文献情報
文献番号
202407033A
報告書区分
総括
研究課題名
科学的根拠に基づくがん情報の提供及び均てん化に向けた体制整備に資する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23EA1026
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
若尾 文彦(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策情報センター本部)
研究分担者(所属機関)
- 長谷川 潔(東京大学 医学部附属病院 肝胆膵外科、人工臓器・移植外科)
- 下井 辰徳(国立がん研究センター中央病院 腫瘍内科)
- 中島 信久(琉球大学 医学部 附属病院 地域医療部)
- 関根 郁夫(筑波大学医学医療系 臨床腫瘍学)
- 藤 也寸志(国立病院機構 九州がんセンター)
- 中山 健夫(京都大学 大学院医学研究科)
- 奥村 晃子(公益財団法人 日本医療機能評価機構 EBM医療情報部)
- 高山 智子(静岡社会健康医学大学院大学 社会健康医学研究科)
- 東 尚弘(国立大学法人 東京大学 大学院医学系研究科公衆衛生学分野)
- 八巻 知香子(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策研究所 がん情報提供部)
- 平野 公康(国立がん研究センター がん情報提供部)
- 鈴木 斎王(宮崎大学医学部附属病院 患者支援センター)
- 坪井 正博(国立がん研究センター 東病院呼吸器外科)
- 鈴木 克典(山形県立中央病院 消化器内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
8,460,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
科学的根拠に基づく情報の提供及び均てん化に向けた体制整備と方策を提言することを目的とし
①がん関連機関の情報連携環境の構築をもとにした“信頼できる情報群”からなる相談員や医療者向け情報支援データベースの整備の検討
②患者や国民が必要な情報にアクセスしやすい情報検索システムの検討及び検証
③がん診断時等の患者にがん診療施設で適切に情報提供する方策の検討
を行った。
①がん関連機関の情報連携環境の構築をもとにした“信頼できる情報群”からなる相談員や医療者向け情報支援データベースの整備の検討
②患者や国民が必要な情報にアクセスしやすい情報検索システムの検討及び検証
③がん診断時等の患者にがん診療施設で適切に情報提供する方策の検討
を行った。
研究方法
①がんガイドラインを網羅的に調査した上で、Webガイドラインを参照したRAG(Retrieval-Augmented Generation) AIチャットボットのパイロットモデル構築を試みた。参照情報およびAI開発要件のパラメータを検討し、ハルシネーションの抑制や応答の網羅性について明らかにした。
②がん患者1017名へのインターネット調査を参考に、診断直後の患者向け適切な文章量とイラスト量を検討し、13点のイラスト・インフォグラフィックスを作成した。看護師に対するヒアリングを行いナラティブ情報提供の望ましい在り方を検討した。情報検索会社と連携し、がん検診・検査・相談検索時にがん情報サービスへのアクセス増加を促すモジュールの効果検証を行った。
③相談支援センターの運営上の困りごとを分析した。また、ヒアリング等により、地域の医療機関におけるがん情報伝達の課題や取り組みについて取りまとめた。
②がん患者1017名へのインターネット調査を参考に、診断直後の患者向け適切な文章量とイラスト量を検討し、13点のイラスト・インフォグラフィックスを作成した。看護師に対するヒアリングを行いナラティブ情報提供の望ましい在り方を検討した。情報検索会社と連携し、がん検診・検査・相談検索時にがん情報サービスへのアクセス増加を促すモジュールの効果検証を行った。
③相談支援センターの運営上の困りごとを分析した。また、ヒアリング等により、地域の医療機関におけるがん情報伝達の課題や取り組みについて取りまとめた。
結果と考察
①がん診療ガイドライン74編の調査から、多くはWeb上で公開されている一方、書籍のみや旧版、あるいは改訂時の一時的な非公開など、公開状況は多様であった。Clinical Question単位での構造を持つWebガイドラインはAI活用に適しており、ガイドライン全体における構造の最適化と標準化が今後の課題である。Webガイドラインを活用したパイロットモデルでは、関連性の高い応答が得られ、システムの有効性が確認された。また、参照を基に返答するRAG型AIにおいて、信頼できる参照情報群を用いた場合、ハルシネーションを大幅に抑制する効果がある一方、科学的根拠が乏しい質問には対応が限定的であり、大規模言語モデルの特性や活用方法の設計が応答の質と安全性に大きく影響することが示された。
