化学物質の情動・認知行動に対する影響の毒性学的評価法に関する研究-特に遅発性影響の評価系のメカニズム解明による確立-

文献情報

文献番号
200941014A
報告書区分
総括
研究課題名
化学物質の情動・認知行動に対する影響の毒性学的評価法に関する研究-特に遅発性影響の評価系のメカニズム解明による確立-
課題番号
H20-化学・一般-009
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
北嶋 聡(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター毒性部)
研究分担者(所属機関)
  • 山田 一之(独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター リサーチリソースセンター)
  • 種村 健太郎(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター毒性部)
  • 中島 欽一(奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス研究科 分子神経分化制御学講座)
  • 熊ノ郷 淳(大阪大学 微生物病研究所 感染病態分野 国際研究拠点大阪大学免疫学フロンティア研究センター)
  • 冨永 貴志(徳島文理大学 香川薬学部 病態生理学講座)
  • 高森 茂雄(同志社大学・生命医科学部・医生命システム学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
41,720,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
情動・認知行動試験は心理学では繁用されるが、主観的判定に傾きやすく、物証に裏付けられた毒性評価としての利用は限定的である。本研究は、それに脳神経科学の最先端解析手法及びトキシコゲノミクス手法を組み合わせてメカニズム解明を行うことにより、客観的な毒性評価手法としての「情動・認知行動毒性」、特に、発生発達期暴露の遅発影響の評価体系を確立することを目的とする。
研究方法
発生・発達段階にある脳の特性に配慮し、マウスを用いた【発生・発達期暴露in vivo解析】、【発生・発達期暴露ex vivo・in vitro解析】、【成熟期暴露in vivo解析】及び【成熟期暴露ex vivo・in vitro解析】の各研究方法について、成熟時点での情動・認知行動解析、及び、中枢神経系の先端的な形態機能解析、神経幹細胞分化能解析、神経回路機能解析、シナプス伝達活性解析、網羅的遺伝子発現解析等を行う。
結果と考察
幼若期マウスへのイボテン酸投与が、成熟後の不安関連行動の逸脱、記憶能の低下、脳内情報処理異常を誘発すること、加えて、当該脳組織のPercellome法による網羅的遺伝子発現変動解析により、神経ガイダンスシグナル、シナプスの興奮と抑制バランスに影響することを明らかにした。これは、この遅発性中枢毒性の分子メカニズムの一端を明らかにする新規性の高い成果であると考えられる。また、幼若期マウスへのモノアミン酸化酵素阻害剤投与による成長後マウスの情動反応影響、胎生期マウスへのバルプロ酸投与による成長後マウスの学習記憶異常、を情動・認知行動解析バッテリーによって示した。更に、ドーパミンニューロンに対する保護作用を有するSema4Dが欠損したマウスにおける行動量増加(多動)を明らかにした。また、膜電位感受性色素を用いた海馬内神経回路機能解析が、ドーモイ酸投与によるシナプス長期増強異常を検出した。これはドーモイ酸投与による記憶異常に対応する所見と考えられる。
結論
本研究により、発生・発達期にある脳における神経シグナルかく乱は、成熟後に顕在化する行動異常の原因となること、また、Percellome法による網羅的遺伝子発現変動解析は、その様な遅発性中枢影響の誘発のメカニズムの推定に大きく貢献する結果を得た。

公開日・更新日

公開日
2010-06-02
更新日
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