文献情報
文献番号
202401014A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施の推進及び効果検証のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23AA2006
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
津下 一代(丹羽 一代)(女子栄養大学 栄養学部)
研究分担者(所属機関)
- 飯島 勝矢(国立大学法人 東京大学 高齢社会総合研究機構/未来ビジョン研究センター)
- 渡邊 裕(北海道大学 大学院歯学研究院 口腔健康科学分野 高齢者歯科学教室)
- 田中 和美(神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部 栄養学科)
- 樺山 舞(大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻)
- 斎藤 民(国立長寿医療研究センター 老年社会科学研究部)
- 平田 匠(地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター 研究所 福祉と生活ケア研究チーム)
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
12,980,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
わが国では超高齢社会の進行に伴い、高齢期の健康保持・フレイル対策の重要性が増している。令和2 年度より「高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施」(以下、本事業)が開始され、6 年度には全国ほぼすべての自治体にて実施されるようになった。これからは保健事業の質と量をさらに高め、健康寿命の延伸や医療費や介護給付費などの社会保障費の増加抑制につなげることが求められている。
本研究の先行研究班は、制度開始前から本事業の体制づくりに関わり、広域連合、市町村が本事業に取り組めるよう手引書の作成や実施方法の提示を行ってきた。
令和6年度の研究では、事業の評価方法の検討および効果検証に取り組み、自治体における一体的実施の推進に寄与することを目的とした。
本研究の先行研究班は、制度開始前から本事業の体制づくりに関わり、広域連合、市町村が本事業に取り組めるよう手引書の作成や実施方法の提示を行ってきた。
令和6年度の研究では、事業の評価方法の検討および効果検証に取り組み、自治体における一体的実施の推進に寄与することを目的とした。
研究方法
①「一体的実施・実践支援ツール」の再構築、解説書を作成し、研修会、動画配信により普及を図った。
②2つの 広域連合において令和4年度に本事業を実施していた54市町村について、実施計画書及び実績報告書を分析し、ストラクチャー、プロセス評価を実施、スコア化に取り組んだ。令和2年度から開始した自治体については3年間のスコアの変化を確認した。
③ 2つの広域連合に属する後期高齢者約180万人のKDB 情報(後期高齢者質問票、健診、医療、介護)からなるデータベース(JIHPOP: Japanese Integrated Healthcare Program for Older People)を構築し、対象者抽出方法の妥当性、優先順位の考え方の根拠の根拠に資する分析を行った。
④保健事業スコア別に自治体をグループ化し、データベースを用いたマクロ的評価をおこなった。個別事業の分析においては、傾向スコアマッチング等の手法を用いて、介入効果を検証した。
②2つの 広域連合において令和4年度に本事業を実施していた54市町村について、実施計画書及び実績報告書を分析し、ストラクチャー、プロセス評価を実施、スコア化に取り組んだ。令和2年度から開始した自治体については3年間のスコアの変化を確認した。
③ 2つの広域連合に属する後期高齢者約180万人のKDB 情報(後期高齢者質問票、健診、医療、介護)からなるデータベース(JIHPOP: Japanese Integrated Healthcare Program for Older People)を構築し、対象者抽出方法の妥当性、優先順位の考え方の根拠の根拠に資する分析を行った。
④保健事業スコア別に自治体をグループ化し、データベースを用いたマクロ的評価をおこなった。個別事業の分析においては、傾向スコアマッチング等の手法を用いて、介入効果を検証した。
結果と考察
①ツールの再構築に合わせて解説書作成ならびに研修を実施した。厚生労働省の実施状況調査(令和6 年11月実施)によると、全国の広域連合のうち57.4 %、市町村では64.3 %が活用もしくは活用予定であった。データヘルス計画の標準評価指標としても採用された。
② 市町村が作成した実績報告書等のストラクチャー、プロセス評価のための評価指標を作成、2 広域連合の令和4 年度実施分全市町村についてスコア化した。これにより経年的な事業の進捗を確認、PDCA サイクルを回すうえでの課題や高スコア自治体における取組の工夫を把握することができた。
③ 2 広域のKDB データをもとにデータベース(JIHPOP: Japanese Integrated Healthcare Program for Older People)を構築、質問票の回答や保健事業該当率の年次推移(令和2年度~4年度)を分析した。保健事業スコアが高い自治体の方が、マクロ的な指標において良好な傾向がみられた。
④JIHPOP データベースを用いた分析にて質問票の悪い回答が多いほど、また基準の該当者において要介護新規認定率が高いことが確認できた。分野別には以下の結果が得られた。
・低栄養では傾向スコアマッチングを用いて予防事業の効果を検討、参加群では比較的軽い段階で介護保険サービスにつながる傾向があるが、入院歴のある者では要介護2 以上の介護認定が有意に低かった。
・口腔に対する支援実施率が高い市町村では、口腔の基準該当者の割合低下が観察された。
・重症化予防ではHbA1c が高い人やフレイル合併がある人では後年の要介護新規認定が有意に高かった。
・質問票の悪い回答の項目数や社会的フレイル指標がその後の要介護認定に関係することが明らかとなった。
・多剤や睡眠薬処方と転倒・骨折などの関連が示された。
・健康状態不明者では後年の要介護新規発症率が有意に高いこと、健診受診率が高い自治体では健康状態不明者の割合が少ないことが分かった。
② 市町村が作成した実績報告書等のストラクチャー、プロセス評価のための評価指標を作成、2 広域連合の令和4 年度実施分全市町村についてスコア化した。これにより経年的な事業の進捗を確認、PDCA サイクルを回すうえでの課題や高スコア自治体における取組の工夫を把握することができた。
③ 2 広域のKDB データをもとにデータベース(JIHPOP: Japanese Integrated Healthcare Program for Older People)を構築、質問票の回答や保健事業該当率の年次推移(令和2年度~4年度)を分析した。保健事業スコアが高い自治体の方が、マクロ的な指標において良好な傾向がみられた。
④JIHPOP データベースを用いた分析にて質問票の悪い回答が多いほど、また基準の該当者において要介護新規認定率が高いことが確認できた。分野別には以下の結果が得られた。
・低栄養では傾向スコアマッチングを用いて予防事業の効果を検討、参加群では比較的軽い段階で介護保険サービスにつながる傾向があるが、入院歴のある者では要介護2 以上の介護認定が有意に低かった。
・口腔に対する支援実施率が高い市町村では、口腔の基準該当者の割合低下が観察された。
・重症化予防ではHbA1c が高い人やフレイル合併がある人では後年の要介護新規認定が有意に高かった。
・質問票の悪い回答の項目数や社会的フレイル指標がその後の要介護認定に関係することが明らかとなった。
・多剤や睡眠薬処方と転倒・骨折などの関連が示された。
・健康状態不明者では後年の要介護新規発症率が有意に高いこと、健診受診率が高い自治体では健康状態不明者の割合が少ないことが分かった。
結論
2 広域連合の大規模データベースにより、一体的実施抽出基準該当者の状況、その要因や推移、要介護、医療費等への関連を検討した。本事業は着実に進展していること、KDBを活用した効果評価が可能であることが示唆された。今後、さらに効果的・効率的な実施方法を検討することが重要であると考えられた。
公開日・更新日
公開日
2025-06-27
更新日
-