薬剤師の役割と倫理規範の実態に関する研究

文献情報

文献番号
200940042A
報告書区分
総括
研究課題名
薬剤師の役割と倫理規範の実態に関する研究
課題番号
H20-医薬・一般-020
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
久保 鈴子(財団法人 日本薬剤師研修センター 事業部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
2,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、平成20年度に引き続き、薬剤師が薬剤師法第1条に掲げられている薬剤師の任務を確実に遂行し、質の高い医療を担うとともに患者・国民から信頼されることをめざした倫理上の基本的要素を探り、薬学教育の中での倫理に関する教育や行政処分を受けた薬剤師の再教育、さらに時代に即応する薬剤師のあり方等を考える際の参考となる基礎資料を作成するものである。 
平成21年度は、国内外の薬剤師倫理規定及び他の医療職団体の倫理規範、国内外の行政処分と再教育等の実態調査を行い、比較検討した。
研究方法
国内外の医療関連の行政機関及び各団体ホームページや書籍を基に、薬剤師倫理規定国際比較、行政処分と再教育に関する国際比較、日本における医療職種間の倫理規定比較、薬剤師倫理規定と薬剤師の行為の関連性等を検討した。また、69th FIPにおいて諸外国の代表的立場にある薬剤師への当該国における薬剤師の役割と倫理規定に関する聞き取り調査等を実施した。
結果と考察
FIPが定める「各国の薬剤師倫理規定に含めるべきとされる事項」の各項に、日本の薬剤師倫理規定条項を対応させたところ、概ね満たしているものの他国の各条に比べて長文であったため、理想的には薬剤師が日常的に意識できるものであることが望ましく、簡潔に短文で記載されるのが良いと考えられた。日本国内の他の医療職の倫理規定との比較では、各職能に特有の倫理が掲げられているが、共通する条項では、生涯研鑽とチーム医療を円滑に実践する上で重要な職能間の協調に関するものであった。
一方、倫理規定各条と現在の薬剤師の行動との関連を見ると、倫理規定と薬剤師の社会に向けた行動とが合致していない可能性が示唆された。倫理と行政処分内容の関連についても、倫理観の欠如が行政処分の対象となる行為を引き起こしていると思われ、倫理規定の遵守をいかに徹底させるが重要であると思われた。再教育時はもちらん、薬学教育から生涯学習の場においても医療専門職としての倫理教育に時間を惜しんではならないと考えられた。
結論
今年度の研究から、薬剤師倫理規定に合致した行動変容の必要性、専門職倫理教育の重要性など倫理に関する課題が幾つか浮かび上がった。薬剤師の役割の展開にあわせた倫理規定の見直しも視野に入れつつ、国民に対して薬剤師業務の認知を促すとともに、国民の視点に立った行動変容への取組を示すことが重要と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2010-06-03
更新日
-

文献情報

文献番号
200940042B
報告書区分
総合
研究課題名
薬剤師の役割と倫理規範の実態に関する研究
課題番号
H20-医薬・一般-020
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
久保 鈴子(財団法人 日本薬剤師研修センター 事業部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、薬剤師の医療における役割拡大や薬学教育6年制移行など周辺環境の変化に鑑み、薬剤師が薬剤師法第1条に掲げられている任務に基づいて質の高い医療の遂行を担い、患者・国民から信頼を得るための要素、特に倫理面の基本的要素を探り、薬学教育の中での医療専門職倫理に関する教育や行政処分を受けた薬剤師の再教育、さらに時代に即応する薬剤師のあり方等を考える際の参考となる基礎資料の作成を目的とした。
研究方法
平成20年度は、薬剤師が自らの任務を国民に問い、薬剤師に求められているものは何か、薬剤師が果たすべき役割は何か、についての課題や問題点等を把握することを目的に一般国民1000名を対象にWebによるアンケート調査を行った。
平成21年度は、諸外国や国内の薬剤師および他の医療専門職の職能団体が作成した倫理規範等の実態調査を行った。また、日本薬剤師会倫理規定各条と平成20年度アンケート調査結果と関連させ、薬剤師の倫理規範の実態を検討した。
 
