家庭用品に由来する化学物質の多経路暴露評価手法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200941025A
報告書区分
総括
研究課題名
家庭用品に由来する化学物質の多経路暴露評価手法の開発に関する研究
課題番号
H21-化学・一般-009
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
神野 透人(国立医薬品食品衛生研究所 環境衛生化学部)
研究分担者(所属機関)
  • 野﨑 淳夫(東北文化学園大学大学院 健康システム研究科)
  • 伊佐間 和郎(国立医薬品食品衛生研究所 療品部)
  • 酒井 康行(東京大学 生産技術研究所 物質・環境系部門)
  • 杉林 堅次(城西大学薬学部 薬粧品動態制御学教室)
  • 埴岡 伸光(岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科 機能制御学講座)
  • 香川 聡子(国立医薬品食品衛生研究所 環境衛生化学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
20,190,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
リスク評価の精度やスループットに決定的な影響を及ぼす暴露評価に関して、家庭用品に由来する化学物質、特に半揮発性有機化合物の多経路 (経気道、経皮、経口) からの生体への取り込み量推定に必要な一連の評価手法を開発することが本研究の目的である。
研究方法
フタル酸エステル類Dibutyl Phthalate (DBP)、Benzyl Butyl Phthalate (BBP) 及びBis(2-ethylhexyl) Phthalate (DEHP) を対象として、家庭用品からの放散や溶出による室内環境媒体への化学物質移行性並びに暴露経路依存的な化学物質の生体への取込特性について検討を行った。
結果と考察
室内空気中 (ガス状及び粒子状) 及びハウスダスト中のフタル酸エステル類濃度の実態調査から、空気中のDEHPはほぼ全量が粒子状として存在すること、並びにハウスダストを介したDEHPの経口暴露量は食物及び飲料水からの暴露量の約80%に匹敵することを明らかにした。さらに、ハウスダスト中にはフタル酸エステル類の加水分解により生じる活性代謝物モノエステル体が存在することを初めて明らかにした。
家庭用品からの放散や溶出による室内環境媒体への化学物質移行性の評価手法の開発では、家庭用品を想定したPVCシートを皮膚に直接接触させた場合のフタル酸エステル類の移行を解析し、皮脂等の皮膚状態が重要な要因となることを示唆する結果を得た。また、家庭用品の表面に存在する化学物質を同定するためのスクリーニング法としてDART-TOFMSの有用性を明らかにした。
一方、暴露経路依存的な化学物質の生体への取込特性の評価手法の開発では、半透膜型培養器を用いるヒトII型肺胞上皮細胞株の培養系を確立し、BBPの上皮障害性及び透過量の評価を行った。また、経皮暴露モデルとしてSide-by-Side型拡散セルでDBPの皮膚透過性を検討し、DBPは速やかに加水分解されモノエステル体 (MBP) として皮膚を透過すること、皮膚透過係数からMBPは皮膚内貯留による局所作用と経皮吸収による全身作用を併せ持つ化合物群に分類されることを明らかにした。さらに、フタル酸エステル類の代謝 (加水分解反応) の評価系としてヒトカルボキシルエステラーゼの哺乳動物細胞発現系を確立し、その機能発現を確認した。
結論
半揮発性有機化合物の暴露に関して、ハウスダストが重要な環境媒体となることを明らかにした。また、これら一連の研究成果により、化学物質の多経路暴露評価法の開発を進める上で必須となる主要な要素手法を確立した。

公開日・更新日

公開日
2010-06-01
更新日
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