②がん患者を対象としたインターネット調査から、情報収集時に多くの困難があることが判明した。特に、情報が分散しており、自身に適した内容を見つけにくいこと、情報の信頼性や鮮度への不安、専門用語の多さなどが挙げられた。これに対し、診断直後の患者向けにわかりやすいWebページとイラストを組み合わせたコンテンツを作成し、情報の受容性を高める工夫を行った。また、ナラティブ情報の活用に関しては、看護師による提供の実態から、患者の状態に応じた情報提供の重要性と有用性が確認され、今後はサバイバーの意見も取り入れた最適な提供方法の検討が必要と考えられる。さらに、検索サイトにおける「がん情報モジュール」の試作と導入により、科学的根拠に基づくがん情報サービスへのアクセスが増加することが確認された。
③がん診療施設(がん拠点病院および非拠点病院)における情報提供体制の検討では、相談支援センターの認知不足や来院時訪問の困難が課題として浮かび上がった。山形県や福岡県の事例では、院内掲示、電子カルテ連携、スタッフ研修、相談員の導入など多角的な取り組みにより、相談件数の増加や患者・医療者双方の認知向上が得られた。地域医療においても、『がんケアセンター』の設置や啓発活動を通じ、高齢者や情報アクセスが困難な層への支援が進められた。さらに、宮崎県の事例では、患者目線での講演や演劇等による啓発活動を通じて、ピアサポーターの育成と正確な情報提供が両立可能であることが確認された。
②がん患者を対象としたインターネット調査から、情報収集時に多くの困難があることが判明した。特に、情報が分散しており、自身に適した内容を見つけにくいこと、情報の信頼性や鮮度への不安、専門用語の多さなどが挙げられた。これに対し、診断直後の患者向けにわかりやすいWebページとイラストを組み合わせたコンテンツを作成し、情報の受容性を高める工夫を行った。また、ナラティブ情報の活用に関しては、看護師による提供の実態から、患者の状態に応じた情報提供の重要性と有用性が確認され、今後はサバイバーの意見も取り入れた最適な提供方法の検討が必要と考えられる。さらに、検索サイトにおける「がん情報モジュール」の試作と導入により、科学的根拠に基づくがん情報サービスへのアクセスが増加することが確認された。
③がん診療施設(がん拠点病院および非拠点病院)における情報提供体制の検討では、相談支援センターの認知不足や来院時訪問の困難が課題として浮かび上がった。山形県や福岡県の事例では、院内掲示、電子カルテ連携、スタッフ研修、相談員の導入など多角的な取り組みにより、相談件数の増加や患者・医療者双方の認知向上が得られた。地域医療においても、『がんケアセンター』の設置や啓発活動を通じ、高齢者や情報アクセスが困難な層への支援が進められた。さらに、宮崎県の事例では、患者目線での講演や演劇等による啓発活動を通じて、ピアサポーターの育成と正確な情報提供が両立可能であることが確認された。
結論
①では、診療ガイドライン等の知識情報が、遅延なくweb上に公開されることが大前提である。さらに、大量のガイドライン情報から、求める情報を効率的・効果的に得るためには、AIの活用が不可欠と考える。がん情報提供におけるAIの応用では、生成パラメータの最適化に加え、Web診療ガイドライン等のAIの情報ソースとなるコンテンツや公開様式の標準化の検討が重要で、これらの実現によりAIによる正しいがんの情報の提供が促進されると考えられる。
②では、検索サイトにおけるがん情報モジュールの効果が確認されたもの、SNSやAI検索の普及などの動向に合わせた情報提供のあり方に対して、望ましい対策の在り方を総合的に検討していくことが重要である。
③では、各地域や施設ごとに置かれた状況はさまざまであるなか、好事例となる事例を収集し、それらをオンライン講演会のような場で提示する事により、自施設に役立てられる方策も見つけやすくなり、がん診療連携拠点病院内外における適切な情報提供の方策が検討できると考えられた。
②では、検索サイトにおけるがん情報モジュールの効果が確認されたもの、SNSやAI検索の普及などの動向に合わせた情報提供のあり方に対して、望ましい対策の在り方を総合的に検討していくことが重要である。
③では、各地域や施設ごとに置かれた状況はさまざまであるなか、好事例となる事例を収集し、それらをオンライン講演会のような場で提示する事により、自施設に役立てられる方策も見つけやすくなり、がん診療連携拠点病院内外における適切な情報提供の方策が検討できると考えられた。
公開日・更新日
公開日
2026-03-03
更新日
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