結果と考察
平成20・21年度の研究結果より、現時点では薬剤師の役割として社会から認知されている薬剤師の業務は、調剤・OTC薬販売等その一部に限られていることが推察され、国民に対し薬剤師業務の認知を促すための努力が不十分であるとともに、薬剤師が自ら掲げた倫理規範と社会に向けた行動とが合致していない可能性が示唆された。
医療専門職の倫理規範は、倫理原則とプロフェッショナリズム(各専門職の役割に伴う責任)とから構成されるが、行政処分対象となる行為は倫理原則に対する認識の欠如による場合が国内外共に多くみられることから、薬学教育から卒後の生涯学習の場においても、薬剤師としての倫理感の醸成に力を注ぐことが必要と考えられた。
今後、薬剤師の役割の展開にあわせた倫理規定の見直しも視野に入れつつ、広く国民に対し薬剤師業務への認知を促すとともに、国民の視点に立った薬剤師自らの行動変容への取組を示すことが重要と思われた。
結論
2年間の調査検討結果を纏めた資料を基に、日本における薬剤師の専門職倫理を考察した。今回纏めた各種資料は、薬学教育の中で医療専門職としての倫理規範に関する教育や行政処分を受けた薬剤師の再教育、時代に即応する今後の薬剤師のあり方等を考える際の基礎資料となりうると考える。また、薬剤師の役割の展開に合わせた倫理規定の見直しにも活用できるものである。

公開日・更新日

公開日
2010-06-03
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200940042C

成果

専門的・学術的観点からの成果
薬剤師育成のための教育課程が6年制となったことに鑑み、薬剤師が自らの責務を再認識することを目的に、今後の薬剤師に対するニーズや薬剤師が果たすべき役割について調査した。国民の意識調査、他職種比較、海外の状況比較等により、日本における薬剤師の専門職倫理を考察するための基礎資料を纏めた。本資料は、薬剤師生涯教育、薬学教育等の専門教育の場面において活用できるものである。また、薬剤師の役割の展開に合わせた倫理規定の見直しにも活用できるものである。
臨床的観点からの成果
薬剤師が任務を全うし、質の高い医療を担うためには、医療における薬剤師の果たすべき役割を明確にしていく必要がある。本研究の国民の意識調査においては、薬剤師の業務は、調剤・OTC薬販売等が概ね認知され、評価されていた。しかし、適正使用に係る薬害防止や薬物乱用防止、環境衛生並びに公衆衛生への貢献等についての評価は低い傾向が示され、今後の取り組むべき課題を把握することができた。
ガイドライン等の開発
ガイドライン等の開発には至っていないが、本研究は、今後の薬剤師の役割を踏まえ、医療専門職としての倫理規範を考える際の重要な資料となり得る。
その他行政的観点からの成果
行政処分を受けた薬剤師の再教育制度が平成20年4月より施行されている。薬剤師の行政処分に関する海外の処分状況やそれに対する手当等の比較を行ったところ、基本的な処分理由は倫理原則に対する認識の欠如による違反行為であり、倫理原則の遵守を厳正に監視することであった。国民に対し安心・安全な質の高い医療を提供するには、違反行為を少なくすることが必要であり、薬剤師についてみれば、薬学教育課程から生涯教育、再教育に至るまで、医療専門職としての倫理原則と専門職意識の徹底が不可欠であるとの結論に至った。
その他のインパクト
国民の意識調査結果についてまとめ、以下の学会にて発表した。
・平成21年9月8日:69th International Congress of FIP(Turkey, Istanbul)
How are pharmacists functioning in the Japanese community?
・平成21年10月25日:第19回日本医療薬学会(長崎)
薬剤師の役割に関する一般国民の認識調査

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
平成21年10月25日:第19回日本医療薬学会(長崎) 薬剤師の役割に関する一般国民の認識調査
学会発表(国際学会等)
1件
69th International Congress of FIP How are pharmacists functioning in the Japanese community?
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2017-05-30
更新日
-