文献情報
文献番号
200939055A
報告書区分
総括
研究課題名
母乳を介したフタル酸ジー(2-エチルヘキシル)による乳幼児の発達毒性と成熟後の脂質量への影響
課題番号
H21-食品・若手-016
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
伊藤 由起(名古屋市立大学大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
フタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DEHP)は塩化ビニル製品の可塑剤として食品容器や医療器具等に使用されてきた。DEHPの曝露に関して成人や妊産婦を対象とした疫学研究はあるものの、感受性の高い胎児や新生児の曝露量とその発達に与える影響は不明である。本研究では、現在使用中の新生児栄養補給チューブに含まれる可塑剤の種類とミルクへの溶出量、また胎盤や母乳を介したDEHP曝露が仔の発達に与える影響を動物実験で明らかにすることを目的とした。
研究方法
DEHPはPPARαに配位するが、PPARαの機能には種差がありマウスの結果をヒトに外挿し難い。そこで種差の影響を解消させる為、雌雄の野生型マウス、Pparα-null (KO) およびヒト型PPARα (hPPARα)マウスに0?0.1%DEHPを摂食させ、その後同遺伝子型、同曝露量のマウスを交配させ、DEHPの妊娠マウスに与える影響とともに次世代の胎仔・新生仔期、成熟期のマウスに与える影響を検討した。
また、曝露状況の把握のため、栄養補給チューブをミルクや胃酸を想定したpH3の水溶液に浸して溶出試験を行った。DEHPに加え、6種類のフタル酸エステル類、1種のアジピン酸エステル、1種のトリメット酸エステルの計9種類をGC/MSにて測定をした。
また、曝露状況の把握のため、栄養補給チューブをミルクや胃酸を想定したpH3の水溶液に浸して溶出試験を行った。DEHPに加え、6種類のフタル酸エステル類、1種のアジピン酸エステル、1種のトリメット酸エステルの計9種類をGC/MSにて測定をした。
結果と考察
胎仔、新生仔の数や重量の減少は野生型やhPPARαマウスで見られたがKOでは認められず、これらの影響にはPPARαが関与していることが示唆された。hPPARαマウスは、野生型と同様にDEHP曝露の影響を受けていた。しかし、野生型では胎仔、新生仔の生仔数の減少を特徴とするに対して、hPPARαマウスでは、新生仔の生仔数は減少せず、一方胚吸収・死亡胎仔の割合は野生型よりも低い濃度から影響がみられた。このようにDEHP曝露による生殖毒性影響において、マウスとヒトのPPARαの果たす役割が異なっているのかもしれない。
曝露量の把握には3種類のチューブを用いたが、1種のチューブからDEHPが、別のチューブからトリメット酸エステルが検出された。残る1種からは測定対象物質は検出されなかった。
曝露量の把握には3種類のチューブを用いたが、1種のチューブからDEHPが、別のチューブからトリメット酸エステルが検出された。残る1種からは測定対象物質は検出されなかった。
結論
ヒトのPPARαはマウスPPARαと異なった生殖毒性影響を示していた。現在経鼻栄養チューブからのDEHPの曝露は減っていることが確認されたが、今回は妊娠・授乳期の他の曝露要因を検討しておらず、今後も引き続き研究が必要である。
公開日・更新日
公開日
2010-06-01
更新日
-