文献情報
文献番号
202401022A
報告書区分
総括
研究課題名
同位体分析を用いた戦没者遺骨の所属集団判定の高精度化
研究課題名(英字)
-
課題番号
24AA2009
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
米田 穣(東京大学(総合研究博物館))
研究分担者(所属機関)
- 陀安 一郎(総合地球環境学研究所 基盤研究部)
- 覺張 隆史(金沢大学 古代文明・文化資源学研究所)
- 澤藤 匠(蔦谷 匠)(総合研究大学院大学 統合進化科学研究センター)
- 橋本 正次(東京歯科大学 法人事務局)
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和8(2026)年度
研究費
19,220,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、戦没者遺骨収集事業における遺骨の所属集団判定の精度向上に資することを目的とする。今年度は、日本人戦没者と特にパプアニューギニア(以下PNG)住民を識別するため、各種同位体比(炭素・窒素・酸素・ストロンチウム(以下Sr)等)の分析データに基づき、両者を区別する判別式を検討した。さらに現地で迅速な前処理を可能にする可搬式自動前処理装置を試作した。
研究方法
研究1:PNGの19地域出身の現代人121名の歯牙の歯冠部からエナメル質の粉末を採取し、炭酸塩に含まれる酸素・炭素同位体比を、歯根部からコラーゲンを抽出・精製して、炭素・窒素・硫黄同位体比を測定した。
研究2:令和7年度分析予定のインドネシアにおいて、4地域の大学歯学部等で歯科診療時に抜去され所有権放棄された歯牙108点を、患者情報(性別、年齢、居住地域、滞在年数等)と共に採取した。
研究3:Sr同位体比の迅速分析法について、自動濃度希釈装置と微量元素濃度測定順序変更を比較検討した。さらに、マイクロ波酸分解法(加圧密閉系)と、大気圧のテフロンバイアルでの加熱分解による迅速処理についても検討を行った。
研究4:エナメル質からSrを単離するための可搬式自動前処理装置の試作機を設計・製造し、動作確認を行った。
研究5:研究1で得られたPNG現代人データベース(以下DB)と考古学遺跡の同位体データを比較し、所属集団判定に有効な統計学的手法を検討した。またデータ管理と統計解析、アプリケーション開発に用いる計算機環境を整備した。
研究2:令和7年度分析予定のインドネシアにおいて、4地域の大学歯学部等で歯科診療時に抜去され所有権放棄された歯牙108点を、患者情報(性別、年齢、居住地域、滞在年数等)と共に採取した。
研究3:Sr同位体比の迅速分析法について、自動濃度希釈装置と微量元素濃度測定順序変更を比較検討した。さらに、マイクロ波酸分解法(加圧密閉系)と、大気圧のテフロンバイアルでの加熱分解による迅速処理についても検討を行った。
研究4:エナメル質からSrを単離するための可搬式自動前処理装置の試作機を設計・製造し、動作確認を行った。
研究5:研究1で得られたPNG現代人データベース(以下DB)と考古学遺跡の同位体データを比較し、所属集団判定に有効な統計学的手法を検討した。またデータ管理と統計解析、アプリケーション開発に用いる計算機環境を整備した。
結果と考察
研究1: PNG現代人121検体からコラーゲンの炭素・窒素同位体比108点、硫黄同位体比91点、エナメル質については炭酸塩に含まれる炭素・酸素同位体比82点、Sr同位体比87点のデータを得て、PNG現代集団DBを構築した。このDBと日本人戦没者データ(厚労省委託研究で報告されたもの)を比較した結果、窒素同位体比と硫黄同位体比の分布に差異が見られた。炭素・窒素・硫黄・酸素の同位体比で欠損値のない検体を用いたロジスティック回帰分析では、日本人戦没者とPNG現代人を89.4%(95%信頼区間:82.2~94.4%)の的中率で判別できた。欠損値の適切な補完により精度向上が期待される。また、PNGの考古遺跡(300~800年前)の人骨データとの比較から、PNGでは食生活の時代変化が示されたが、古人骨の同位体比は日本人戦没者と判別可能であると分かった。
研究2: インドネシアの4大学(ハサヌディン大学、パジャジャラン大学、アイルランガ大学、インドネシア大学)の協力のもと、患者のインフォームドコンセントを得て計108点の歯牙を採取した。
研究3: Sr同位体比分析の前処理法である大気圧でのテフロン容器加熱法と密閉加圧マイクロ波分解法の分析結果が一致し、状況に応じた使用が可能となった。また、迅速測定が可能なMC-ICP-MS(多元素同時検出型誘導結合プラズマ質量分析装置)の結果が、より高精度な表面電離型質量分析(TIMS)による測定結果とよく一致することを確認した。
研究4: エナメル質からSrを単離する可搬式自動前処理装置の試作機を設計・製造し、エナメル質粉末の洗浄、脱灰、硝酸溶液のSr分離カラム導入により、動物骨標準物質からSrを回収できることを確認した。令和7年度に各種パラメータ調整と汚染影響を検証予定である。
研究5: 研究1で構築したPNG現代人DBや考古遺跡データ、日本人戦没者データにおいて、欠損データの割合が無視できず、その補完が重要な課題として明らかになった。Pythonのscikit-learnパッケージが有望であり、今後、日本人戦没者のSr同位体比データを追加し、PNG現代人集団との判別を通じて有効な補完方法を検討する。
研究2: インドネシアの4大学(ハサヌディン大学、パジャジャラン大学、アイルランガ大学、インドネシア大学)の協力のもと、患者のインフォームドコンセントを得て計108点の歯牙を採取した。
研究3: Sr同位体比分析の前処理法である大気圧でのテフロン容器加熱法と密閉加圧マイクロ波分解法の分析結果が一致し、状況に応じた使用が可能となった。また、迅速測定が可能なMC-ICP-MS(多元素同時検出型誘導結合プラズマ質量分析装置)の結果が、より高精度な表面電離型質量分析(TIMS)による測定結果とよく一致することを確認した。
研究4: エナメル質からSrを単離する可搬式自動前処理装置の試作機を設計・製造し、エナメル質粉末の洗浄、脱灰、硝酸溶液のSr分離カラム導入により、動物骨標準物質からSrを回収できることを確認した。令和7年度に各種パラメータ調整と汚染影響を検証予定である。
研究5: 研究1で構築したPNG現代人DBや考古遺跡データ、日本人戦没者データにおいて、欠損データの割合が無視できず、その補完が重要な課題として明らかになった。Pythonのscikit-learnパッケージが有望であり、今後、日本人戦没者のSr同位体比データを追加し、PNG現代人集団との判別を通じて有効な補完方法を検討する。
結論
PNG現代人集団の各種同位体DBを構築し、このデータと日本人戦没者のデータを比較したロジスティック回帰分析により、両集団を89.4%の的中率で判別可能であることを示した。この結果は、PNGで採取された遺骨の所属集団判定において同位体分析が有効であることを示唆する。 今後の課題として、日本人戦没者のSr同位体比データを追加し、欠損値を適切に補完することで、日本人戦没者とPNG現地住民および古人骨との判別精度をさらに向上させることが期待される。 また、迅速にエナメル質からSrを単離する可搬式自動前処理装置を試作し、前処理方法の違いによる影響がないことも確認した。本装置が令和7年度以降に実用化され、作業環境からの汚染の影響がないことが確認できれば、Sr同位体分析において多数の試料を迅速に処理することが可能となり、遺骨収集事業におけるSr同位体比活用の大きな前進となる。
公開日・更新日
公開日
2025-07-07
更新日
2025-08-07