ポストコロナ時代における人口動態と社会変化の見通しに資する研究

文献情報

文献番号
202401013A
報告書区分
総括
研究課題名
ポストコロナ時代における人口動態と社会変化の見通しに資する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23AA2005
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
小池 司朗(国立社会保障・人口問題研究所 人口構造研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 林 玲子(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 小島 克久(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 岩澤 美帆(国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部)
  • 守泉 理恵(国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部)
  • 菅 桂太(国立社会保障・人口問題研究所 人口構造研究部)
  • 中川 雅貴(国立社会保障・人口問題研究所 国際関係部)
  • 石井 太(慶應義塾大学経済学部)
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
4,455,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
2020年から顕在化した新型コロナウイルスの感染拡大により、リモートワークの急速に浸透など、人々の生活様式はコロナ前から大きく変化するとともに、人口動態にも顕著な影響が表れている。日本において、出生率の一段の低下、平均寿命の意図しない変化、外国人住民数の増加の停滞、東京圏一極集中の鈍化という、いずれもこれまでの趨勢からは予測不能な変化が観察されており、将来の全国および地域別の人口動向はいっそう不透明性を増している。こうした状況下において精度の高い将来人口・世帯推計を実施するためには、コロナ禍がもたらした短期的な人口動態の変化について、その背後にある社会的要因を含めて的確に把握することが不可欠である。同時に、当初は短期的と考えられた人口動態の変化が長期化することも想定され、ポストコロナ期に移行したとしても、コロナ禍に定着した「新しい生活様式」のもとで不可逆的な傾向となる可能性も否定できない。本研究では、コロナ禍が人口動態にもたらした影響を的確に把握するとともに、ポストコロナ時代における社会変化を見据えた将来人口・世帯数の推計へと還元させていくことを主たる目的とする。
研究方法
本研究は以下の3領域に分けて進めた。
①新型コロナウイルスの人口動態への影響に関する研究
②コロナ禍およびコロナ後を見据えた将来人口・世帯推計モデルの開発
③コロナの影響を踏まえた将来推計の政策的シミュレーションへの応用に関する研究
結果と考察
(1) 「住基台帳移動」から得られる 1994~2024 年の都道府県間人口移動数を人口構造要因とモビリティ要因に分解し、とくにコロナ禍とコロナ前後における東京圏・非東京圏間のモビリティ要因に着目して分析を行った。得られた知見は以下の3点である.第1に、人口構造の変化が移動数変化に及ぼす影響は、とくに転出数に関して大きいが、転入元の人口構造の変化に起因して、転入数に関しても少なからず地域差がみられた。第2に、コロナ禍の状況を男女別にみると、女性において非東京圏から東京圏への転出モビリティの低下、および東京圏から非東京圏への転入モビリティの上昇が目立った。第3に、コロナ前と比較して転入モビリティが大幅に上昇した地域は、東京圏から距離的に近い県が大半であるが、西日本においても散見された。
(2) 新型コロナウイルス感染症の拡大によってフレキシブル施策が広く普及したが、そうした施策の導入が、自社と同産業の企業における導入状況の影響を受けていることを、過去 10 数年にわたって国内大企業の動向を追跡したパネルデータの分析によって明らかにした。
(3) 「職業を通じた結婚」研究の初期分析として、厚生労働省「job tag」で公開されている職業情報を用いた因子分析を実施した。同データは、500 超の職業ごとに 150項目以上の価値観・スキル・興味などの指標を含むものであり、 6 因子が抽出された。
結論
(1) コロナ後においても西日本の府県で散見される高い転入モビリティ比の要因には、コロナ以外の要因も含まれている可能性があるため、コロナ禍が各地域の人口移動に及ぼした影響を精査するには、こうした特殊要因によるモビリティ変化を除外する必要がある。
(2) コロナ禍においてフレキシブル施策をめぐる制度的同型化が観察されたことは、効率的な企業活動のためだけではなく、施策を導入した同業他社の動向を踏まえて、導入に踏み切った企業が一定数存在したことを示唆する。ただし、同一産業からの影響は、コロナ禍以前と比べてむしろ弱まっていた。これは出勤抑制の要請などを通じて、社会的な「ベストプラクティス」がむしろこの時期に定まりつつあった可能性も示唆する。
(3) 今後、本研究で得られた因子得点を国勢調査や就業構造基本調査に接続することで、個人の特性や生活様式に関する定量的な分析が可能になると期待される。

公開日・更新日

公開日
2025-06-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2025-06-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
202401013Z