。
結論
塩素処理により生成する臭気原因物質とその前駆体を検討し,臭気被害発生の予防措置をとるための方向性を示した。生物分解が困難な状況におけるトリクロラミン等の除去方法として,微粉化粉末活性炭による手法の要件を明らかとした。

公開日・更新日

公開日
2010-08-06
更新日
-

文献情報

文献番号
200942009B
報告書区分
総合
研究課題名
水道水異臭被害を及ぼす原因物質の同定・評価および低減技術に関する研究
課題番号
H19-健危・一般-013
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
西村 哲治(国立医薬品食品衛生研究所 環境衛生化学部)
研究分担者(所属機関)
  • 越後 信哉(京都大学大学院 工学研究科)
  • 松下 拓(北海道大学大学院 工学研究科)
  • 小坂 浩司(国立保健医療科学院 水道工学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
水質基準項目のカビ臭物質以外の,異臭原因化学物質の同定および的確な定量分析方法の確立,臭気官能試験方法の適用条件に関する検討,浄水処理における新たな臭気物質除去法に関する研究を遂行し,臭気被害を低減化するための技術と臭気を的確に評価できる方法の確立を達成し,水道水の快適性の一層の向上に資する。
研究方法
臭気被害発生の原因となりうる化学物質,塩素処理により生成する臭気原因物質の文献調査を行った。トリクロラミの水道水として求められる感度を測定できる,汎用性の高い分析法を検討し,機関間の一致性を評価した。臭気官能試験実施条件,感知閾値の客観的な評価方法を検討した。微粉化粉末活性炭を用いた臭気物質除去の実施条件を検討した。臭気物質及び臭気物質前駆物質の促進酸化処理等による除去処理特性の検討を行った。
結果と考察
水道水異臭被害発生の予防策策定または発生時に有効に利用できるデータベースを構築した。資機材由来の臭気原因化学物質は,適正に使用されている限り臭気発生の原因とならないことが認められた。医薬品類やアミノ酸等からも,塩素処理により揮発性有機化合物が生成した。全てのアミノ酸がトリクロラミン前駆物質となることが確認された。
水道水中のトリクロラミンの測定法として,高感度で,確度が高く,汎用性が高いHS-GC/MS法を確立し,これまでの方法より低い濃度を再現性高く検出した。臭気強度の評価方法として,三点比較法を確立し,現行法より安定性が優れていることを明らかとした。これらの方法は,上水試験方法((社)日本水道協会編)に収載する予定である。
臭気の原因物質としてクロラミン類のみではないことが示唆された。
トリクロラミンの前駆体のアンモニウムイオンの除去にモルデナイト等が優れ,数μg/Lまで低減することが可能となった。イオン交換処理後に塩素処理することにより,臭気強度が低減された。
活性炭の微粉化によりクロラミンと遊離塩素の分解除去性が向上し,ジクロラミン,トリクロラミンにおいては除去効果が大きかった。
結論
実用に供することのできる,臭気濃度評価のための機器分析法及び官能試験法を新たに開
発・確立した。塩素処理により生成する臭気原因物質とその前駆体を検討し,臭気被害発
生の予防措置をとるための方向性を示した。生物分解が困難な状況におけるトリクロラミ
ン等の除去方法として,微粉化粉末活性炭による手法の要件を明らかとした。

公開日・更新日

公開日
2010-08-06
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200942009C

成果

専門的・学術的観点からの成果
水道水中のトリクロラミンの測定法として,高感度で正確に測定できるHS-GC/MS法を確立し,既
存の方法より低い濃度を再現性高く検出できる技術の進歩を果たした。一般水環境中に広く存在す
るアミノ酸類などの化学物質からも、塩素処理によりトリクロラミン等のカルキ臭物質が生成する
ことを明らかとし、その発生機構や原因物質の構造特異性を究明し、臭気制御に有益な情報を得た。
通常粒子径の粉末活性炭より微細化した微粉化粉末活性炭による水溶液中の化学物質の物質吸着
特性を明らかとした。
臨床的観点からの成果
特記事項なし。
ガイドライン等の開発
特記事項なし。
その他行政的観点からの成果
高感度で正確に水道水中のトリクロラミンを測定できるHS-GC/MS法を確立し,水質管理に有用な
機器分析手法を提供した。臭気強度の官能評価方法として,現行法より安定性が優れた三点比較法
を確立した。これまで判断基準が困難であった臭気の判定に、科学的で再現性の高い手法も提供と
して良質の水道水提供への寄与が貢献できた。これらの方法は,上水試験方法((社)日本水道協
会編)に収載される。生物分解が困難な状況におけるトリクロラミン等の除去方法とし
て,微粉化粉末活性炭の利用の可能性を示した。
その他のインパクト
特記事項なし。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
3件
その他論文(和文)
1件
著書
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
学会発表(国際学会等)
6件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
柳橋泰生, 伊藤禎彦, 宮本太一,他
水道水の臭気測定における三点比較法の適用
Environ. Sanit. Res. , 21 (3) , 35-38  (2007)
原著論文2
Matsui, Y., Murai, K., Sasaki, H.,et al
Submicron-sized activated carbon particles for the rapid removal of chlorinous and earthy-musty compounds
Journal of Water Supply: Research and Technology–AQUA , 57 (8) , 577-583  (2008)
原著論文3
Matsushita, T., Matsui, Y., Sawaoka, D.,et al
Simultaneous removal of cyanobacteria and an earthy odor compound by a combination of activated carbon adsorption, coagulation, and ceramic microfiltration
Journal of Water Supply: Research and Technology-AQUA , 57 (7) , 481-487  (2008)
原著論文4
柳橋泰生, 権大維, 伊藤禎彦, 他
臭気強度(TON)の測定における三点比較法の適用
水道協会雑誌 , 78 (1) , 2-12  (2009)
原著論文5
佐藤尚行,越後信哉,伊藤禎彦,他
極低濃度域カルキ臭原因物質のイオン交換法による制御
環境工学研究    論文集 , 46 , 225-232  (2009)
原著論文6
Kosaka, K., Seki, K., Kimura, N.,et al
Determination of trichloramine in drinking water using head-space gas chromatography/mass spectrometry
Water Science & Technology: Water Supply-WSTWS , 10 , 23-29  (2010)

公開日・更新日

公開日
2015-11-25
更新日
2017-08-03