文献情報
文献番号
202402002A
報告書区分
総括
研究課題名
多様な現場での国際生活機能分類(ICF)の円滑な実用化及び統計への応用に向けた研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23AB1001
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
向野 雅彦(国立大学法人北海道大学 北海道大学病院リハビリテーション科)
研究分担者(所属機関)
- 山田 深(杏林大学 医学部)
- 小松 雅代(大阪大学 大学院医学系研究科 社会医学講座環境医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(統計情報総合研究)
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
2,310,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
国際生活機能分類(ICF)は、世界保健機関(WHO)において国際疾病分類(ICD)と並ぶ中心的な分類と位置づけられている。ICFは個人の健康状態を機能面から包括的に捉える枠組みであり、疾病が生活に与える影響を表現することで、疾病統計の充実に寄与することが期待されている 。しかし、ICFには1600を超える膨大な項目数や分類項目の説明の分かりにくさといった課題があり、これまで概念の普及は進んだものの、国レベルでの標準的な評価手法の確立や統計への活用には至っていない。
本研究は、これらの課題に対応するため、ICFの実用化と疾病統計への応用を目指すものである。具体的には、ICFのダイジェスト版ともいえるICD-11 V章(生活機能評価のための補助セクション)のために先行研究で作成された支援ツールをICF全体に拡張し、臨床現場での円滑な活用を支援するマニュアルや、既存の臨床評価尺度との互換機能を持つツールの開発に取り組むことを目的とした。
本研究は、これらの課題に対応するため、ICFの実用化と疾病統計への応用を目指すものである。具体的には、ICFのダイジェスト版ともいえるICD-11 V章(生活機能評価のための補助セクション)のために先行研究で作成された支援ツールをICF全体に拡張し、臨床現場での円滑な活用を支援するマニュアルや、既存の臨床評価尺度との互換機能を持つツールの開発に取り組むことを目的とした。
研究方法
本研究では、以下の課題に取り組んだ。
1. ICFコード検索システムの作成とマニュアルの改訂
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士からなる計16名の専門職チームが、ICF第二レベルのコードに関連する同義語や構成要素などの語句の収集を行った。
また、これまでに作成した暫定版のICFコーディングマニュアルを14名のリハビリテーション専門職が臨床で使用し、そのフィードバックを基に改訂を行った。
2. 評価基準の作成と検者間信頼性の検証
リハビリテーション専門職5名とICF専門家2名が協力し、ICFの「心身機能」「身体構造」「活動と参加」の第二レベルに該当する計211項目について、具体的な採点基準を作成した 。検者間信頼性の検証には各項目の重症度を網羅する仮想事例を作成した。その後、看護師6名が独立して事例を採点し、統計手法(Gwet's AC2)を用いて評価者間の一致度を評価した。
3. 既存評価スケールとの項目対応表・点数換算表の作成
専門職4名からなるワーキンググループが、NYHA心機能分類、NIH脳卒中スケールなど複数の既存評価尺度について、ICF項目との対応表を作成した。
各種スケールの点数がICFの評価点で何点に相当するかについて、647名の医療・リハビリテーション専門職を対象にアンケート調査を実施し、点数換算表を作成した。
1. ICFコード検索システムの作成とマニュアルの改訂
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士からなる計16名の専門職チームが、ICF第二レベルのコードに関連する同義語や構成要素などの語句の収集を行った。
また、これまでに作成した暫定版のICFコーディングマニュアルを14名のリハビリテーション専門職が臨床で使用し、そのフィードバックを基に改訂を行った。
2. 評価基準の作成と検者間信頼性の検証
リハビリテーション専門職5名とICF専門家2名が協力し、ICFの「心身機能」「身体構造」「活動と参加」の第二レベルに該当する計211項目について、具体的な採点基準を作成した 。検者間信頼性の検証には各項目の重症度を網羅する仮想事例を作成した。その後、看護師6名が独立して事例を採点し、統計手法(Gwet's AC2)を用いて評価者間の一致度を評価した。
3. 既存評価スケールとの項目対応表・点数換算表の作成
専門職4名からなるワーキンググループが、NYHA心機能分類、NIH脳卒中スケールなど複数の既存評価尺度について、ICF項目との対応表を作成した。
各種スケールの点数がICFの評価点で何点に相当するかについて、647名の医療・リハビリテーション専門職を対象にアンケート調査を実施し、点数換算表を作成した。
結果と考察
ICFコード検索システムの作成の取り組みにおいては、計7,005語の語句リストを作成した 。これをWebアプリに登録し、関連語句からICFコードを検索できるシステムを構築した。また、コーディングマニュアルは、専門職からのフィードバックを反映し、章ごとの基準から項目別の具体的な採点基準へと改訂された。
「心身機能」「身体構造」「活動と参加」の計211項目について新たに作成した採点基準は、検者間信頼性の検証において、全ての項目でGwet's AC2が0.60以上という良好な結果を示し、基準の信頼性が確認された。これは、ICFを用いた評価の一貫性を高め、統計利用の基盤を強化する上で重要な成果と考えられる。
さらに、647名の医療・リハビリテーション専門職を対象にアンケート調査を実施し、点数換算表を作成した。各種臨床スケールとICFの項目対応表および点数換算表の拡充は、既存の多様な評価データをICFの枠組みへの集約を支援するものである 。これにより、疾患横断的な生活機能の比較や分析が容易になり、患者中心の医療・福祉の実現や、国際的な統計におけるICF活用の促進に貢献することが期待される。
「心身機能」「身体構造」「活動と参加」の計211項目について新たに作成した採点基準は、検者間信頼性の検証において、全ての項目でGwet's AC2が0.60以上という良好な結果を示し、基準の信頼性が確認された。これは、ICFを用いた評価の一貫性を高め、統計利用の基盤を強化する上で重要な成果と考えられる。
さらに、647名の医療・リハビリテーション専門職を対象にアンケート調査を実施し、点数換算表を作成した。各種臨床スケールとICFの項目対応表および点数換算表の拡充は、既存の多様な評価データをICFの枠組みへの集約を支援するものである 。これにより、疾患横断的な生活機能の比較や分析が容易になり、患者中心の医療・福祉の実現や、国際的な統計におけるICF活用の促進に貢献することが期待される。
結論
本年度の研究事業では、ICFの円滑な実用化と統計への応用を目指し、臨床現場での活用を支援するツールの開発に取り組んだ 。主な成果として、既存の臨床スケールからICFへ情報を集約するための換算ライブラリを充実させるとともに、ICFの主要211項目について詳細な採点基準を作成し、その信頼性を検証、実用的なマニュアルに反映させた。
今後は、これらの成果を基盤とし、さらに多領域の専門家からのフィードバックを取り入れながら、ICF活用ツールの社会実装を推進していく計画である。
今後は、これらの成果を基盤とし、さらに多領域の専門家からのフィードバックを取り入れながら、ICF活用ツールの社会実装を推進していく計画である。
公開日・更新日
公開日
2025-07-18
更新日
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