男児外陰部異常症および生殖機能障害と化学物質:個体感受性と暴露量に関するゲノム疫学研究

文献情報

文献番号
200941009A
報告書区分
総括
研究課題名
男児外陰部異常症および生殖機能障害と化学物質:個体感受性と暴露量に関するゲノム疫学研究
課題番号
H20-化学・一般-004
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
緒方 勤(国立成育医療センター研究所 小児思春期発育研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 安彦 行人(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 毒性部)
  • 大迫 誠一郎(東京大学大学院医学系研究科 疾患生命工学センター)
  • 曽根 秀子(独立行政法人国立環境研究所 環境リスク研究センター)
  • 小島 祥敬(名古屋市立大学大学院医学研究科 腎・泌尿器科学分野)
  • 吉永 淳(東京大学新領域創成科学研究科 環境システム学専攻 環境健康システム学)
  • 洲鎌 盛一(国立成育医療センター病院 総合診療部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
29,808,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、男児外陰部異常症および生殖機能障害と化学物質の関連性を個体感受性と暴露量の両者の観点から解明することである。その必要性は、その因果関係の解明が環境リスク評価上の重要課題となっていることにある。特に、小児など脆弱な集団を保護する必要性が国際化学物質管理会議で再確認され、個体感受性を勘案した評価スキームの構築が急務となっている。
研究方法
本研究で実施した遺伝子検査は、倫理委員会の承認を得た後、書面によるインフォームド・コンセントを取得した後に実施した。
結果と考察
当該年度における主たる成果は以下の通りである。(1) エストロゲン受容体α遺伝子 (ESR1) における外陰部異常症感受性ハプロタイプの解析:この感受性ハプロタイプと絶対連鎖不平衡を示す2,244 bpの微小欠失の同定(この微小欠失こそが、感受性亢進を招く本質であることを示唆する)、同一ハプロタイプとイタリア人男児における外陰部異常症発症の関連性の同定(人種を超えた普遍性を意味する)、外陰部皮膚繊維芽細胞を用いた発現解析の開始、この欠失部位周辺の約7 kbをノックインしたキメラマウスの作製を行った。(2) ESR1における外陰部異常症感受性ハプロタイプの世代間解析:健常者におけるリスクハプロタイプ保有頻度が有意に成人年代に多いことから、環境化学物質の暴露量増加が疾患発症に関与することが示唆される。(3) エストロゲン受容体β遺伝子 (ESR2)における精子形成障害感受性ハプロタイプの同定:ESR2に約60 kbのハプロタイプブロックが存在し、その中の特定ハプロタイプが感受性因子として作用することを世界で初めて見いだした。(4) 化学物質応答遺伝子群の網羅的解析:96個のSNP解析から、感受性SNPがダイオキシンシグナル伝達関連遺伝子のAhRで2個とArnt2で1個、bisphenol A受容体遺伝子とされるNR1I2で3個、男性ホルモン産生酵素遺伝子であるCYP1A1で4個とCYP17A1で 3個検出された。これらのデータは、男児外陰部異常症および生殖機能障害と化学物質の関連性を、個体感受性と暴露量の観点から解明する上で重要な情報を与えるものである。
結論
男児外陰部異常症および生殖機能障害と化学物質の関連性を、個体感受性と暴露量の観点から解明する上で重要な進展が見られた。

公開日・更新日

公開日
2010-06-03
更新日
-