薬剤性肺障害における遺伝子マーカーに関する遺伝子学的検討等に係る研究

文献情報

文献番号
200940078A
報告書区分
総括
研究課題名
薬剤性肺障害における遺伝子マーカーに関する遺伝子学的検討等に係る研究
課題番号
H21-医薬・一般-033
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
久保 惠嗣(信州大学医学部 内科学第一講座)
研究分担者(所属機関)
  • 太田 正穂(信州大学医学部 法医学教室)
  • 花岡 正幸(信州大学医学部 内科学第一講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
薬剤性肺障害に関与する共通の遺伝的背景を検討することであり、薬剤投与により薬剤性肺障害を起こした群と、起こさなかった群の遺伝的背景を比較することで、肺障害誘発に関与する候補遺伝子を検討し、肺障害発症機序を解明する。
研究方法
LABType SSO試薬(One Lambda Inc.)にて、HLA-A*, -B*, -C*, -DRB1*, -DQB1*をLuminex法でタイピングした。Affymetrix社のGeneChip Human Mapping 500K Array Set (500,568 SNPs)を用いて薬剤性肺障害を来した患者群14人と、無症状の19人について、全ゲノム網羅的な相関解析(GWAS:genome-wide association study)を行った。
結果と考察
① HLAタイピング
 薬剤障害発症群は、非発症群に比べ、HLA-A*0201のアリル頻度は低く(3.6%)、A*0206の頻度が高かった(21.4%)。しかし、統計学的には有意差が見られなかった。健常日本人におけるA*02のアリル頻度(*0201=11.2%, *0206=9.2%)と比較すると障害発症群は抵抗性の有意差(p=0.04)を示し、A*0206では感受性の有意差(R.R.=2.69, p=0.02)を示した。
② 全ゲノム網羅的な相関解析
50万個のSNPを用いたGWAS解析では、アリル頻度の&#61539;2検定でp<1x10-5の有意差で、2種類以上のSNPsを遺伝子内に相関を示した遺伝子は5つあった。その中でcall rateが高く、HWE値が外れていないSNPsを含む遺伝子が1つ見られた。この遺伝子内にある7種類のSNPsは、薬剤性肺疾発症群と非発症群において強い有意差(P<9.2x10-6)を示した。しかし、両群を結合した疾患群36人と一般健常者群650人との間に遺伝子型頻度およびアリル頻度に有意差は認められなかった。

結論
薬剤性肺障害発症群と非発症群との比較において、HLAでは発症群にHLA-A*0206アリル頻度が高かったが、統計学的有意差は認められなかった。 また、GWASでは1番染色体短腕上に設けた1遺伝子内の8個のSNPsでアリル頻度に有意な相違を認めた。今後更に症例数を増やし、再現性についての検討が必要である。

公開日・更新日

公開日
2010-05-28
更新日
-