新型コロナウイルス感染症流行が歯科口腔保健行動及び歯科疾患等に与えた影響の解明のための研究

文献情報

文献番号
202408051A
報告書区分
総括
研究課題名
新型コロナウイルス感染症流行が歯科口腔保健行動及び歯科疾患等に与えた影響の解明のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24FA1021
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
竹田 飛鳥(国立保健医療科学院 健康危機管理研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 福田 英輝(国立保健医療科学院)
  • 岩崎 正則(北海道大学 口腔健康科学講座予防歯科学教室)
  • 松山 祐輔(東京科学大学 医歯学総合研究科歯科公衆衛生学分野)
  • 石丸 美穂(東京科学大学 医歯学総合研究科歯科公衆衛生学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
3,250,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)長期流行下の地域における歯科口腔保健行動や歯科疾患罹患状況の実態を明らかにし、感染症危機発生時でも継続的に歯科保健医療サービスを提供するための行政の健康危機管理体制の構築に資することを目的とした。令和6年度は、主にフッ化物洗口事業の実施状況や高齢者の歯科受診控えに関する調査・分析を行った。
研究方法
まず、フッ化物洗口事業へのCOVID-19の影響を把握するため、全国の都道府県および保健所設置市を対象に質問紙調査を実施した。調査項目として、学校等の各施設におけるフッ化物洗口実施状況やその変化、支援体制、歯科保健計画への位置づけ等を設定し、分析を行った。次に、高齢者の歯科受診控えと口腔の健康との関連を検討するため、板橋健康長寿縦断研究(Itabashi-LSA)のデータを用いた。口腔診査および質問紙からオーラルフレイルの該当状況を評価し、歯科受診控えの有無と理由により群を分けた上で、共変量を調整した修正ポアソン回帰分析によりオーラルフレイルとの関連を検討した。また、日本老年学的評価研究(JAGES)のデータを用い、2019年(流行前)及び2022年(流行後)の高齢者における歯科受診状況の変化と社会経済状況との関連を分析した。社会経済状況は収入・教育歴・資産から主成分分析でスコア化し、ロジスティック回帰分析とSlope Index of Inequality(SII)とRelative Index of Inequality(RII)を用いて評価した。さらに、COVID-19下における高齢者の歯科受診に関する国際的知見を得るため、PubMedを用いて英語原著論文を対象とした文献レビューを行った。あわせて、地方自治体の担当職員への半構造化インタビューのヒアリング調査により、感染症危機発生時の歯科保健医療事業の実施に関する課題や判断基準について情報を収集した。
結果と考察
集団フッ化物洗口は、COVID-19流行初期に多くの施設で中断され、2020~2021年に実施施設数が大きく減少した。一方で、2022年以降は回復傾向にあり、地域によっては流行前の水準を上回る実施が確認できた。地方自治体間で実施状況の把握方法に差があることや、マニュアルの認知・活用の不足といった課題も明らかになった。高齢者における歯科受診行動については、COVID-19感染への不安から受診を控えることが、オーラルフレイルと関連していることが示された。口腔機能や口腔衛生の維持には、定期的な歯科受診が不可欠であり、感染不安が受診行動に与える影響は、健康の質に直接結びつく重要な課題である。JAGESの分析では、COVID-19流行前後を通じて、社会経済的に不利な高齢者ほど歯科受診をしにくいという健康格差が認められた。ただし、COVID-19流行によってその格差が拡大したという明確な傾向は確認されなかった。今後のポスト・コロナ社会においても、こうした格差の是正を目的とした政策の継続が求められる。COVID-19流行下の高齢者における歯科受診控えに関する文献レビューでは、複数の国から歯科受診割合の一時的減少が報告されていたが、高齢者特有の要因(要介護度や施設入所等)に着目した研究は確認できなかった。歯科受診が高齢者の全身的健康にも影響を与える可能性があることから、今後は受診抑制に関わる具体的要因の解明が求められる。地方自治体に対するヒアリング調査では、COVID-19流行下において多くの対面型歯科保健医療事業の中止や中断を余儀なくされた一方、状況に応じた柔軟な対応も行われていた。事業中断後に事業を再開できない事例も複数あったことから、中断前に再開の方針を関係機関で協議し、学会等を巻き込んで提言を得る等の体制の構築が必要であると考えられた。
結論
本研究により、COVID-19長期流行下において地域の集団フッ化物洗口や高齢者関連事業等の歯科保健医療サービスの提供が中断されたことが明らかになった。本年度は特に高齢者の口腔健康や健康格差に影響を与えうることが示された。地方自治体による歯科保健医療事業の継続には、人的・財政的支援の強化や、事業中断時の明確な再開指針の整備が不可欠であることも明らかになった。今後の感染症等の健康危機に備え、平時からの制度的枠組みと柔軟な体制の構築が重要である。

公開日・更新日

公開日
2025-07-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-07-11
更新日
-

収支報告書

文献番号
202408051Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,250,000円
(2)補助金確定額
3,250,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,643,247円
人件費・謝金 0円
旅費 602,672円
その他 1,004,081円
間接経費 0円
合計 3,250,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2025-09-10
更新日
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